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ブロックチェーンユースケース①:Track&Trace(物の追跡)について

一昨日、投稿した記事には、スキが2つ付きました。
 スキはモチベーションになります。お陰様で今日も投稿する気になりました。有り難うございます。

●背景:

上記記事では、日本人には感覚的に中国などの国と比較して、ブロックチェーンの有効性が理解しにくいという点について述べた。
では、日本ではブロックチェーンが全く浸透しないのかというと、そういうわけではないと思っており、感覚的に理解しづらい分、論理的に補足をする必要があるのだと考えている。
今回は、ブロックチェーンユースケース紹介編の第一弾として、Track&Traceを紹介する。また、上記の通り、日本人(私を含め)には、ブロックチェーンである必要性(いわゆるWhy Blockchain)が理解しづらいという点を考慮し、その点にポイントを置いてまとめてゆきたいと思う。

●Track&Traceとは

Track&Traceは、直訳すると追跡&追跡である。
とにかく情報を追跡し、記録する。それがTrack&Traceだ。
明確な定義はないが、ブロックチェーン界隈で使われる際には、大体がサプライチェーンや、運送など、実態のあるモノの情報の追跡をする際に使われる。(金融や書類情報など、実物が無いモノの情報の追跡という意味ではあまり使われない)

例えば、
・コンビニ弁当の加工情報の追跡
・精密機器の海外輸送情報の追跡
・食品素材の生産情報・輸送情報の追跡
などである。

上記は、サプライチェーンの上流から下流までのどこかのプロセスを含んでおり、プロジェクトによって、どこの部分を追跡するのかは異なる。

食品の場合
高級ワインを例にして考えてみよう。
フランス産の高級ワインが日本の食卓に届くまでの過程を考えると、ざっと以下のようなプロセスを踏むことになる。(一部正確では無いかもしれません)
○製造:
・ぶどう栽培、収穫、加工、醸造、ボトル詰
・保管
○輸送:
・出荷、フランス国内輸送
・港湾保管
・税関
・海上輸送(もしくは空輸)
・税関
・港湾保管
・国内輸送
・卸保管
・国内輸送
・小売店陳列
・消費者購買、食卓へ

現状は、上記のプロセスの中で、どんな環境にさらされながらこのワインが今食卓に置かれているのかは、情報はあまり公開されていない。(部分プロセスは公開されているものもある)
コンビニの数百円のワインであれば、(健康に問題なければ)、どんな状態で運ばれてきたのかは、あまり気にならないが、1本数十万円するワインであれば、最高の状態で管理されてきていて欲しいし、それが保証されて欲しい。また、逆にそれが保証されてたワインであれば、さらに価値をあげることも可能だろう。

では、最高の状態で管理されてきたことを保証するためには、どのような情報が必要だろうか?

まず、製造の過程では、栽培における肥料の情報や、何月何日に収穫したぶどうなのか、(ワインの場合は無いだろうが)添加物の情報など、ワインの品質に影響し得る生産過程情報を、信頼できる形で記録する必要がある。樽に入れて保管する過程では、良い保管状態であったことを示す情報(温度、湿度情報?)を、同様に信頼できる形で情報を記録する必要がある。
また、輸送の過程では、上記に記載した通り、非常に多くのプロセスを踏むわけだが、一気通貫で、ワインを良い状態で維持するための環境下で輸送していた(温度、振動?)ことを、同様に信頼できる形で情報を記録する必要がある。

では、上記を実現するための仕組みは、どんなものになるだろうか?

まず、どの過程においても、情報を自動で入力するシステム化が必要だ。
手動による記録プロセスが多くなればなるほど、記入ミスが紛れる可能性が生まれ、また人の判断の余地が生まれてしまう。10度〜15度で保管する必要があった場合に、15.5度の状態が少しの時間が発生し、それを知っているのが記録人だけだとしたら、修正してしまいたくなってしまうのが人情だ。
したがって、外部情報の収集はIoTデバイスを使用して自動化し、その他添加物情報なども、マスタ化するなど、可能な限り、自動でシステム登録できる状態にする必要がある。

では、製造過程において、上記の方針に従い、IoTデバイスで収集したワインの品質を保証する情報を取れたとして、その情報をどのように後ろの工程(輸送工程)に引継ぎ、最終的な消費者に信頼してもらえる形で共有できるだろうか。

ブロックチェーン無しの場合

ブロックチェーン無しの場合、以下の2つのパターンが考えられる。
①:生産者がプラットフォーマーになる
②:第三者プラットフォームにデータを登録する

①:生産者がプラットフォーマーになる
生産者がプラットフォーマーになるパターンとは、生産者がシステム上で自身の生産情報を公開し、また後ろ工程の輸送業者にも協力を求め、自身のシステムに対するアクセス権を付与し、輸送情報を登録してもらうというモデルである。
課題としては、輸送業者の立場からみると、このような(面倒な)生産者が増えれば増えるほど、情報登録しなければならないシステムが増え、また規格もバラバラなので対応しきれなくなる可能性があるという点だ。

②:第三者プラットフォームにデータを登録する
これは、食品品質保証プラットフォーム的なサービスを提供するプラットフォーマーのサービスを、生産者、流通業者などが利用するというパターンだ。
この場合は、第三者プラットフォーマーの規格に統一されるので、①の課題はある程度軽減されそうだ。

②であれば、わざわざブロックチェーンをベースにしたシステムである必要はないのではないだろうか?

答えとしては、
・第三者プラットフォーマーが十分に信頼に足る
・リアルタイム(別のシステムを経由することなく)情報がプラットフォームに登録される
という条件が満たされるのであれば、必ずしもブロックチェーンである必要はないだろう。

上記条件は、現実的な条件だろうか?

・第三者プラットフォーマーが十分に信頼に足る

日本の第三者の大企業がプラットフォーマーとして、システムを提供するというモデルであれば、日本人である我々としては、信頼できるかもしれない。だが、グローバルで考えるとどうだろうか。海外の大企業は、我々からみると知名度がないこともあるし、第三者だとしても、プラットフォーマーはユーザー企業である生産企業を優先し、そっとデータの修正権を与えているかもしれない。ここの感覚は、前回の記事に書いた、企業に対する信頼感というところに依存するので、あまりピンとこないかもしれない。

リアルタイム(別のシステムを経由することなく)情報がプラットフォームに登録される

こちらはどうだろうか。
輸送中、倉庫保管中のデータは誰のものだろうか?
輸送業者、倉庫業者にとっては、自社の管理情報は、貴重な企業活動情報であり、自社に帰属するものであり、提供する場合も自社の管理品質を証明するために自社のデータを提供するという位置づけになるだろう。
その場合、データは一度、輸送業者や倉庫業者、小売業者のERPなりサーバーに集められてから、プラットフォーマーのクラウドに登録するということになる。このワンクッションがデータ改ざんの余地を生んでしまう。

ブロックチェーンを使った場合

ブロックチェーンを使う場合、ノードは各事業者ごと(生産業者、フランス国内運送業者、会場輸送業者、日本国内輸送業者、小売店 等)に持たせる。各ノードに登録するデータは、自社が主権を持つ公開データだ。
各事業者が収集したIoTデータは、リアルタイムで自社のノードに登録する。自社のノードは自社のシステムであるわけだから、それ自体に問題はない。
このようなモデルが構築できた場合、非ブロックチェーンの場合に課題となった、「プラットフォーマーへの信頼性依存」、「データ共有の非リアルタイム性(改ざんの余地が生まれる)」が解決できる。
中小の運送業などは、自社でノードを持つというのは現実的ではないので、そのような場合は、別の事業者のノードを間借りする。データの主権が自社に帰属しなくなってしまうが、それはノードを保有するか否かでのトレードオフだ。

終わりに

今回は、高級ワインを例にして、ブロックチェーンユースケース①:Track&Traceを考察してみた。
いかがだろうか?日本人には価値がわかりづらいブロックチェーンのWhy Blockchainに対する答えが、一応答えられたのではと考えている。(一般論ではなく、私見です。ツッコミ・ご指摘は歓迎しますので、noteへのコメントやTwitterでのご連絡をお待ちしております。)

食品を例にして書いたが、自動車部品や医薬品などのTrack&Trace(こちらは偽物が入り込むという課題がある)についても、同じような考え方ができると考えている。

次回は、別のBlockchainユースケースを挙げて、同様に考察してみようと思う。

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