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ラウンド、フェーズ、ステップ、ターンの違い

ボードゲームの用語で「ラウンド」という言葉があります。
6ラウンドやったら終わり、とか、「もうあと1ラウンドしかない!」とかです。ボクシングでもラウンドがありますね。「カーン!」とゴングがなってから「カンカンカン!」ともう一度なるまでが一つのラウンドです。

似た言葉に「フェーズ」があります。思えば他にも「ステップ」とか「ターン」とかいろいろあります。これらの用語にはどういう違いがあるのでしょうか。

著者のいち意見でしかありませんが、私の考えをまとめてみたいと思います。

ラウンド(round)=同じ事を繰り返す単位

roundとは「丸いもの」という意味で、字からイメージするとおり、同じ事を繰り返す場合に、その「同じ事」をひとまとまりとする為の用語です。

ラウンドには「始まり」と「終わり」があり、それによって一つのラウンドが定義づけられます。そしてまた次のラウンドが始まり、終わり、というのを繰り返していきます。

繰り返すものの代表の一つが「季節」でしょう。春、夏、秋、冬を繰り返し、1年が終わります。つまりこの場合、1年が1つのラウンドと考えられます。

ラウンドには通常、名前がありません。それらは同じ事の繰り返しですから、単純にラウンド1,ラウンド2,ラウンド3・・・のように数字で管理されるか、特にゲーム進行上にラウンド数が関係しない場合には、数字も付けられずただ「ラウンド」として管理されます。

ラウンド1、ラウンド2にそれぞれ個別の名前をつけたくなった場合、それらはラウンドではなく別の概念である可能性があるでしょう。

同じ事の繰り返しなのに、3ラウンドしかないからと「創成ラウンド」「拡大ラウンド」「達成ラウンド」のように名前付きで表現してしまうと、聞く人は「それぞれのラウンドは何か違う事をするのですか?」と、混乱する可能性があるので、避けた方が良いでしょう。

春、夏、秋、冬のように、多くの人とって「順番」が明確になっているようなケースでは、同じ事の繰り返しを4回やる、という場合に、番号の代わりにフレーバー的に「春ラウンド」「夏ラウンド」のように言う事はあるかと思います。但しその場合も、聞く人は何か違うことをするように受けとる可能性があるので、注意が必要です。

フェーズ(phase)= できることが変わる場合の単位

phaseとは「見えてくるもの」という意味のギリシャ語が語源の英語で、状況や状態が大きく変わる場合に、その状況や状態を表す為の用語です。ゲームにおいては多くの場合、「できることが変わる」場合に、それぞれの状況を区別する為に用います。

例えば、建物建築をテーマとしたゲームにおいて「設計」と「材料調達」「建築」は、それぞれやることがまったく違います。

そのような場合には「設計フェーズ」「材料調達フェーズ」「建築フェーズ」のように分けてゲームを管理することで、プレイヤーに現在のフェーズの処理に集中してもらうことができます。

複雑な構造を持つゲームを「フェーズ」として分離することで、各フェーズをシンプルに見せ、理解の手助けとすることができるでしょう。

フェーズは大小様々な場面で用いられる構造で、例えば一人の手番の内容が複数のフェーズに分かれている事もあれば、ラウンドの中身がフェーズに分かれていることもあります。

逆に、ゲーム全体が「相談フェーズ」「意思決定フェーズ」「実行フェーズ」「反省フェーズ」のように進行して終了するような、全体の構造を規定するようなフェーズもあります。

共通しているのは、「やることが違う」という事をプレイヤーに意識させる為の用語であるということです。

フェーズは「状況の変化」をプレイヤーに強く意識付けする為の概念でもあります。

例えば、基本的には同じ手番を繰り返すラウンド構造のゲームにおいて、「場にエイリアンカードが8枚出る」事を条件として、「通常フェーズ」から「エイリアン襲撃フェーズ」に突入する、というゲームが考えられます。エイリアン襲撃フェーズに突入しても、手番を繰り返すラウンド構造自体は変わりませんが、手番でできることが少し変わり、手札を使って「エイリアンへの対処」が行えるようになる、等です。

このようなケースで「フェーズ」という概念を使ってゲームを管理すると、ルールブック記述の簡素化やプレイヤーの理解への手助けになるでしょう。

ラウンドとは逆に、フェーズには通常、名前が付けられます。「フェーズ1」「フェーズ2」では、「何が変わったのか」が分かりにくい為です。「開拓フェーズ」「収穫フェーズ」等、そのフェーズでは何が行えるのか分かりやすいような名称が良いでしょう。

良くない例としては、例えば、ラウンド構造のゲームで、ある条件を満たすと「決算」が起こり、勝利点が分配され、この決算が3回起こるとゲームが終了する、というゲームがあったとします。ここで各決算までのゲームの単位をフェーズとして管理しようとすると、「フェーズ1」「フェーズ2」「フェーズ3」とやりたくなる事があります。しかし、やることが変わるわけではないので、これをフェーズとして管理するのはあまり意味がなく、単に「3回決算が起こったらゲームが終わる」という説明で充分です。

今、新型コロナの状況を伝える際に「第二フェーズに突入」などいう言い方が行われていますが、これは「状況が変わった」ということを伝える為だけのバズワードのようなものでしょう。ゲームのルールブックでこういう言い方をしても、第二フェーズで何が変わるのかが大事ですので、うまく伝わらない可能性があります。

新型コロナの例のように、「フェーズ」という言葉は、「前へ進行する」というようなニュアンスを含みますが、別にフェーズが以前のフェーズに戻っても問題はありません。「できることが切り替わる」という事が伝わればそれで大丈夫です。

ステップ(step)=順番に行う事を忘れない為の単位

何かの手順を、ただ単に順番に、機械的に行うような場合、それを「ステップ」という単位で表します。

繰り返すわけでもなく、「変化すること」を伝えるものでもないようなケースです。

stepは「一歩ずつ歩く」というような意味の英語で、walk(歩く)との違いは「一歩」という単位を意識させる点です。ひとつひとつを順番に、確実にこなしていく、というようなイメージです。

例えば「ゲームの準備」では、多くの場合「1. カードを良く混ぜて裏向きの山札にします」「2. 各自山札から3枚ずつカードを受け取って手札にします」「3. 山札から1枚カードを引いて表向きでテーブル中央に置きます」のように書かれていますが、これがまさにステップです。ひとつひとつ、機械的に、順番に行っていくものです。

手番で行う一連の作業的な処理をステップとしてまとめる場合もあります。「自駒の進め方」が次のようになっているとします。

1. 自駒の上に、今回使用するディスクを何枚でも重ねて置く
2. 重ねて置いたディスクを、自駒の上に1つだけ残し、残りを自駒に隣接するマスに全て置く
3. その周囲にある他のプレイヤーのディスクのうち、自分のディスクより少ない枚数のディスクがあれば、そのマスの数だけコインを得る
4. 最後に、自駒を、自駒に隣接する自分の色のディスクがあるマスへ自由に移動させる

このような場合に、それぞれをステップとして管理すると、プレイヤーに「これは忘れないように順番にやらなければならない」と意識付けさせることができるでしょう。

多くの場合、ステップには名前が付く事はありませんが、例えば後処理が「残った資源の再分配」「「マップ上の駒の再配置」「新しいカードの公開」のように、やることがたくさんあり、それぞれが多少複雑なケースなどに、それぞれステップという単位で名前を付けてまとめて管理・説明すると、プレイヤーの混乱を防げるかもしれません。

一歩一歩確実にやるべきこと、につける名前ですから、フェーズとは使い方が少し違ってきます。「設計ステップ」「材料調達ステップ」「建築ステップ」のように書くと、聞く方は「それらを順番にやるのだな」「小さな処理の単位かな」という事はイメージできても、「設計フェーズ」「材料調達フェーズ」「建築フェーズ」と聞いた時のような、ゲーム全体に関わるような大きな構造を思い浮かべたりはしないかもしれません。

ターン(turn)=誰が主導権を持つかを表す単位

turnとは「回転させる」という意味の英語で、その回転させるものには「向き」が存在します。ですので、向きが存在しない、独楽回しの独楽を回す場合にはturnとは言わずspinと言います。つまり、「どっちを向いているか」を決める為に回転させるのが「turn」です。

ゲームにおいては、主に「誰が主導権を持つ場面なのか」を表す単位として「ターン」が用いられます。イメージとしては、テーブル中央に矢印が置かれており、それを回転させて主導権を持つ人を示すような感じです。

複数人のゲームにおいて自分が行う手番のことを「ターン」と呼びますし、協力型のゲームにおいて「敵の行動」と「味方の行動」が分かれているならば、それぞれ「敵のターン」「味方のターン」と表現します。

先程の協力型ゲームにおいて「敵のフェーズ」「味方のフェーズ」と言っても良いですが、敵のフェーズにおいて味方がやれることがないのであれば、フェーズというよりターンの方がしっくりくるかもしれません。

「設計ターン」「材料調達ターン」「建築ターン」というような使い方は、主導権を表す為の区切りではないので誤りです。もちろん、設計、材料調達、建築がそれぞれ異なる担当者に割り振られていて、それぞれの担当者の手番として処理されるならば、「設計ターン」というような言い方も可能でしょう。

構造の組み合わせ

このように、ゲーム進行の構造を表す為の用語として様々な用語がありますが、それぞれ目的が異なるだけで、用語の間に上下関係、親子関係はありません。フェーズの中にラウンドが含まれたり、その逆もあります。ターンがフェーズで構成されたり、ひょっとすると(めったにないとは思いますが)ターンの中にラウンドが存在するようなケースもあり得なくもないでしょう。

例えば、設計フェーズでは各プレイヤーが順番に場から設計書カードを取っていく、というのを全員がパスするまで続ける、というような場合、設計フェーズの中に「ラウンド」の構造が現れます。しかしこのような小さなケースでは、あまり「ラウンド」という言葉は使いません。ただ単に「スタートプレイヤーから順番にカードを取り、全員がパスをしたら設計フェーズが終わります」で伝わるでしょう。

しかし、設計フェーズで各プレイヤーが行う内容が複雑で、ゲームのメインと言っていいような場合には、プレイヤーのターンをしっかり説明した後、それをプレイヤー毎に「何らかの条件が満たされるまで繰り返す」という事を明確に伝える為に「設計(フェーズ中の)ラウンド」という言葉を用いるメリットはあるかもしれません。

ただ、フェーズとラウンドという言葉の混在は、場合によってはプレイヤーの混乱の原因となり得ます。使用の際には充分に注意しつつ、ゲームの進行構造を明確にする為に、必要な場合には躊躇せず使うべきです。その場合、構造を図などで補足すると、より伝わりやすいでしょう。

おわりに

こんな記事を書いていたら、ボードゲームが遊びたくなりました。
今日もラウンドやフェーズの世界へ、出かけるとしましょうか。



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