アナログゲームデザイン:「カラーズオブパリ」のシステム考察
「Colors of Paris(カラーズオブパリ)」は、2019年にSuper Meepleから出版された、Nicolas de Oliveiraによるアナログゲームです。最近このゲームを遊ぶ機会があったのですが、システム面でいくつか気になった所があった(いや、正直に言うと、気になる所がありすぎた)為、書きだしてみることにしました。全体的に批判的な内容になっていますので、そういうのが苦手な方には最初に謝っておきます。
念のため書いて置きますと、カラーズオブパリは世界のボードゲームコミュニティサイトBoard Game Geekで7.1/10と評価も高く、絵の具を作ってそれを絵に乗せていくという作業がとても雰囲気にマッチしていて楽しいゲームです。ただ、個人的にルールのミスマッチングが感じられる箇所があった為、ボードゲーム制作者として気になった、という事でしかありません。皆さんも、この記事を読む前に一度遊んでみて、ご自分なりの評価を持ち、それから読んで頂ければと思います。
ゲームの概要
概要を読むのが面倒な人は、とりあえずこれだけ把握して次の章へ移ってください☟
6種類(原色3色、混色3色)の絵の具キューブを集め、絵画カードにある9つのマスを埋めていく(=絵を描く)ことで「絵」が完成します。ゲームの目的は絵を2枚描く事です。
しかし、絵の具キューブをたくさん取る「絵の具能力」や、絵の具キューブを絵画カードに乗せる「絵画能力」は最初はとても低い為、それらの能力を上げなければ辛い展開となります。各能力は、任意の絵の具2個を支払って上げる事ができます。
よって、ゲームの主な流れは、まず「絵の具能力」を上げつつなんでもいいから絵の具を取り、次に「絵筆能力」を上げ、準備が整ったら、作れそうな絵画カードを1~2枚ほど手元に確保して、絵を描き始める、という流れになります。
このゲームでは、プレイヤーは画家となって絵を完成させることを目指します。絵1枚には、それぞれ必要な色の絵の具が9個(木製の色付きキューブで表現されます)示されており、絵の具キューブは赤青黄の原色3色と、橙緑紫の混合色3色が存在します。ある絵には赤4個と黄色5個が必要だったり、ある絵には緑3個、青3個、赤3個が必要だったりします。
つまり、「絵を完成させる」とは、絵画カードに示された9個の絵の具キューブをどうにかして獲得し、そのカードの上に置くこと、となります。
プレイヤーはまず、場に並んでいる絵画カードから1枚を獲得して自分の前に置かないと、そもそも絵を「描き始める」事ができません。しかし、慌てて絵画カードを取っても、「絵具キューブ」を取る能力も、「絵を描く」能力も最初は低く設定されている為、「絵具を取って絵を描く」というサイクルが非常に非効率です。
下のボードが自分のステータスを管理するボードです。
左上から順に、
「絵の具能力:絵の具を取るアクションで何個の絵の具キューブを取れるか(初期値3)」
「パレット能力:混色を作るアクションで何個の絵の具キューブを取れるか(初期値2)」
「絵筆能力:絵を描くアクションで何個の絵の具キューブを絵画カードの上に置けるか(初期値1)」
となっている為、まずはこのステータスを上げていく必要があるとプレイヤーは知ります。
それでは、どのように絵の具キューブを獲得したり、ステータスを上げたりしていくのでしょうか。下の写真がその為のアクションボードです。
例えば右下の青い絵の具が描かれたマスは、「青い絵の具を取れるアクションマス」です。自分のステータスの「絵具獲得個数(初期値3)」に応じた個数の絵の具がストックから貰えます。ここには2つのワーカーを置くスペースがあります。
時計回りに1つ先の、絵筆が描かれたマスは、「絵筆能力のステータスを+1する」アクションマスです。任意の絵の具キューブ2個をストックに支払って、絵筆能力を+1します。ここには3つのワーカーを置くスペースがあります。
アクションマスが全て埋まってしまったら、もうこのラウンドはそのアクションが行えません。中には1つしかワーカーを置けないマスや、そもそもこのラウンドは「使用不可」になっているマスもあったりしますので、先手番が非常に有利です。ちなみにこのアクションボードはホイールになっていて、毎ラウンド、時計回りに回転します。なので、ラウンドによって、そのアクションを実行できる最大人数は変化します。
絵を描く(=絵画カードを必要な絵の具で埋める)には、絵の具能力、パレット能力、絵筆能力をそれぞれ上げる必要があります。特に絵筆能力は大事で、「絵を描く」アクションを選択しても、初期状態では1個しかキューブを置けませんから、せめて3個、できれば5個は置けるようにしないと、絵を描くアクションを何度も実行するハメになります。
しかし、ステータスを上げるには絵の具キューブが2個必要な為、まずは「絵の具能力」を少し上げて、絵の具の獲得効率が高い状態にした方が良さそうです。つまり、ステータスを上げる順番は、基本的には「絵の具能力」→「絵筆能力」の順となります。
総合すると、ゲームの主な流れは、まず「絵の具能力」を上げつつなんでもいいから絵の具を取り、次に絵筆能力を上げ、準備が整ったら、作れそうな絵画カードを1~2枚ほど手元に確保して、絵を描き始める、という流れになるでしょう。
ゲームの概要が分かったところで、私がこのゲームで気になったポイントを挙げていきます。
序盤に絵を描く必要性が希薄
これまで何度も書いた通り、序盤はステータスを上げる為に費やすべきであり、ステータスの準備が整う前に絵を描き始めるのは殆ど意味がありません。それをやったプレイヤーは、ステータス上げ競争から脱落し、後半で簡単に巻き返されてしまうでしょう。
それどころかこのゲームには、「序盤はステータスを上げるべき」というさらなるデザイナー自身からのメッセージが隠されています。それは「3つのステータスそれぞれについて、6までレベルを上げると、ご褒美として追加のワーカーが1個ずつ貰える」というものです。
これがある為、そこまでステータスを上げなくていいと思っていても、ガンガンステータスを上げたくなってしまう動機が強化されています。
これらのルールによって、もはや序盤にステータスアップをほっといてわざわざ絵を描き始めるプレイヤーはいなくなります。
この為、このゲームは、「序盤はステータスを上げて、後半は絵を描く」という、単調で一本道なプレイしかできなくなっています。
自分なら恐らく、追加のワーカーは「ゲーム途中で得た勝利点」によって獲得できるようにルールを決めるでしょう。そもそも序盤にステータスを上げたプレイヤーが有利になるのに、そこにさらに追加のワーカーを与えて有利にさせるなんて、ゲームを逆転不可能にするだけです。
通常ならば序盤はステータスアップに注力したいが、追加ワーカーが欲しい為にとりあえず頑張って絵を描く、という体験を盛り込む事で、ゲームにはプレイの幅が生まれるでしょう。
先手が強すぎるのに先手番が平等に訪れない
このゲームでは、手番順は何もしなければ変わりません。誰かが「先手番を取る」というアクションをした時にのみ、変わります。通常、この手のゲームでは、誰も「先手番を取る」アクションをしなかった場合には時計回り順に先手番が移動するのですが、このゲームではそれもありません。
にも関わらず、序盤に必須である「絵の具能力+1」アクションにワーカーを置ける個数は上限があり、それは多い時でも3、通常は1か2です。つまり、後手番は殆どそこに置く事ができません。後手番は1手番無駄にして「先手番を取る」をやらない限り、このゲームの序盤必須と思われる「絵の具能力+1」を取れるようになるのがかなり遅れます。
プレイヤーはそれに早く気づいて「先手番を取る」を最初のラウンドからしっかり取り合え、という事なのかもしれませんが、むしろそれが必須過ぎて、ゲームの面白さを生み出していないように思います。また、ゲーム最初の後手番は単純に不利すぎて、その差を埋めるチャンスはその後ずっと無いように思います。
こういうゲームでは、やはり「先手番を取る」を誰も取らなかった場合は次のプレイヤーに先手番が移るようにした方がいいでしょうし、アクションの選択制限をもう少し緩くして、後手番にそこまで不利にならないように配慮した方が良いと思います。先手番を取るのを毎回必須にするほどの先手有利なルールにするのはやりすぎということです。
「コピー能力」の存在
アクションマスの1つに「コピー能力アクション」があります。これは、既にワーカーが置かれている他のアクションマスのアクションを1つコピーして実行する、というものです。つまり、先手番に置かれてしまってもう置けないアクションでも、このコピー能力を使えば実行できる、ということで、いろんなワーカープレイスメント系ゲームで採用されているルールです。
通常このような能力は、「後手番の不利」を緩和する為に設けられます。ところがこのゲームにおいては、それが後手番の不利を緩和する方向に必ずしもなっていません。このゲームでは、ワーカーを置いた瞬間にアクションを解決するのではなく、全員が手持ちのワーカーを全て置き切った後に順番に1つずつ自分のワーカーを横向きに倒してそこのアクションを実行していくのですが、せっかく後手番がコピーを使おうとしても、コピーできるのは「倒されていない(未使用の)ワーカー」のみなのです。つまり、後手番がコピーしたかったアクションを先手番が先に実行してしまえば、後手番はそれをコピーすることができません。
また、このコピー能力は、自分が置いたワーカーをコピーする事もできます。つまり、スタートプレイヤーこそが、このコピー能力を最も安定的に、有効に活用できるのです。後述の「ホイール1個残しルール」と併用することで、さらにこのコピー能力は凶悪になります。
ホイール1個残しルール
全員がワーカーを置いてアクションを解決した後、アクションホイールが回って次のラウンドに移る前に、各自1個だけ「今回のラウンドに置いたワーカー」をそのアクションマスに残さなければなりません。
これによって、「次のラウンドは絵の具能力+1アクションをどうしても取りたいから、このラウンドは(別にやりたくないけど)ホイール順で次のアクションである橙絵の具混色アクションにワーカーを置こう」というようなマネジメントが要求されるようになります。
既に「別にやりたくないけど次のラウンドの為に無駄なアクションをする」という時点で、何かゲームとしておかしいわけですが、そうしないと、序盤にみんなが欲しがる絵の具能力+1アクションがずっと埋まったままなのですから仕方ありません。
スタートプレイヤー等は、これを使って次ラウンドのアクションを確定させつつ、「コピー能力」を使ってそのアクションを2回行う、というようなプレイも可能になります。
ところが、それをさらにカオスにする仕組みがあります。それが「このラウンドはホイール回さない or 2スペース回す」アクションです。ここにワーカーを置いたプレイヤーは、次ラウンドの準備時に、ホイールを回さないか、2スペース回す事を選択できます。
なので、ワーカーに余裕ができたプレイヤーは、欲しいアクションを連続して確保し続ける為に、ずっとここへワーカーを置き続けます。他プレイヤーが邪魔をしようとして「0/2ホイール回転」アクションにワーカーを置いても、2マス先のアクションマスがすぐに埋まってしまい、そのプレイヤーは結局置けない、みたいな事になりかねません。
ただでさえ、「序盤は絵の具能力+1」「パレット能力+1」、中盤は「絵画カード獲得」、後半は「絵筆能力+1」「絵を描く」アクションにそれぞれ集中しがちなのに、この仕組みによって非常にテクニカルでややこしいアクションの取り合いが繰り広げられます。これを「キリキリして楽しい」と捉える人もいると思いますが、何もできずに無駄なアクションしかさせて貰えないプレイヤーは、ストレスを感じるでしょう。
このゲームは「絵の具を取って絵を完成させる」のが楽しいゲームなのですから、もっとそこに注力させた方がいいように思います。互いにけん制しあってやりたいことが全然できずにストレスを抱えるゲームにする必要性を感じません。
ホイール1個残しルールなどは、このゲームに必要だったのだろうかと疑問です。「0/2ホイール回転」についても、恐らく同じアクションホイールを採用しているツォルキンを見て思いついたのではないかと思うのですが(違ったらごめんなさい)、ツォルキンですら、各プレイヤーゲーム中1回しか実行できないアクションです。アクションホイールは「次のアクションの状況が変わる」事を前のラウンドに予測できるのが楽しいルールなのに、2スペース回しなどが頻繁に起こると予測する楽しさが奪われます。それだけゲームがカオス化するから、ツォルキンでは容易には実行できなくなっているのでしょう。
2枚しか絵を描けない
このゲームなんと、そもそも各自2枚ずつしか絵を描けません。場合によっては3枚以上描ける人もいるかもしれませんが、それは恐らく稀です。なぜなら、終了条件が「誰かが2枚以上絵を完成させていたら終了」だからです。
絵を描くゲームなのに、なぜたった2枚になっているのかというと、恐らくプレイ時間のせいです。既に何度も書いている通り、このゲームは「ステータスアップ」の為に序盤の殆どの時間を使います。その間、絵を描く事はありません。ゲームのメインはステータスアップの取り合いであって、絵を描く事自体はおまけなのです。
恐らくですが、ゲームデザイナーは本当はもっとたくさんの絵を描いて欲しいと思っていた気がします。実際、4人プレイなのに、絵画カードは32枚もあります。各自2~3枚ずつなら、20枚もあれば十分なはずなのにです。しかし、「絵の具を取ってキューブを置く」という内容をシンプルなゲームに落とし込む事ができなかったか、もしくは単純にもっと複雑なゲームを作りたかった等の理由から、「拡大再生産」というゲーム構造を選んでしまったのでしょう。
確かに拡大再生産は、それ自体が面白いものです。しかし残念ながらこのゲームは、「資源獲得→生産力拡大→資源獲得」のループが一本道になってしまっていて、拡大再生産要素が単にゲームを間延びさせるだけになっているように思います。恐らくデザイナーもそれに気が付いた為、一本道感を少しでも減らすべく、「0/2ホイール回転」や初手番の取り合い等の要素を入れていったのではないでしょうか。
その結果、絵を描くというテーマであるにも関わらず序盤に絵を描く動機がなく、ゲームの序盤を「ステータスアップの足の引っ張り合い合戦」にしてしまった為に序盤の展開を長引かせてしまい、絵を描く為のプレイ時間が確保できなくなってしまったのでは、と推測しています。
アクションマスの取り合い部分のデベロップ
前述の通り、このゲームのアクションホイールには12個のアクションがありますが、そのうち序盤にみんなが必要としているのは「絵の具原色獲得アクション」3つと、「絵の具能力+1アクション」だけです。各アクションについて平均2マスのワーカー置き場があるとして、合計8マスしかないのですが、4人がそれぞれ3つのワーカーを持っているので、ワーカーが余ります。
余ったワーカーは「白絵の具キューブ獲得アクション(ここは何個でもワーカーを置ける」になります。
絵の具原色獲得アクションは、絵の具能力+1アクションのコストにする為なので、ぶっちゃけ何色でも構いません。空いている場所に入る感じになります。なので序盤の時点で既に、アクションの取り合いの殆どの部分がゲーム的に「破綻」しています。
後半になるとステータスアップではなく、カード獲得や「絵を描く(キューブを絵画カードの上に置く」アクションの取り合いに移りますが、アクションの取り合いという意味では特にやっている事は変わりません。絵の具獲得や混色アクションは、後半ではそれぞれのプレイヤーによって欲しいものは変わっていますから、取り合いというより「たまたま欲しいものが被った」事による雑なインタラクションしか起こりません。
いちおう、「ホイール回転」と「ワーカー1個残し」のルールによって、「次にやりたいのは絵を描くアクションだから、青絵の具獲得アクションに置いておけば、次はそのまま絵を描けるぞ」のようなマネジメントは可能です。
つまり、ホイール上の位置関係により、青絵の具と絵を描くアクションは相性が良いという事が言えるわけですが…果たしてデザイナーはそこまで考えてこのゲームをデザインしているのか(青絵の具の勝利点を少し減らすとかでバランスを取っているのか)というと疑問です。
個人的には、カード獲得や絵を描く、などの、後半必須なアクションについては、「追加コストを払えばだれもが行えるようになっている」ようにする方がストレスは軽減されると思っています。でもそうすると、あのホイールにした意味もなくなってしまうでしょうし、なかなか難しいのかもしれません。いっそ、絵を描くアクションやカード獲得などは「毎ラウンド全員が必ず行うアクション」にしてしまって、ホイールは絵の具獲得に特化させてしまった方が分かりやすかったのかもしれません。
黒絵の具を作った人が勝つ?
このゲームには「黒い絵の具」というものがあります。それは、混色3色の絵の具キューブをそれぞれ1個ずつ計3個を消費して黒い絵の具1個を作るというアクションで作ることができます。黒い絵の具1個6点です。2個作れば絵を1枚仕上げるのと同じかそれ以上の得点になります。
さらにすごいのは、ゲーム中黒い絵の具キューブは6個しかなく、全体で5個以上獲得されたゲーム終了、という点です。ゲーム終盤に膠着した時に、収束性を上げる為に用意されているものと思われますが、普通に勝利点効率が高く思えます。下手したら、絵を描くより効率高いんじゃないでしょうか…。
点数効率的に、恐らく「誰か一人が黒絵の具に走って4個以上獲得し、他の一人が1個だけ黒を取る」という状況になった時、黒絵の具獲得者が24点で勝利する気がします。そういう勝利ルートも作ったのかもしれませんが、絵を描くゲームなのに絵を描かなかった人が勝つというのもどうなんでしょうか…。
拡張ルールの画家タイルの能力のばらつき
拡張ルールとして、画家タイルが用意されています。これはゲーム開始時に2枚ずつ配られてそこから各自1枚選んでゲーム中ずっとこの能力が適用される、というものですが、この能力にばらつきがありすぎるように思います。
私が壊れキャラだと思うのは、「能力アップ時に、追加コストを払ってもう1段階能力をアップできる」というものです。ただでさえ序盤に取り合いになる「絵の具獲得能力」などが、一人だけ2回できるようなものです。追加コストは絵の具キューブですが、序盤は絵を描きませんから余り気味で、大したコストになっていません。そのコスト自体、能力アップで大目に取れるようになっていますから、足かせになっていません。前述の通り、能力アップで追加ワーカーも貰えますので、ものすごいブーストがあります。
私が選んだのは「黄色の絵の具を取った時、絵画カードに1-2個の絵の具を置ける」というもので、絵を描くアクションをせずに絵を完成させていけるならお得ではと思ったのですが、序盤に黄色い絵の具を使う絵画が出てこず、全然活かせません。他の色の絵の具を取って活用しても良かったのですが、一番効率がいいのは黄色い絵の具を使って絵を完成させていくことでしょうから、その絵画カードが出るのをずっと待ってしまいました。結局その能力が使えたのは3回ほど。能力アップ追加キャラのプレイヤーは、その能力を多分6〜7回は使っていたと思います(もっとかも)。
正直、ゲームが始まる前の段階で、「これは強すぎでは」という印象を強く持ったのですが、「そうは言っても、やってみると結構どれも強かったりするんだよな」と思いつつ始めたわけです。しかし、終わってみると、そのキャラを取ったプレイヤーの圧勝でした。
拡張ルールの特殊アクションカードの意味
拡張ルールにもうひとつ、コスト(白い絵の具4~7個ぐらい)を払ってカードに描かれたアクションが行えるというものがあります。このカードは場に4枚ぐらい出ていて、例えば「ステータスを2個アップ」等の強い効果があります。
しかし何度も書いているように、ステータス2個アップの為のコストの絵の具をたくさん持っているプレイヤーとは、既にステータスを上げて充分に絵の具を獲得できるようになっているプレイヤーです。ここまで強い効果が、序盤ブーストしたプレイヤーに有利に働くというのはどうなのかと思いました。
半面、「絵の具を任意の色に4回まで変えられる」という効果もあったりしたのですが、序盤は誰も絵を描かないので、完全に死んでいました。
全体的にカード効果にばらつきがありすぎる気がしましたが、これはカード自体の問題というより、やはり、アクション選択のシステム自体に根深い問題があるように思います。もう少し平等に先手番が回ってくれば、選択肢を増やす手段として良い拡張になっていたように思います。
ただ、拡張カードの獲得アクションが「絵画カードの獲得アクション」と同じアクションマスになっているのは良くないと思いました。ただでさえ後半になるとみながこぞってそこを取りに行くのに、拡張カードの獲得までそこでさせてしまったら完全なる渋滞です。「準備はできているのに絵を描き始められない」という状況に陥り、みんな無駄に余剰の絵の具を捨てまくっていました。
良かったところ
悪かった点ばかり書くのもよくないので、最後に良かったところも書きます。まずやはり、テーマが良いです。絵の具を用意して絵を描くというルールもテーマにシンプルに沿っていて楽しいと感じました。カードの上に示された四角い枠の上に資源キューブを置いていくシステム、自分、大好きなんです。キャンバスの上に絵の具をどんどん置いていってちゃんと今、絵を描いているなぁ、という感覚がありました(1枚しか描けませんでしたが)。
拡張の画家タイルについても(文句は言いましたが)やはり、自分があの有名なゴッホになってプレイできる!というのは気分が上がります。
アクションホイールについても、先手番をしっかりとり続けるマネジメントを各自が取れれば、あるいは締まったセッションになるのかもしれません。実際、うまくホイールを止めて重要アクションを2ラウンド独占したプレイヤーなどは、してやったりという表情で楽しそうでした。
ステータス管理の為の個人ボードも、2層ボードになっていて窪みがあり、ステータス表示用の駒が動くことがありません。これはすごく便利だと思いました。
なんだかんだでプレイ後の反省もあり、もう一度遊んでみたいと思わせる魅力がこのゲームにはあります。
まとめ
なんとなく一般化して箇条書きにまとめます。
・序盤はステータスアップだけ、後半は勝利点獲得だけ、という単調なゲーム展開を避け、序盤からも勝利点行動をさせるようにするには、序盤に勝利点を取ったプレイヤーに何らかの拡大再生産の恩恵を与えると良い。
・先手が強すぎるゲームを「先手を取る」アクションだけで緩和することは難しい。せめて「誰も先手を取らなかったら先手番が時計回りに移動する」ぐらいは組み込んでおいた方が良い。またそれに頼り過ぎず、ちゃんと後手番救済の仕組みも用意した方が「後手番が詰む」事になったり差が開いて逆転不可能になるのを防ぐことができる。ゲーム序盤から毎ラウンド誰かが必ず初手番を取り続けるようなゲームバランスは、先手が強すぎる事の証である。
・ワーカープレイスメントにおいて「他人の置いたアクションのコピー」能力は後手番救済の為にあると考えた方が良く、後手番が使いやすくデザインした方が良い。それを先手番に活用されてしまうようなルールは避けた方が良い。
・アクションホイールを使ったゲームの肝は「後のラウンドの変化の予測が立つ事」なので、それを無効にするようなアクションホイールの回転変化効果は乱用すべきではない。
・「〇〇になって〇〇をする」がテーマなのに、それが十分にできないままゲームが終わるようにすべきではない。
・ワーカープレイスメントだからといって、ゲームの展開上誰もが必須な行動を、アクション取り合いさせないほうが良い。そうすると誰かが詰んでしまう可能性が上がる。アクションコスト差をつける程度にして、後手番が完全に詰むのを避ける救済策があった方が良い。
・非対称能力は非常に難しいので、充分に検証してから導入すべき。
最後に
今回まとめた内容は、このゲームに文句を言いたいというわけではなく、自分のゲームデザインの視点からこういうものをまとめると何かしらのアウトプットとして有意義なのではないかと思ってまとめただけです。この内容が必ず正しいとも限りませんし、そう主張したいとも思っていません。あくまで一個人の感想です。
ぜひご自身の手でこのゲームを遊んで、皆さんの感想を聞かせて頂きたいと思います。
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