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16. パラチへ向かう

これから少し、都会を離れます。
きょうはバスに乗ります。長距離バス、しかも観光地行きですから、デラックスなもの、しっかり冷房も効いて、座席もゆったり、リオデジャネイロを発って大きな車体を鷹揚に揺すりながら、バスは西へ、西へ。
リオからおよそ5時間ほど行った海辺にある小さな宝石、それがパラチです。

この小さな観光地に到着してすぐに、僕は故郷の田舎を思い出しました。親の実家があるところで、小学校時代は夏休みをそこで過ごしたものでしたが、その当時の雰囲気がありました。
到着したバスの待合所には人々がたむろしており、とりわけ子どもたち。バスが到着すると、近くに寄ってきたりして、しかし目が合うと途端に離れて行き、遠くからこちらをじっと見ている。僕たちは大きなトランクを持っていたのでめずらしかったのかも知れません。
それにしても、暑い。僕は一人の子どもに近寄って、ホテルの場所を尋ねました。白目のきれいなその子には、やっぱり僕のポルトガル語は通じませんでした。聞こうともしてくれない。「ヘンな人だな」という顔をして向こうへ行き、遠くから僕たちをじっと見ています。しょうがないので、石畳の道を重いトランクを引きずりながら、地図を頼りに歩き始めたら、幸いすぐに見つかりました。

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パラチ。
町の中心1区画はブラジルの歴史的重要史跡ということで、旧世界の姿を留めたまま保護されています。車も入ってこられないようになっており、レストラン、みやげ物屋、衣料品屋などが密集しています。

それから、プサダ。プサダとはホテルのことですが、その多くは以前富豪や貴族の邸宅だったところを改築してホテルになっているものが多いようです。決して贅沢な作りではありませんし、部屋も小さくて薄暗い。薄暗いのは、暑いために陽光を入れないように窓を小さくしているからです。家具は素朴な作りで、なかなか落ち着いた雰囲気が気に入りました。ベッドの横のナイト・テーブルにはロウソクの燭台が立っており、半分使ったローソクがそのまま残っていました。電気ではなく自然の光、いいですね。


夜になって、町の探索に出かけました。お土産を売っている店が多いのですが、色とりどりの衣装が目を引きます。何軒か冷やかしながら歩いていたのですが、とある店で物色していたところ、突然、電気が消えた。すわ何事か、と思ったら単に停電なんですね。驚いたのは、電気が消えたら店の売り子さんがパッと戸口に立って、客が店の外へ出ないようにしたことでした。その判断の素早かったこと。ということは、停電はそんなに珍しいことではなく、その対応も板についたということだったのでしょう。(そう言えばプサダの部屋のロウソク。あれは部屋の装飾というよりは、実用のためだったわけか。)
店の商品を持ち出していないことを示して僕たちは外へ出ましたが、町じゅうが真っ暗。このハプニングに、観光客は皆大喜びでした。そう言えば日本でも、以前はよく停電などがありました。そういう懐かしい思いを抱かせる土地です。できれば両親をパラチへ連れて行きたい、きっと懐かしく思ってくれるだろう、そう考えたりもしました。
明日から、このパラチのことを紹介します。

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