レッド

 レッドが今来る。確かに。耳を澄ませ。モラトリアム横丁を駆けてる。タ、タタ、タタタタタ「小説は何が好きなの?」って訊いてまわっている。奴はまだ学生気分。そうさ、学生気分が抜けきっていない奴。

 カラシ色のマフラーをなびかせてレッドが俺をコロ死にやって来る。隣で寝ているお前はその時俺を見捨てるだろうお前は。それを境に俺の全精神、全細胞は全方向的に奴の統治下に完全に入ってしまうのだけれどお前さん。それは良し悪しの問題じゃないよ。
 

 そしてお前は俺を見捨てる。せめてこの世のお別れにウィスキーをもう一杯。夜更けのコーポでお前と乾杯。百億年以上続くのムラサキの秘密にくるまれて。

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