見出し画像

来年度の「とにかく明るい!」経済見通し

12月21日に総理大臣官邸で行われた「第17回経済財政諮問会議」に、担当の大臣政務官として参加した。
議事は主に、「来年度の経済見通し」と「目指すべき新たなステージに向けた有識者からの提言」だったが、これが非常にわかりやすく、かつ希望に満ちた内容だったので、ここで共有したい。
なお、実際の資料や議事要旨は以下の内閣府ホームページを参照いただきたい。

1.令和6年度の経済見通し:とにかく明るい!

今回発表された今年度(令和5年度)の実績見込みと来年度(令和6年度)の見通しの概要は以下のとおり(図表1を参照)。

  • 今年度の名目GDPは、昨年度から5.5%拡大し、597兆円と過去最高となる見込み。

  • 来年度の名目GDPは、さらに3.0%拡大し、615兆円と過去最高を更新する見通し。

  • 物価上昇率は、今年度の3.0%から、来年度は2.5%へと低下する見通し。

  • 今年度は輸出やインバウンドなどの外需が中心の成長。一方で、来年度は個人消費や設備投資などの内需が中心の成長となる。

(図表1)来年度の主要経済指標やGDPの見通しは「とにかく明るい!」

すなわち、このまま経済がうまく進めば、デフレからの完全脱却を達成し、経済も内需中心で力強く成長するという「とにかく明るい!」経済見通しが示されたと言える。

また、名目賃金を見ると、今年度は2.4%の伸びとなったものの、物価上昇率の3.0%を下回るため、実質賃金はマイナスの見込み。一方で来年度の名目賃金は、物価上昇率2.5%と同程度の見通しだったが、総合経済対策に盛り込まれた定額減税等の効果(1.3%程度)が上乗せされて、物価上昇率を大きく上回る3.8%程度の名目賃金の上昇率となり、実質でも大幅な所得の増加となる見通し(図表2を参照)。

(図表2)来年度は物価上昇を上回る所得の増加が期待できる!

このように、総合経済対策や給付と減税の効果もあって、来年度は内需中心の力強い経済成長となり、雇用者の所得も、物価上昇を大きく上回る増加が見込まれる。

2.マクロ経済の大きな転換点:「コストカット型経済」から「成長と分配の好循環」へ

岸田総理が所信表明やその後の記者会見などで言及している「マクロ経済の転換点」に関しても、様々な明るい指標が見られている。

(図表3)雇用者や家計
・雇用者の不足感や賃金上昇率は、バブル直後からの30年振りの水準
・家計の物価上昇予測はこれまでにない高まり
・金融資産も貯蓄から投資への流れが加速

(図表3)雇用者や家計の統計にも30年振りの変化が!

(図表4)企業部門
・設備投資は半導体などを中心に大幅に増加する計画
・仕入れ価格から販売価格への転嫁も80年代以来の水準で拡大
・海外からの直接投資やインバウンドも増加し、海外の需要も取り込みつつある

(図表4)企業部門の設備投資や価格転嫁にも明るい変化が!

このように、わが国の経済は、低物価・低賃金・低成長の「コストカット型経済」から脱却し、「成長と分配の好循環」による新たなステージへと30年振りに転換しつつある。
こうした転換を着実に進めるためには、現在政府が進めている「新技術の社会実装」、「DX、データ駆動型社会」、「EBPMの徹底」などを着実に実行し、現在進みつつあるレジーム転換を更に推進していくことが必要。(図表5)

(図表5)「コストカット型経済」から「成長と分配の好循環」へ!

3.伊藤隆敏先生による現状分析と提言:現状は理想形の一歩手前!

事務局から、上記のように現在のマクロ経済見通しを紹介したが、この後行われた伊藤隆敏先生(コロンビア大学国際関係公共政策大学院教授)による現状分析が更にわかりやすかったので、以下で紹介したい。

(図表6)伊藤隆敏先生の現状分析

(図表6の左上)2021年までのデフレ下での「ゼロ・ゼロ均衡」
インフレ率、賃金上昇率、企業のコスト上昇率などが0%付近で均衡し、安定している状態。
こうした状況が長期間継続し、予想インフレ率も0%付近で安定してしまったため、この安定した状況を脱却することは簡単ではない。
なお、渡辺努先生によると、「ゼロ・ゼロ均衡」の弊害は主に以下の3点。

  • 企業のイノベーション(新商品開発など)を阻害し、資源配分が悪化

  • 労働者のスキル向上や労働生産性の上昇を阻害

  • 低金利の下で財政規律が後退、借り手の質も悪化し、新陳代謝が進まない

(図表6の右上)2022年の物価高騰
2022年には、新型コロナによるサプライチェーンショックやロシアによるウクライナ侵略などにより、エネルギーや輸入食料が高騰し、円安が急激に進んだこともあり、輸入インフレ率が急上昇した。
それを受けて企業のコストも高騰し、物価全体に波及したことで経済全体のインフレ率も急上昇した。

(図表6の左下)2023年のインフレ高止まり&賃上げ
2023年にはインフレ率が高止まりしたため、人々の予想インフレ率が上昇。
こうした状況を受けて(政府の働きかけもあって)、春闘などで30年振りの賃上げが達成された。

(図表6の右下)2024年には「2%・2%均衡」に向かう
2024年にインフレ率が2%程度で落ち着いてくれば、予想インフレ率、賃金上昇率、企業のコスト上昇率なども2%近辺で安定化する可能性がある。
そうなると、「ゼロ・ゼロ均衡」から「2%・2%均衡」へと、新たなマクロ経済の安定が達成される。

(図表7)理想形としての「インフレ2%・賃金3%均衡」

(図表7)理想形としての「インフレ2%・賃金3%均衡」
その先、生産性の向上によって、賃金が3%程度上昇しても、企業コストやインフレ率の上昇を2%程度に抑える均衡を達成していくのが理想。
それによって、実質賃金(3%程度)がインフレ率(2%程度)を常に上回るマクロ均衡が達成できる。

そのための施策として、伊藤隆敏先生は、以下のような提言を行なっている。
・DXの推進や作業の効率化による生産性の向上
・生産性向上の果実の労働者への分配
・海外収益の日本本社への送金(を賃上げの原資にする)
・年功序列賃金や終身雇用の抜本的改革、退職金の前払い
・最低賃金の引き上げや低所得者への所得移転
・イノベーションの源である研究大学の改革

伊藤先生の説明は、全体として、現在の政府のマクロ経済運営の方向性に賛意を示し、それを加速化するような提言であった。
渡辺努先生(東大教授)、矢嶋康次先生(ニッセイ基礎研究所)の説明も合わせて、わが国経済の先行きに大きな自信を抱かせてくれた経済諮問会議となった。

4.結びとして

政府としては、このような明るい経済見通しを実現するため、総合経済対策等で打ち出した政策を着実に実行していかなければならない。
それと同時に、与党・自民党としては、一日も早く政治資金パーティーの問題に対する再発防止策を策定し、国民の皆さんへの説明責任を果たし、新しいスタートを切らなければならない。
政治に対する信頼を取り戻すことこそが、政策の効果を高め、経済の回復を確実なものにするための必要条件なのだから。
そして、岸田総理の言葉である「今年よりも来年はもっと良くなる、そう信じられる国を作っていく」ことに、私も全力で取り組んでいくことをお誓い申し上げて、今年最後のブログを閉じたい。

2023年中は大変お世話になりました。
2024年もどうぞよろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?