鈴木みのる VS AJスタイルズ K点越えの化学反応~G1CLIMAX2014で生まれた一期一会の名勝負~

G1CLIMAX2014



新日本プロレス真夏の祭典「G1CLIMAX」は名勝負の宝庫である。実際に近年はG1公式戦や決勝戦が東京スポーツプロレス大賞ベストバウトに選出されるほどのハイクオリティーを誇っている。

2014年もそうだった。決勝戦となった中邑真輔VSオカダ・カズチカはその年の東京スポーツプロレス大賞ベストバウトに選出されている。

そんな2014年のG1で生まれた伝説の名勝負がある。

2014年8月1日・後楽園ホールで行われた公式戦・鈴木みのる VS AJスタイルズである。

"世界一性格の悪い男"鈴木みのる


鈴木は当時46歳。ヒールユニット「鈴木軍」のボス。藤原喜明やカール・ゴッチ仕込みの切れ味鋭いサブミッションと格闘スキル、性悪さをいかんなく発揮される狂暴性をプロレスというジャンルに落とし込むプロレスラー。人は彼を「世界一性格の悪い男」と呼ぶ。

"フェノメナール・ワン"AJスタイルズ


AJは当時36歳。ヒールユニット「BULLET CLUB」のリーダーとしてIWGPヘビー級王者に君臨した超絶テクニシャン。元TNA(現・インパクトレスリング)のスーパースターだった彼が2014年4月に突如「BULLET CLUB」に加入後、このユニットは世界的な知名度を持つようになった。また後にWWEに入り、世界のスーパースターとなるAJにとって新日本での実績はその評価を爆上げすることになった。人は彼を「フェノメナール・ワン(驚異の男)」と呼ぶ。

「お前ら、ピストルサインの意味を知ってるのか?」鈴木からの宣戦布告


ちなみにこの二人にとって、この闘いが正真正銘の初遭遇。

バレットクラブのリーダーと鈴木軍ボスの大将戦。

現IWGPヘビー級王者(2014年8月時点)AJスタイルズに対してみのるが意地を見せるのか?

Xディビィションの申し子と元キング・オブ・パンクラシスト。

異次元アメリカンプロレスの天才と世界一性格の悪い男。

どんな試合になるのは予測できなかった。
しかし試合当日が近づくにつれて思わぬ方向に進む。

きっかけは鈴木みのるがAJスタイルズを筆頭にやるシュートサインについて、難癖をつけてきたのだ。

こちらの文章は鈴木みのるがブログに記した内容である。

AJもそうなのだが、こいつがいるバレットというグループ。
コイツらが適当にやるあの指のカタチがキライ。
親指と人指し指で作る「サイン」だ。
このサインは拳銃を意味するサイン。
ピストル。
おまえらこのサインの意味知ってるのか?
ホントに知ってるのか?
この世界で「それ」を相手に向ける意味、わかってるのか?
ガキが使う「ガチ」とかいうのとまた違うんだぞ?


オレはコレが何を意味するのか知っている。
そりゃそうだ。
そんなのが普通に向けられる時代に生まれ育って来たからだ。


オレはソレを向けられたことある。
オレも向けたコトがある。


そしてその時に「何」が起きたのか、
「何」が起きるのか知っている。


その指のカタチはファッションなんかじゃない。
ワルぶって向けるものじゃない。


オマエらそれを人に向けるというほんとうに意味わかってるのか?
以前ワンピースというマンガを見た時に、
若手の時に見たのと同じシーンが描かれていた。
その時の心境と今は同じだ。


おい、ソレは脅しの道具なんかじゃねえ。
ソレを向けるってことは…
命かけろよ…
そんな気持ちでイッパイだ。
オレはいつでも覚悟は出来ている。
オマエらが、ソレを持っているかどうかはどうでも良い。
覚悟を持って、試合に行こうと思う
【鈴木みのるオフィシャルブログ 今日も明日も風まかせ/指のサイン】

実は鈴木みのるという男は各試合に何かしらのテーマを見出して、取り組むタイプのプロレスラーである。今回のテーマは、極めて重いものだった。

古くからプロレスを見ているファンならご存知かもしれないが、シュートサインとは相手と真剣勝負をするサインと言われている。

だからこのサインをすることの恐ろしさとタブーさは、ベテランになればなるほど過敏になるものである。鈴木は、この試合に賭けていた。

ここから先は

1,823字

¥ 100

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

少しでもサポートしていただければありがたいです!サポート資金は今後の活動費用で大事に使わせていただきます!