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スーパーノヴァという天体を見届けてきたムイビエン【清宮海斗VS大原はじめ/2021.8.15プロレスリング・ノア カルッツ川崎大会/プロレス影の名勝負シアター】

あまりクローズアップされていない試合を考察する「プロレス影の名勝負シアター」

プロレスは答えのないジャンルである。

なのでプロレスに対する見方や考え方は千差万別であり、多種多様である。

プロレスには誰でも注目するタイトルマッチやビッグマッチだけではなく、何かテーマがあって組まれたわけではない試合、あまりクローズアップされていない試合もいざ深掘りしてみると実は興味深いドラマが潜んでいたりするものだ。  

そんな隠れた名勝負を独自目線とこれまで当事者同士のレスラーストーリーを振り返りながらドラマチックに考察する「プロレス影の名勝負シアター」。

  

今回は、2021年8月15日プロレスリング・ノア カルッツ川崎大会で行われた清宮海斗VS大原はじめを取り上げたい。この試合は新型コロナウィルスによる一部選手の欠場により当初組まれたカードが変更となって急遽実現したシングルマッチである。



清宮海斗とは?

清宮は今年(2021年)でキャリア6年25歳の若きエース。180cm 98kgのヘビー級戦士。スーパーノヴァ(超新星)という異名を持つ。学生時代はサッカー少年で、格闘技経験者ではなかった彼は"プロレス界の盟主"三沢光晴さんに憧れて、高校卒業後の2015年3月にノア入門。同年12月9日、ディファ有明大会で熊野準を相手にデビューする。新人時代からトップレスラーとの対戦やカナダでの武者修行を経て、めきめき頭角を現し2018年12月16日横浜文化体育館大会で杉浦貴を得意技のタイガー・スープレックス・ホールドで破り、史上最年少22歳5カ月で、GHCヘビー級王座戴冠を果たした。

清宮はGHC王座を1年間防衛し、彼が王者になってから経営不振で低迷していたノアはリデットエンターテインメントという新たなオーナーの下で団体復活の狼煙を上げていった。彼はまさにノアの救世主。三沢光晴に憧れてプロレスラーとなり、”孤高のテクニシャン”小川良成からプロレス哲学と技術を叩き込まれ、若くして団体の頂点を取った清宮はプロレス界に新しい景色を見せるために奮闘している。彼が身にまとうエメラルドカラーは、三沢光晴の色である。直接触れた世代ではないが、彼は三沢イズムを継ぐ若者なのだ。

大原はじめとは?

一方の大原は今年(2021年)でキャリア17年37歳の職人レスラー。174cm 90kgのジュニアヘビー級戦士。ニックネームとなっているムイビエンとはとても良い、とても美味しい、とても元気ですという意味のスペイン語である。実は彼のバックボーンは”平成の格闘王”髙田延彦が立ち上げた格闘技ジム・髙田道場で培ったサブミッションレスリングで、当時はPRIDEの英雄として総合格闘技界で大活躍し、現在はノアに参戦する桜庭和志の指導を受けたという。2003年にウルティモ・ドラゴンが主宰する日本人ルチャドール養成学校・闘龍門に入門し、メキシコに渡り修業を積み、2004年5月16日、メキシコ・アレナコリセオの松山勘十郎戦でデビューする。新人時代は、後に新日本プロレスに移籍してスーパースターとなるオカダ・カズチカ(闘龍門時代は本名の岡田和睦)のライバルだった。

そこから大原はメキシコCMLLでレギュラー選手となるほど活躍し、その後帰国するも、そこからハッスル、SMASH、WNCと主戦場を転々としていく。SMASH時代にはライバルだったKUSHIDAは新日本に移籍してジュニアヘビー級のトップレスラーになっていく中で、大原はオカダやKUSHIDAの後塵を拝していた。2013年春にマイバッハ谷口Jr.というマスクマンに変身してノア参戦を果たし、そこからノアを主戦場にしていく。2015年にはノア入団を果たした。闘龍門仕込みのジャベ、どんな相手やパートナーでもきちんと試合を成立させ、好勝負を展開できるプロレスIQの高さ、正統派でも悪党でもどんなポジションでも活躍できるユーティリティープレーヤーとして団体には必要不可欠な存在となっている。

清宮をデビュー当時から特別視していた大原

同じ団体ながらあまり接点がないように思える清宮と大原。だが、大原は清宮をデビュー当時から相当意識していたようである。2016年1月31日の横浜文化体育館大会でデビューして1カ月の清宮とノアのジュニアヘビー級戦線で活躍している大原が8人タッグで初対戦。大原は清宮との初対戦を楽しみにしていた。その時の思いをブログにまとめている。

自分が意識しているのは清宮海斗との初遭遇
彼は今時珍しい18にして入門してデビューした人材だ
自分も12年のキャリアの中
日本、海外(CMLLを中心に)とたくさんのレスラー志望者、新人レスラーを見てきたが
彼のような人材は初めて
特別なアマチュアスポーツの実績が
なくともいろいろ器用にこなせる
身体的な事だけでなく業務的な事もしっかりできて非常にしっかりしているなと思う
今はまだまだプロレス経験値が圧倒的に少ないがゆくゆく間違いなくベルトを巻くようになる人材であることは感じとれる
そんな清宮のサクセスストーリーもプロレスの楽しみであり今ノアに来て楽しめることだと思う
初対戦 清宮海斗











そして、大原は清宮との初対戦後にもブログで思いを綴っている。

清宮との初対決
8人タッグというなかなか手合せが限られた時間の中だったけど初対決を楽しめた
第一(試合)という役目を意識した試合になった
彼には毎試合の1回の試合で最高の経験値を得て欲しいからし惜しみなく自分の技を与えた
普通ならボストンクラブでもなんでも彼から勝つのは容易だ
だけどいろいろな理由でフィンランド式フォアアームもムイビエンもした
大きな理由としてはまぁ経験値の度合いというのかな
味わっておけばきっと彼の未来に少なからずプラスになると思う
もちろんそれだけではないがそれが一番大きいかな
横浜大会を終えて











 この二つのブログ記事を読んでも分かるように大原はかなり後輩思いのレスラーである。また組織の中での自分や各々の立ち位置をきちんと俯瞰した上でプロレスを遂行しているのだ。恐らく大原は清宮がデビューした段階で将来はノアのエースになる逸材であることを分かっていたのかもしれない。また大原は、清宮に対してだけではなく、他のプロレスラーに対してもきちんと俯瞰した上で接しているように思える。

高松大会で初の一騎打ち

2016年2月13日高松大会で二人は初の一騎打ちを行い、大原が勝利する。大原のブログには清宮戦について、このように書かれている。

初の清宮海斗とのシングル
基本的に彼のやりたいことを受けるスタンスで試合
ルチャ的な要素を取り入れて他の選手との違いを出して彼に違ったスタイルを味あわせてみようと考えていたが
最初のロックアップで彼の現状を察知してルチャの要素はとりやめて基本的な日本式スタイルで仕掛ける事を決めた
最初のロックアップで彼の力の加減、気持ちを理解し押し込ませてみた
さぁ どうするかな
オレに不意に攻撃されないように警戒してるのはわかった
そして離れ際に一撃エルボーを打ってきた
彼の熱い闘争心とやる気が溢れた一撃だったが
おそらく内心、躊躇と恐怖があったのだろう
一撃打った後に清宮の体の硬直が感じられた
自分的にはガンガン来てもらうのは嬉しいからもっと打ってきても良かったと思うが清宮も先の展開が読めなかったり自分の反撃がくるかもと警戒したんであろうと感じた
この辺りいい意味でもう少しリラックスできるといいだろう
彼とじっくり肌を合わせ過去2戦よりやはりだんぜん彼の状況が良くわかった
そして他の選手がやらないようなタオルを使っての攻撃
胸へのチョップ 胸へのエルボー スリーパー 連続フォールといった全部呼吸が苦しくなる一点攻めを敢行
(中略)
清宮はやはりかなりのスタミナを消費していた
プロレスでもなんでもスタミナがきれると体は動かなくなる
ここでボストンクラブ
1割くらいかなりいやらしい攻め方をしたのでギブするかもしれないとは思ったが清宮ならしっかりがんばれるとは思った
案の定 清宮は腹の底から熱い闘争心と共に声を出し全身全霊のプッシュアップでロープエスケープしようと前進した
あと30cmほどに迫りくるロープ
オレはそこで更なる試練を与える
ロープに伸びる手を掴みエスケープを阻止しようとした
清宮の動きが止まった
お客さんからも あぁ ともうダメかというような声があがった
あとちょっとの距離で掴まれた手を振り払うように力いっぱい勢いをつけロープエスケープ
反撃できるかとの心配はすぐに杞憂に終わる
清宮はエルボーで反撃に出た
やはりスタミナ的に厳しいか 一撃が弱い すぐに張り手を見舞い黙らせる
ここで半分彼の反撃を期待しつつダメなら終らせようとフォアアームを狙う
ロープに走り勢いに乗った瞬間
俺の顔には衝撃が走った
そしてなにやらわたしの体から白い物体が飛んでいくのがスローモーションのようにみえた…
仮歯の前歯がぶっ飛んだ
(中略)
冷静に試合を構築し清宮をリードしてたがこの前歯ぶっ飛びドロップキックをもらったせいで完全に気が動転
一気に余裕をなくし彼が丸めこみを仕掛けてきた時にはテンパッて3回も丸めこまれた
でもこんなんで彼に勝ち星渡すわけにもいかないのでしっかり最後はムイビエン
でも前歯ないからしっかりしゃべれない…
(中略)
清宮も気持ちが伝わるプロレスができたと思う
いまの課題がわかったからこれからの試合でまた自分がいろいろ伝えていけたらなと
初の清宮海斗とのシングルを終え












二回目の一騎打ち。その舞台は大原の地元・カルッツ川崎

清宮VS大原が行われたカルッツ川崎大会は今年(2021年)で4回目。2018年からカルッツ川崎大会を地元川崎出身の大原はノアのスタッフと手がけてきた。大原は高齢者の介護や体操教室を行うなど、地域の人たちと触れ合い、川崎市のスポーツ審議委員を努め、市民代表として市の職員たちと会議を行い、スポーツイベントの普及や発展のために尽力してきた。紆余曲折の末に実現した清宮戦には大原にとって伝えたい「プロレスの形」があったのかもしれない。5年半ぶり2度目のシングルマッチのゴングが鳴った。

序盤、ロックアップするとサイドヘッドロックから首投げに持ち込む清宮だが、ヘッドシザースで切り返す大原。清宮がすぐにヘッドシザースを離して、両者が起き上がるとすぐに清宮の足をすくいフォールに狙う大原だが、清宮がすぐに離れて、逆に同じように大原の足をすくいフォールを狙うも大原が離れる。ヘッドロックをヘッドシザースで切り返す攻防は日本式、また相手の足を手ですくってからのフォールの攻防はメキシコのルチャリブレの序盤で見られるムーブ。片脚が深く極まり、弓矢固めのように相手の体が撓った変形グラウンドコブラツイストと形容すればいいのだろうか。

プロレスラーとして日本で生まれ育った清宮と、メキシコでプロレスラーとなった大原のルーツが垣間見える素早い攻防である。
ここから二人は華麗なロープワークを展開すると、大原が清宮をジャベで捕獲していく。
清宮がジャベを解き放つと、大原はさらに清宮の両足をクロスさせて捕らえてからの変形ロメロスペシャルからのカベルナリア(相手の上半身を起こし、顎を両手でつかんで後方に反り上げるように絞めるチンロック)に移行。
さすが大原。業師であり、ジャベの使い手である。
だが反撃に出る清宮は、執拗なヘッドロックから活路を開こうとする。
ここら辺りは師匠・小川良成譲り。新世代の旗手である清宮はクラシカルなレスリングスタイルを得意にしている。
格闘技経験がない彼にとってノア道場と小川の指導がバックボーンなのだ。

清宮のヘッドロックを逃れた大原はエルボー連打で流れを変えようとするが、
清宮が豪快なブレーンバスターで大原を叩きつけてフォールに入るもカウント2。
さらにボディスラムから低空のギロチンドロップを放つ清宮。
この低空ギロチンドロップは、20代の小川良成がよく使っていたムーブのひとつ。
そこからも攻める清宮。どうやら主導権を握ったようである。
コーナーに振っての串刺しジャンピングエルボーからDDTはカウント2。
このDDTもまた小川がよく使うフェースバスターのような形のDDTに近い。
すぐさまスリーパーホールドで捕らえる清宮。
ロープに逃れた大原はカウンターのケプラドーラ・コンヒーロ(風車式バックブリーカー)が炸裂。
ジョン・ウーから串刺しジャンピングエルボー、低空シングルレッグキックを叩き込んだ大原はフォールに入るもカウント2。
スピードでかく乱すること、清宮が予測つかない切り口がこの清宮戦での大原のキーポイントになるそうだ。

だが清宮は大原のコーナー攻撃を切り返すと、セカンドロープからブーメランフォアアーム(反転してのダイビング・エルボーアタック)を見舞い、トップロープからミサイルキックを放つ。
清宮は新人時代からミサイルキックを使っているが、小川が20代の時によく使っていた正面飛びのミサイルキックではなく、スクリュー式。実は若手時代に先輩レスラーからミサイルキックを教えてもらう際にスクリュー式の方が自分に合っているということでそれ以来、彼はスクリュー式なのである。
そこから得意技のひとつジャーマン・スープレックスを狙う清宮に対し、大原は空中で体を入れ替えてのフロントネックロック。このような切り返しは清宮はあまり予測していなかったかもしれない。
清宮は強引にブレーンバスターを狙うも、大原が着地してコンプリートショット。
そこからオクラホマロールのような丸め込み、十字架固め、ラ・マヒストラルでフォールを狙うもカウント2。

10分経過。ここで両者はエルボーの打ち合い。大原は「負けるかー!」と絶叫しながら放っていくが、清宮が打ち勝つ。
だが清宮のエルボースマッシュを防いだ大原が飛びつき三角絞め。
そこから丸め込んでカウント2.5。返しにくい押さえ込みだが、清宮はクリア。
一気呵成に攻める大原は左右の張り手、飛びヒザ蹴りから得意のフィンランド式フォアアームを放つもカウント2。
「あきらめねえぞ!」と叫んで走り込むと清宮がカウンターのドロップキック。
どんな場面でも華麗なドロックキックで自身のペースに持ち込んでいくのが清宮のプロレス。
清宮はジャーマン・スープレックスを狙うが、サムソンクラッチで切り返そうとする大原だったが、清宮がこらえて引っこ抜きジャーマン・スープレックス・ホールドで投げるもカウント2。
そこから得意の変形チキンウイング・フェースロック(従来のハンマーロックを極めながらのフェースロックではなく、清宮の場合は相手の左ヒジを後ろに曲げずに、ヒジを絡めながらフェースロックで絞めるタイプ)に入った。
さらに相手の右腕に足を掛けて逃げ道がないストレッチプラム式フェースロックが決まり、大原がギブアップ。 試合は12分12秒、清宮が勝利した。

試合翌日、大原は…

試合を制した清宮は、マサ北宮とのコンビで保持するGHCタッグ王座のベルトを掲げながらリングを後にした。
敗れた大原は会場に深々と一礼。原田&小峠に両脇を支えられながら退場すると会場から大きな拍手が起こった。

試合の翌日、大原はブログで清宮戦についてこのように綴っている。

清宮との試合は久々にシングルしたけど
清宮の若さもあるけどとにかくフィジカルが違ったね
清宮も技術も経験もついてきてるから体重差や体格差もあるけど
とにかく力強いし技量もついてるから
自分の経験値、テクニックとか技とかそういうのでどうにかなる範疇を超えていたね
勝機を見出す 打破するには気持ちしかない
全身全霊出して突破口を開くしかないそんな感じだった
でもそういった状況が小手先でないかっこつけた、きれいな闘いでなく汗、涙、鼻水でてかっこ悪くても
一生懸命、全身全霊で挑戦する立ち向かう姿を気持ちを生き様を見せれたと思う
第4回カルッツかわさき大会を終え











実はこの試合の決め手となったストレッチプラム式フェースロックは、元々清宮が得意していた変形チキンウイング・フェースロックの派生形である。大原は以前、清宮の変形チキンウイング・フェースロックについてブログで綴っていた。極められた経験者が語るこの技の凄さとは?

タイガースープレックスを堪えれたが瞬時に膝を蹴られ
膝をついた瞬間に腕を固められてフェイスロックにいかれた
チキンウイングフェイスロックなのだが実はやられた自分だからわかるが左手の固め方が普通ではなかった!
びっくりしたのと必死に抵抗したから分析しきれなかったが左腕、肩をがっちりかためられて動けなかった
どうはいった!?
オリジナリティあってこれからの清宮の代名詞的な技に昇華していきそう
清宮は頭部やクビにダメージを与える技が多い、
今日の首がもぎとれそうな顔面ドロップキックも急角度なジャーマンも首がきつい自分にとってはそれだけで3カウントいきそうだった
タイガースープレックスを堪えた先に待っていたフェイスロック
なにげに首攻めで試合を作る
清宮だけに理にかなっているしタイガーからの移行にもなる!
良い発想だし良い流れだと思う
清宮海斗の秘技!?オリジナルフェイスロック











清宮海斗の今後

清宮というレスラーは、緻密な攻めを得意にしている。その真骨頂がこの変形チキンウイング・フェースロックやストレッチプラム式フェースロックで発揮されるような気がする。

憧れの三沢光晴や、越えるべきレジェンドレスラー・武藤敬司や師匠・小川良成、ノアの天才・丸藤正道、豪腕エース・潮崎豪など清宮には何かと比較されたり、目標になるレスラーが大挙存在している。それは周囲から期待されている証拠なのだが、彼らの路線をそのまま踏襲するだけなら、清宮のオリジナリティーは出ない。

私は、全日本プロレス時代に、若きスタートして期待され、紆余曲折の末に新日本でトップレスラーとなったSANADAのスタイルはかなり参考になると思う。SANADAもクラシカルスタイルを得意とし、武藤敬司、三沢光晴、藤波辰爾といった正統派テクニシャンの系譜を継ぐ者として周囲から期待されていたが、彼の本領が発揮されたのは新日本に移籍し、これらの正統派テクニシャンのスタイルに、クールさや洗練さを織り交ぜたオリジナリティーが出てきてからである。

今年に入り、「プロレスがわからない」と悩める日々を過ごしていた清宮がどのように自身のレスラーロードの舵を切るのか楽しみである。そして大飛躍の突破口を遂に見つけたようである。

<プロレスリング・ノア>◇18日◇ノア特設アリーナ◇無観客
清宮海斗(25)が完全復活の兆しを見せた。16選手による「N-1 VICTORY」Aブロックで征矢学に勝利し、勝ち点2を獲得。序盤から征矢の連続攻撃に防戦一方だったが、何度もピンチをしのぎ、チャンスを待った。20分を超え、強烈なフェイスロックで流れをつかむと、最後はタイガースープレックスホールドで粘る征矢を沈めた。
悩み続けた男が、覚悟を持って臨んだN-1で生まれ変わった姿を見せた。勝利後両手を広げ、雄たけびをあげた。「やっと、やっと前に進めた気がする」。序盤場外で倒れ込み、リングに戻って来られず、征矢に引き揚げられる屈辱も味わったが、最後までギブアップせず、大きな声で自分を鼓舞し続けた。
3月にGHCヘビー級選手権で武藤に敗れ、自分を見失ってから半年。苦悩の日々が続き、あっさり3カウントを奪われるシーンも。敗戦後には「どうしたらいいんだ」と自暴自棄にもなっていた。今月3日の横浜大会でNOSAWA論外からギブアップを奪い、光が見えた。「自分で勝手に迷い込んでいるだけかもしれない。先に進みたいし、やりたいことがある」。N-1優勝に向け、立ち上がった。
ピンク色の髪を黒に変え気合を入れた。体も引き締まり、何度も立ち向かってくる征矢に8度のかち上げを浴びせるなど、力強さが戻った。次戦は21日杉浦戦。その後は武藤との対決も控える。「まだ初戦。2人を倒して、たまっていたものを動かしていく」。完全復活へ“ニュー清宮”が勢いを加速する。
清宮海斗が征矢学に勝利「やっと前に進めた気がする」完全復活の兆し(日刊スポーツ)












ずっと清宮を見届けてきた大原

一方の大原は急遽決まった清宮戦だったが、見事にそのプロレススキルと魂を見せつけてくれた。さすが団体を代表する職人レスラー。どんな状況でも瞬時に対応するのが大原の凄さである。

そして、今回の記事では大原はじめ目線から見た清宮海斗というレスラーについて書く記事となったため、彼のブログを中心にしてまとめることにした。このブログを見て分かるように、大原がいかに清宮を特別な存在として捉えていたのかが分かる。

清宮の異名であるスーパーノヴァ(超新星)とは、大質量の恒星や近接連星系の白色矮星が起こす大規模な爆発(超新星爆発)によって輝く天体のことである。清宮という光り輝く天体を大原はずっとノアのリングで見続けてきたのだ。デビューしたての新人時代からエースとなった頃、そして低迷しもがき苦しんできた現在まで。

そこには将来団体のエースになる男に羨望のまなざしと期待を寄せるエールなどさまざまな感情があったはずだ。

それでも大原は清宮が将来エースになるレスラーだと早くから注目してきた。いつか自身がこの男の神輿を担ぐ立場になることを見据えながら…。

そしてエースとはそんな礎になるレスラーたちの思いを背負って闘う別格の力を持つ者のことなのかもしれない。

プロレスは現在進行形の物語と歴史探求の物語が同時に楽しめる文化でもある。

清宮海斗VS大原はじめのシングルマッチには、二人のルーツ(起源や原点)とカレント(現在)が交錯した考察しがいのある一騎打ちだった。

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