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「ネタパレ、、、戦場。」

ネタパレの本番前、舞台袖は緊張感で溢れている。お客様とMC陣の前での一発勝負。俺はりんたろーさんに鼓舞され、いつもより気持ちが高まっていた。

「ジャンボさん、一体どうなされたのでございやすか?」

EXITかねちかだ。こいつはいつもこの調子だ。

「ジャンボさん、いつもより気合が入ってる感じがいたしやすねぇ〜!お見通しでございやすよ!」

実際お見通しだから、こいつはさすがだ。

「かねちか、悪いけど、今日の最もハマった芸人は譲らないからな。」

「ジャンボさん!俺らだって負けないでございますよぉ〜」

「ジャンボ!かねちー!俺らは蚊帳の外だってのかい??」

俺とかねちかが振り返るとそこには、舞台袖にも関わらず、葉巻を片手にゾフィー上田さんが立っていた。

「悪いんだが、ネタは誰にも負けない。俺たちが必ず、今日最もハマって芸人に選ばれる。おい!灰皿!!」

「ちぇ、ちぇだぜ!」

灰皿を差し出すサイトウさん。

上田さんは誰よりもお笑いを愛し、コントを愛し、ネタにストイックな人だ。この人の作るコントは、見るものを引きつけるパワーがある。面白いものを作りたいという気持ちが誰よりも強い。

「上田さん。今回は俺たち絶対負けられないんだ!」

「おれたちだって!負けねえでございあすよ〜」

三人の間に緊張感が走った。

「たははは!最もハマりたいと思ってハマれれば苦労はいたしませんよ!」

三人が振り返るとそこには、両手にトップレスの女性を抱いた、ザ・マミィの林田君が立っていた。

「みなさ〜ん!お笑いは気持ちなんて一切関係ありません。面白いor面白くないか、、です。」

上田さんが顔を真っ赤にして、まずはサイトウさんの鼻をグーで殴った。鈍い音がした。サイトウさんは、さすがに、この一言を言わずにはいられない。

「ねえ、血出てない?」

上田さんは林田君の胸ぐらを掴んだ。

「冗談じゃねえ!!てめえみたいなやつに負けてたまるか!女はべらせやがって!いいか!ここは戦場なんだよ!戦場に女を連れてくるんじゃねえ!」

その言葉を聞いた林田君は、高笑いしてこう言った。

「上田さ〜ん!ここは戦場じゃありません、、、スタジオです。」

「てめえ!許さねえ!!」

林田君に殴りかかろうとする上田さんを俺とかねちかは必死で止めた。

「上田さん!落ち着いてください!」

「上田さ〜ん!落ち着いておくんなまし!」

「ねえ、血出てない?」

「うるせぇ〜!離しやがれ!!」

「殴れよ!殴れば上田さんは終わりだね!」

一気に乱闘騒ぎになってしまった。騒然とする中、この人が口を開いた。

「いい加減にしてください!!!」

りんたろーさんだ。りんたろーさんの言葉で、場は一気に静まり返った。

「皆さん、ここは喧嘩をする場所ですか?違います。今から人を笑わせる場所です。林田君、人を挑発するのはやめてください。トップレスの女性は家に帰しなさい。上田君、熱いのはいいことですが、手を出したらあなた自身の価値が下がってしまいますよ。サイトウさん、血は少し出ています。いいですか?皆んなで力を合わせて、今日いらっしゃる観覧のお客様の、忘れられない1日にしませんか?よろしくお願い致します。」

さすが、近々選挙への立候補が噂されるだけあって、りんたろーさんの説得力は凄い。そこから各々ネタ合わせを始め、収録は始まった。正直に言う。俺は自分らのネタをあまり覚えて居ない。無我夢中だったんだと思う。ただ、1つ覚えているのは、ネタが終わった時、池田が言った言葉だ。

「今日、もろたで。」

しかし、その日、EXITもゾフィーもザ・マミィも凄まじい仕上がり方だった。本当に最もハマって芸人に選ばれるのか。相方の自信満々の顔だけが頼りだった。

「池ちゃん、俺、不安だよ。」

「ジャンボはん、あんたの天使めちゃめちゃわろてたで。」

俺は、天使が楽しんでくれただけで充分だ。そうやって自分を落ち着けていた。全員のネタが終わった。俺の芸名の名付け親でもあるまっすー師匠が締めに入る。

「では、藤田ニコルさん。今日最もハマった芸人を教えて下さい。」

天使が口を開く。

「私が、最もハマった芸人は、、、、」


俺は、天使の1番に、、なりたかった。


続く。



この話はフィクションです。





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