見出し画像

#27『オッペンハイマー 』の感想

アカデミー賞作品賞他7冠に輝いた『オッペンハイマー 』を観て参りました。

ドイツ系ユダヤ人としてNYで生まれた理論物理学者で原爆の父と呼ばれるロバート・オッペンハイマーは、ナチスドイツと鎬を削った原子爆弾開発のリーダーを務めた。第二次世界大戦終戦1ヶ月前に実験に成功した原子爆弾。その破壊力を誰よりも理解する者として被害に憂慮するも、学者の立場で阻止することは叶わず、広島・長崎に投下された原爆の甚大な被害に苦しめられる。終戦後はソ連との冷戦に備えた水素爆弾開発保有に反対したことから、公職から追放されたものの、晩年に名誉が回復された。

というオッペンハイマーの伝記映画です。

衆議院議員の細野豪志さん、社会派ブロガーのちきりんさんのvoicyは、鑑賞前に聞きました。

<iframe src="https://r.voicy.jp/079XPqrO9en"width="100%" height="385" frameborder="0" scrolling=”no” style="overflow:hidden"></iframe>

登場人物が多く、更に時間行き来する等、複雑なストーリー展開に備えて、お二方とも登場人物等を押さえる事前学習をお勧めくださっています。私は、Wikipediaやこちらの記事に目を通しました。

https://screenonline.jp/_ct/17691378

鑑賞後には、こちらのNoteも拝読させて頂きました。

感想

「私がしたかったのは、歴史の大転換期の絶対的中心にいた人物の、魂と経験の中に観客を導くことだ。」

クスストファー・ノーラン監督の言葉として、SCREENの記事に書かれています。

劇場の入り口に、画像の注意書きが置いてありました。

確かに原爆投下を想起させる、被害の様子を表すシーンがあります。この部分はロバート・オッペンハイマー(これより先は、ロバートにします)が被害を想像して苦しむ様子を映し出す為のシーンです。

具体的な投下後の被害状況が映し出されないことに対する不満や、映し出される被害のシーンがデフォルメされている、という感想を目に耳にします。

私は、その事に違和感は抱かず、監督の意図通り、ロバートの経験を見せてもらった、という感覚で作品を捉えました。作品を通じて、人の機微の本質、を見せてもらったと思います。

人の妬みほど怖いものはない。

ロバートをプリンストン高等研究所の所長に抜擢する、アメリカ原子力委員会の委員長を務める、ルイス・ストローズの「妬み」による裏工作で、ソ連のスパイ疑惑が架けられ、公職を追放されてしまいます。人は「妬み」をエネルギーに替えて、想像を超える「嘘」を捏造する生き物です。

原子爆弾開発を成功に導いただけであれば、監督はロバートを主人公にした作品を作らなかったのではないでしょうか?この「妬み」は、とても重要な要素だと感じています。

原爆を開発した者よりも、投下を決めた者の方が恨まれる

原爆開発を苦悩するロバートを、投下を決断したトルーマンが疎んじます。客観的に見れば、投下しなければ原爆も宝の持ち腐れ。トルーマンがふざけるな的な気持ちをロバートに抱くのは最もで、悲劇のヒーローぶってる姿を目にしたら、嫌悪感を抱く気持ちは理解できます。

パートナー選びは重要

精神を病んだ元恋人と一夜を共にした事を知る妻は、元恋人の自殺で打ち拉がれるロバートを叱咤激励して、重要任務に戻るよう促します。公職を追放されそうになている夫から逃げず、百戦錬磨の相手からの攻撃にも臆する事なく対峙する強さも備えています。ロバート、元恋人と結婚していたら、違う人生になっていたように想像しました。

弱みは伸びない

ハーバード大学を卒業後、ケンブリッジ大学に留学するロバート。理論物理学者として名を馳せますが、実験は大の苦手。実験物理の教授にも辛く当たられてしまいます。しかし、ノーベル物理学賞を受賞した理論物理学者、ニールス・ボーアには評価され、ドイツ行きを薦めて貰います。自分の強みを見つけて伸ばすこと、人の強みを見つけて評価すること、に気持ちを向けようと改めて思いました。


最後に、敬愛する岡田斗司夫さんは「お金と時間に余裕があったら観た方が良いに決まっている作品」とおっしゃていらした『オッペンハイマー』。私は、観て良かったです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?