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【フォトアルバム】霜化粧


こちらは凍っていませんが、あまりにもらぶりーだったので^^;



雑談です

∫1 フィルムカメラは、霜の撮影が苦手


霜化粧は、フィルムカメラには難しい被写体です。

1)見たければ、息を止めるしかない対象

かつて、カメラはファインダーを覗く形でしか、
被写体の位置を決められませんでした。
フィルムカメラに接写レンズを装着し、霜のついた落ち葉に寄れば、
体温と吐息で霜が溶けてしまうでしょう。

気象条件により、美しい雪の結晶が降ることがあります。
視力が良い人は、肉眼でも観察できます。

どの結晶も同じでなく、どの結晶も精緻な工芸品のような美しさです。
ミヒャエル・エンデの『モモ』で咲き上がる花がどれも同じでなく、
かつ、どれも美しいことを思い出します。

雪の結晶の美しさを楽しめるのは息を止めている間だけです。
我慢できなくなって息をすれば、結晶はその瞬間に溶けてしまいます。

SF『アビス』で描かれた悲劇を思い出します。
深海で文明と思しきものを発見したものの、それは非常に繊細で、
観察しようと接近すると、その接近が壮絶なダメージとなって、
目の前で文明が崩壊してしまうという。

2)朝日が照らし始める、その前にある世界

フィルムカメラは光量を必要とします。
光景を得意とする一方で、暗景を苦手とします。

マグリットの絵に「アルンハイムの地所」という作品があります。
時が止まったような、この未明の風景は、フィルムカメラでは撮れません。
東山魁夷の「月篁」も撮れないでしょう。
ヒトの眼には暗所の対応力があって、暗くても見ることができるのですが、
フィルムカメラは肉眼とは異なります。
肉眼で見るように気軽に撮ったのでは、写らないか、ブレるかです。
ISOを上げて強引に写そうとすると、ザラザラの絵になります。

霜や雪の結晶は、太陽が出る前、わずかに空が白み始めた頃が勝負です。
陽が当たると、その当たった場所が速やかに溶けます。
光量が増して撮影が容易になることと、霜の存在が両立しにくいです。

つららや霜柱など大きい氷晶なら、日が昇ったあとでも撮れます。
霜や雪の結晶の撮影が難しいのです。

3)おそらくズームならフィルムカメラでも撮れる

フィルムカメラでも、霜や雪が撮れないことはありません。

もし、「何としても霜を撮るぞ」と決めているのなら、
日の出前に、霜から1~2mほど離れた場所に三脚を立て、
ズームレンズを使って撮ることができるでしょう。

ただし、霜を見て「美しいなあ」と思う感覚は、
接写型マクロレンズを愛用するカメラマンの特性です。

 A:賛美を覚える対象
 B:撮影を可能にする機材
この要素ABが揃わない状況では、撮らないか、写せないかです。

∫2 デジカメの有利二つ

1)腕を伸ばし、画面を見ながら撮れる

かつて、老カメラマンが、僕の撮影動作を見て、
「違う、そうじゃない、カメラを眼につけろ、改めろ、直すんだ」
としつこく指導してきて、困惑したことがあります。

僕は、言い返さず、従わず、いつも通り腕を伸ばし、
こうだと思った構図で、シャッターを押しました。
そして、撮り終えた画像を液晶画面で見せました。
「ファインダーを覗かずに撮る? 何がどうしてそうなるんだ?」
老カメラマンは、若輩の誤りを正すという快楽を一時停止し、
何が起きたのか、思案している様子でした。
(同席していた若手カメラマンたちは笑っていました)

僕はデジカメ世代です。

僕がフィルムカメラを使用したのは、30年前の研究業務が最後でした(*)。
以降、ずっとデジカメを使っています。
デジカメは、時代とともに機能があがっていきましたので、
試してみたい機能が開発されるたびに、買い替えて現在に至ります。

中でも大活躍したのは、オリンパス機でした。
「このカメラは画面を見ながら撮れるのか! やりたい! 今すぐ!」

新発売のカメラを見たその日に、オリンパス機を連れて帰りました。

液晶の普及期、各社はこぞってカメラに液晶を搭載しました。
しかし、初期は、撮った画像をあとから確認する用途に留まっていました。
リアルタイムで画面を見ながら写せるカメラは夢のようでした。

僕は電子顕微鏡(SEM、TEM)の使い手です。
研究業務では、スコープ(光学、超音波)を使用する機会も多いです。
デジカメが普及する前から、画面を見ながらの撮影になじみがありました。

画面を見ながらの撮影では、撮影者の構図の感覚が反映されやすいです。
キャンバスにおいて対象の配置を決めるがごとく、
画面を視界に入れ、「こうだ」と思う位置に被写体を配置します。

通常のフィルムカメラは、ファインダー撮影のみです。
 ・撮影者の注意を引いた「何か」が確定する(中心となる被写体)
 ・被写体をファインダー(の中央付近)に収める
という撮影工程が一般的です。
フィルムカメラでは、「見る(≒何かに注意を向ける)」と「撮影」が、
かなり近い位置にあります。

絵画は異なります。
画家は、与えられた領域、その範囲における構図を考えます。
主題に相当する対象を見るだけでなく、領域を意図的に構成します。

画面撮影で撮影者が目を向けるのは、被写体ではなく、画面全体です。
画面撮影の最大の利点は、構図感覚の反映といってよいでしょう。

ただし、構図以外でも、特殊なシチュエーションにおいて、
画像撮影が奏功するケースがあります。
画像撮影では腕を伸ばし、カメラを身体から遠ざけて撮ります。
今回、伸ばした腕は40cm強に過ぎないですが、
その40cmが霜に息がかかるのを防ぎました。

なんと、雪の結晶をスマホ+マクロレンズで撮影できた方もいるようです。

この研究者さんも腕を伸ばして撮影しています。

雪の結晶の画像、非常に美しいですね。
しかし、「私も撮れました」という報告は続きませんでした。
この撮影を成功させるには、①気象条件、②冷却、が必要なようです。
研究者は、根気と工夫のレベルが常人と違うかもしれません。

僕はカタクリなど、下向きに咲く草花を撮影することがあります。
ファインダー撮影だったころは、自分が地面に転がって撮影していました。

ある日、母校の薬草園で地面に転がってファインダーを覗いていたところ、
管理棟から人が飛んできました。
管理人さん曰く、「てっきり倒れたと思いまして」と。滝汗

画面撮影であれば、カメラを地際に置き、画面を覗くだけで撮れます。
腕を伸ばしての画面撮影、いいですよ。

*40年前よりあと、メディカルニッコールでの撮影が最後でした。
 修正します。

2)ISOの上昇ペース、おそるべし

今回の撮影時刻は日が昇る前、撮影場所は谷底です。

今回、使用したカメラは、ISOを高く設定できません。
ブレと暗さは、PC画面で観賞できるぎりぎりに見えます。

今回の写真はぎりぎりであるとして、
最新機を使えばもう少しきれいに撮れるかもしれません。

古くからのIT屋は、
・クロックの指数関数的な上昇
・メモリ当たりの価格の大幅な下落
・データ転送速度の上昇
について、時代の目撃者であることでしょう。

デジカメにもこの手の変化があります。
近年、デジカメの最大ISOが大幅に上昇しました。
フィルム時代からは想像できない桁数になっています。

最大ISO数で撮るシーンはまずないと思いますが、
それでも暗さの耐性はさまざまなシーンで役に立ちそうです。

一番助かっているのは、猫を撮る人たちではないでしょうか。
飼い猫は、暗い室内で心地よく過ごします。
暗くてシャッタースピードを落とせないのに、その猫が動く。
撮りたいのは、その動きのある一瞬であったりします。
愛猫を生き生きと撮りたければ、ISOに余裕のある最新機がよいでしょう。


∫3 新機を購入しました

長らく使い倒してきた古い愛機+接写レンズですが、
そろそろ新しいカメラが欲しくなってきました。

僕は夜咲く花を育てています。
夜咲きの花の多くは、日没前後の18時から19時頃に咲きます。

薄闇に浮かぶ花を、暗いまま、ブレなく精緻に撮りたい。
そんな望みがあるのなら、高ISO対応のカメラを買うべきでしょう。

というわけで、先日、新しいカメラを買いました。
新しい接写レンズも一緒に。

到着したばかりで、現在は試し撮り中です。
まだ、撮れるという感覚がありません。
しかし、「こう設定すれば、こう写る」の感覚が手に入るのは、
時間の問題です。

次の旅には新機を連れていくつもりです。

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