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占い師に占い師が向いていると言われ続け、占い師になろうとしている話


「あなたには、占い師が向いていますね」

またか。

去年の春ごろ。
5回目の占い師による占い師が向いている宣告をされ、愕然とした。


私は仕事を辞めたかった。
仕事が嫌になったとか、人間関係が嫌になったとかではない。

でも、辞めたい。
理由はたぶん多くの人が思ってることだと思う。

「週に5日も会社に行きたくない」

これに尽きる。

じゃあ、自分のペースでできる仕事を探すか!

ところがここからが問題である。
仕事にしたいようなことがない。


そこで私は、おすすめの職業を占い師に聞いてみることにしたのだ。

占い自体は、数年前から年2回くらいのペースで通っていた。
だけど、悩みを相談したことはなかった。

「人に相談するくらいなら自分で全部決める」
私はそういう女だ。
あまり人の話は聞いていない。

悩みがないのに占いに行っていた理由は、単純に占いが好きなのと、
あとは「職場見学」だ。


じつは、私は自分でタロット占いができる。
わりとまじめに勉強していて、メール鑑定を中心に人を占うこともしていた。

占いを本業にするつもりはなかったが、独学で占いを勉強していた私は、
せめてプロの占いを体験することでスキルを高めようと考えていた。

職人は「技を見て覚えろ」と言うではないか。
占い師が職人なのかはわからないけど、そんなつもりだった。

やっと悩みができた私は、よりリアルな占い体験ができると思い、
喜々として占いの館に足を運んだ。


数か月で5人の占い師に、私におすすめの職業を聞いた。

占星術、手相、数秘術、霊視などなるべく異なるジャンルで、
いままで鑑定してもらったことのない占い師を選んだ。
そのほうが勉強になるからだ。

その結果が冒頭の「占い師が向いていますね」である。

5人全員。そんなことある?
そんなに占い師に向いてそうな顔してる?
失礼だけど、占い師だからって占い師以外の職業を知らないわけじゃないよね…。

もちろん、疑り深い自分の性格をよく知ってるから、
「趣味で占いをやっています」とか、誘導するようなことは一切言っていない。

そんなことをしたら、(またまた~!占いやってるって言ったからでしょ)ってなるのは目に見えてるので、意味がなくなってしまう。

ちょっと試しているようで申し訳ないが、やっかいな私の性格を考慮した結果である。

それなのに、霊視をする人にいたっては

「あなた、“こっち”の人ですよね。
 私に聞かなくても自分でわかるんじゃないの?
 うしろの人(守護霊)がそう言ってますけど

と不思議そうに言ってきた。

守護霊による情報漏洩である。

その占い師は「そのうち本格的に占いの道に入ると思いますよ」とまで言った。


占いを本業にするなんて考えてもみなかった。
だって、占い師ってあやしくない?
子供もいるので、ママ友を作るのに支障が出そうな職業はちょっと悩む。
でも、そこまで言われるなら少し考えてみるか…と思い始めていた。


しかし。
肝心の占い師になる方法がよくわからない。
その道に入るよと言われても、どうやって入るの?

タロットは独学だから、師匠はいない。
なるだけならなれるかもしれないけど、本気でやるなら、もっと技術を身につけたい。


本当かどうかは知る由もないが、なんかすごそうな占い師のプロフィールを見てみた。

「生まれながらにして鋭い霊感を持ち…」
霊感、持ってない。

「家系より受け継ぎし…」
ごく一般の家庭に生まれてしまった。

「交通事故で生死をさまよい…」
生死さまよってないや…。

他にも、「〇年にわたる〇〇での修行を終えて…」とか、「〇〇先生に師事し…」とか、それってどうやって見つけるの??とわからないことだらけ。

どこでどう勉強すれば「一人前の占い師」と胸を張って言えるんだろう。


5回目の「占い師が向いています」を聞いたあと、
私はその足でなんとなくパワーストーンのお店に行った。
なんだかそわそわして、まだちょっとだけ不思議な世界に関わっていたい気分だった。

そのお店には小さな占いスペースがあった。
比較的安い値段で20分占いをしてくれるらしい。
そっと覗いてみたら、人のよさそうなおじさんと目が合った。

男の人にはあまり見てもらったことがない。
ちょっと好奇心がそそられた。
挨拶をして、その日2回目の占いを申し込んだ。


その相談では、初めて最初から何もかも話した。

会社を辞めたくて、自分にあった仕事を見つけたい。
でも、占いに行くと必ず占い師が向いてると言われる。
タロットはかじってるけど、強い霊感があるわけでもない。
そもそもどうやって占い師になるのかわからない。

おじさん占い師はふんふんと聞いて、カードを引き始めた。
カードをめくった瞬間「ほぉ~~」と言った。

「いや、たしかに占い師は向いていますよ。非常に向いている」

今回は最初から情報を出してしまったので、
(ほら~~それっぽいこと言う~~)と思う私。

その表情を読み取ったのか、おじさんは一冊のノートを取り出した。
どうやら、いま引いたカードの解説ノート(自作)らしい。

なにそれ企業秘密じゃないの?見ていいの?とわくわくする私。
「鋭い感性、霊感、先を見る力、新世界に飛び込む」みたいなことが書いてあったと思う。

「それでね、これとこれを組み合わせると
“占い師の素質があって、その道に入ろうとしてる”って意味になるでしょ」
と解説してくれた。

たしかに。そんな気がする。

「でも、私には占いの先生もいないし、占いの話ができる人すらいません。
 〇〇さんはどうやっていまの占いにたどりついて、どうやって学んだんですか? どうやって占い師になったんですか?」

と、私は率直な疑問をおじさんにぶつけてみた。

もはやこれは占いではない。ただのインタビューである。
職場見学精神が前面に出てしまった。

しかしおじさん…というのもいい加減失礼なので、山田さん(仮)とする。

山田さんは嫌な顔ひとつせず、自分が占い師になった経緯や、
自分の勉強方法などをひとつずつ話してくれた。

途中で時間終了を知らせるタイマーが鳴ったが、それを止めて、
「延長料金は取らないですから」と言って、話し続けてくれた。
すっごく良い人。


「あなたはなぜ占いをしているんですか?」
と山田さんは私に聞いた。

私はちょっと考えて、こう答えた。
「自分にできることで、人の心に寄り添う仕事がしたかったから」

私は、もともとカウンセラーになりたかった。
自分が親子関係で苦しんでいたから、同じように苦しんでいる人の助けになりたいと思っていた。

だから大学では心理学を専攻した。
だけど、いろいろあっていまいち覚悟を決められず、普通に就職したのだった。

でも、やっぱり誰かの心に寄り添う仕事にはずっと憧れがあった。

それに、占いをしながら自分の心と向き合うのが好きだった。
タロットの絵に、言葉になっていない感情を投影して、形にしていくのだ。
占いは他人の心だけではなく、自分の心に寄り添うこともできた。

だから私は占いをしていた。

そんなことを、山田さんと話しているうちにはっきりと自覚していた。
私は「占い師になりたくない」理由ばっかり見て、「占いをやりたい」理由を見落としていたのか。

山田さんはうんうん、と頷いた。

「占い師って、それがいちばん大事なんですよ。
 お金とか、名誉じゃないんです。
 だから、あなたは占い師に向いているんです」


会計を終わらせてお礼を言うと、山田さんは別れ際にこんなことを言ってくれた。

「このお店で”占いをする側”になったらどうですか?オーナーを紹介できますよ」

占い師の就職先、すんなり見つかった…!
(このあと、お店のオーナーにもあっさり「いいんじゃない?」と言われた。)


というわけで、いつか一人前の占い師と胸を張って言えるよう、いまもなお勉強中の身である。

占いをやっているくせに、どうも占いに対して「あやしい」と思ってしまう節があるので、自分もそう思われたくなくて、占いをやっていることは周りにあまり話してなかった。

でも最近、占いが好きなのに黙っている自分に、違和感が仕事に精を出し始めた。

だから占いについて学んだことをアウトプットするためのブログを開設し、
思い切ってTwitterで打ち明けてみた。

2年近く育児の日常をだらだらと流していたママアカウントで、である。

フォロワー減るかもな…と思っていたら案外そんなことはなく、
すんなりママさんたちに受け入れてもらえた。
それどころかけっこう感想をもらえたりして、とても励みになっている。

この世の中、占いへの偏見は少なくなってきているのかもしれない。
実際、占い師って派手なキャラの人が多い印象だったけど、最近の占いサイトとかを見ていると、「普通の人」の割合が多い気がする。

もちろん、占いって目に見えないものだから、悪いことに使おうとする人もいる。
だけど、占いに真剣に向き合っている人たちを、いまも続けている「職場見学」を通してたくさん見てきた。

占い師って、膨大な知識が必要だから、研究者みたいなところがある。
知的好奇心がすごくて、一生勉強するぜ!って人がたくさんいる。

「まずは己がしっかりしなければ」と修行僧みたいに精神を磨き続けている人も多い。

それに、これは私がラッキーなだけかもしれないけど、親切な人が多い。

山田さんもそうだけど、このあと他の占い師にも占い師を目指していることを話したら、みんな占いそっちのけで業界についてのあれこれを教えてくれた。親戚の人かと思った。

占い師って素敵だなあ、と最近はよく思う。

いいよね、占い師。
せっかくブログもnoteも始めたので、これからも占いの勉強をしながら、
占いの魅力を発信していきたいと思っている。

そして社会の占いへの偏見をなくすのに貢献し、堂々とママ友を作るのだ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

#キナリ杯 #占い #占い師

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