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2023年の正月映画「トップガン・マーヴェリック」そして「カサンドラ・クロス」

穏やかな陽気で迎えた2023年元旦。

僕が中学生の頃、お正月の楽しみといえば、親戚から集めたお年玉で故郷の佐伯市内に一軒だけあった小さな模型屋(8畳ぐらいの狭い店内にたくさんのプラモデルの箱が積んであった)でタミヤのプラモデルを買うことと、寿屋というデパートを中心とした繁華街「大手町」の外れにあった映画館「サンケイ」や「東映劇場」に正月映画を観に行くことであった。1960年代の映画全盛期に比べて映画館の数も観客数もコンパクトになったものの、家族や友人、恋人などと一緒に映画を観に行くということは現在よりも特別なイベントで、お正月の晴れやかな雰囲気の中、たくさんの観客と一緒に観る映画は格別なものがあった。

サンケイは1・2と分かれており、それぞれ別のプログラムを上映していたが、集客の見込める「スター・ウォーズ」などの公開時には併映作品を変えて2館とも「スター・ウォーズ」ということもあった。数多くの作品が観たい僕はこれには「う〜ん」と地団駄を踏んだものだが、結局両館とも観に行った。もちろんどちらの劇場も観客で溢れかえっていた。「スター・ウォーズ」を観たあと、模型屋に寄り「Xウイング」のプラモを買ったこともあった。


「中二病の魂百まで」ということだろうか、僕はこの10年ばかり、年が明けるごとに中学生の頃に観た「カサンドラ・クロス」と「カプリコン1」を交互に観ることを新年の恒例行事としてきた。年によっては上映権がとれず(レンタル出来ず)、泣く泣く「オルカ」でごまかすこともあった。しかし、さすがに飽きてきて去年は「キングコング」と「ラストコンサート」を久しぶりに楽しんだ。

この辺の作品のチョイスについては同年代の映画ファンには分かっていただけるかと。

今年は「カサンドラ・クロス」を用意したのだが、コロナ禍は落ち着かず、元旦の朝に、崩壊する橋から電車ごと落ちていく悪性のウイルスに感染した乗客たちの阿鼻叫喚を観る気になれず、配信リストから、去年大ヒットした「トップガン・マーヴェリック」を選んだのだった。

前作がMTV風味のお気軽映画という印象なのであまり期待も持たず、ただ正月映画ぽいという理由で選んだのだが、思いがけず泣いてしまった。
前作に目配りしつつ、生と死、過去と現在、再会と別れ、それを繋ぐ人との魂の交流が描かれる。過去のトラウマを乗り越え、旧友の息子を救うために自ら敵地に乗り込むロートルなパイロット、ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル海軍大佐を再びニヤリ顔で演じるトム・クルーズ。病魔に犯され余命いくばくのトム・“アイスマン”・カザンスキー海軍大将をストイックに演じるヴァル・キルマーも泣ける。ラストに “トニー・スコットに捧ぐ” と出てまた涙。

前作の主題歌であるケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」にはなんの思い入れもないが、本作の劇中で流れてくるとぐっと来てしまった。

映画館で観たくなり、息子と観に行こうかとネットで調べたら、大ヒット作だけあり、昨年5月公開のこの作品は年明けの今も劇場公開されている。残念ながら4DXの上映のみで、僕は酔いそうだし、息子はロックは聞くくせに騒々しいのが嫌いなのであきらめることにした。


トップガン・マーヴェリック」2022 〔監督〕 ジョセフ・コシンスキー 〔出演〕トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリス、ヴァル・キルマー

グースの息子のブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショー大尉を演じたマイルズ・テラーは「セッション」の彼である。

  • 本文中の役名にいちいちミドルネームを入れたのはカッコよさげで言いたかっただけです。


スター・ウォーズ」1977 〔監督〕 ジョージ・ルーカス 〔編集〕ポール・ハーシュ〔出演〕マーク・ハミル、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー、アレック・ギネス、ピーター・カッシング
カサンドラ・クロス」1976 〔監督〕 ジョルジ・パン・コスマトス 〔出演〕ソフィア・ローレン、リチャード・ハリス、マーティン・シーン、エヴァ・ガードナー、アン・ターケル(リチャード・ハリスの当時の奥さん) 
カプリコン1」1977 〔監督〕 ピーター・ハイアムズ 〔出演〕エリオット・グールド、ジェームズ・ブローリン、サム・ウォーターストン、カレン・ブラック、ハル・ホルブルック、テリー・サバラス
オルカ」1977 〔監督〕 マイケル・アンダーソン 〔音楽〕 エンニオ・モリコーネ 〔出演〕リチャード・ハリス、シャーロット・ランプリング
キングコング」1976 〔監督〕ジョン・ギラーミン 〔音楽〕 ジョン・バリー 〔出演〕ジェフ・ブリッジス、チャールズ・グローディン、ジェシカ・ラング、エド・ローター
ラストコンサート」1976 〔監督〕ルイジ・コッツィ 〔音楽〕ステルヴィオ・チプリアーニ 〔出演〕パメラ・ヴィロレージ、リチャード・ジョンソン
セッション」2015 〔監督〕デイミアン・チャゼル 〔出演〕マイルズ・テラー、J・K・シモンズ

【NOTES】

「カサンドラ・クロス」と「カプリコン1」の共通点 音楽がジェリー・ゴールドスミス(彼の仕事は1960年代後半から70年代にかけて傑作揃い)、そしてO・J・シンプソン出演。
「オルカ」 「カサンドラ・クロス」のリチャード・ハリスが主演。スパック(SPAC)・ロマン(! Scientific・Panic・Adventure・Cinemaの頭文字を取った)という惹句で公開された。地方では「カプリコン1」の併映であった。
「キングコング」 “ギラーミン” 呼ばわりされたり、この作品でデビューのジェシカ・ラングが「コングの嫁」と揶揄されたりするが、そこまで悪くないと思う。ジェシカ・ラングのビッチぶりも後の演技派女優への萌芽を感じさせる。
「ラストコンサート」 なんといっても、いまだに口ずさめる哀愁のメロディ。白血病に冒された少女と恋に落ちる中年のピアニストを演じたリチャード・ジョンソンはこの3年後「サンゲリア」でゾンビを研究する医者となる。地方では「カサンドラ・クロス」の併映であった。


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