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渋谷渋谷中学入試の作戦会議

はじめに

この記事では、渋谷教育学園渋谷中学校(渋渋)の入試を考えているご家庭に向け、入試・問題の分析と対策案についてご紹介します。同系列の渋谷教育学園幕張(渋幕)は1月入試ということで併願する人も多いと思いますが、入試問題の違いは意外に大きいと感じるので、渋幕入試の経験と記事作成時の分析から、渋幕の入試問題とも比較しながら見ていきたいと思います。

なお、このシリーズ全般に共通する内容として、どういう背景で情報提供しているのか、対象と想定しているのはどういう方かについて以下のページに記載していますので、最初にぜひご一読ください。

【更新履歴】
・2023年11月15日 公開
・2024年8月9日 2024年の入試結果データをもとに更新


入試の分析

ではここから本題に入っていきます。まずは入試結果データを元に、渋渋の入試自体の分析をします。

難易度は年々上がっている

ここでわざわざ触れなくてもご存じだとは思いますが、渋渋は2000年代から徐々に人気が上がり始め、2010年代には女子は難関校の一角になり、男子はやや出遅れていたものの共学人気に乗り(乗ったというよりむしろ作り出してきた側だと思いますが)、ここ数年で共に最難関の一校として定着してきた感があります。

まずは偏差値の推移を見てみます。

データ元:各塾の入試結果偏差値表
(サピックスのみ翌年度の第1回志望校判定サピックスオープンによる予想偏差値)

第1回入試については、10年前はまだ二番手・三番手校といった位置付けでした。そこからほぼ一直線に上昇し、男女共もはや最難関の一角と言える位置まで上昇してきたのがわかります。

データ元:各塾の入試結果偏差値表
(サピックスのみ翌年度の第1回志望校判定サピックスオープンによる予想偏差値)

2月2日の第2回入試は、SAPIX偏差値60など以前から高めではありましたが、それでもじわじわと上昇して、完全に最難関校としての位置を確定させた感があります。

データ元:各塾の入試結果偏差値表
(サピックスのみ翌年度の第1回志望校判定サピックスオープンによる予想偏差値)

第3回入試は2月5日で定員も少ないので、あまり分析しても仕方ない回だと思いますが、まあ大体第2回と同じような動きだと言っていいでしょう。

全体を見て言えることは、ここ10年で男女ともに第1回が急速に難化し、今は回による偏差値の差はほとんどなくなってきているということかと思います。

続いて出願者・受験者・合格者の数と実質倍率を見てみます。

倍率は2020年に全ての回で一度落ち込んでいますが、その後は再び上昇しています。2023年まで上昇を続けていましたが、その反動か、2024年は全ての回でやや低下しました。とはいえ、ここ数年で見ても高い倍率を保っていることは確かです。

女子の合格ハードルは高い

渋渋の入試については、男女の違いがあることは意識したいです。ただ募集要項を確認すると、募集人員は「第1学年(男‧女)計70名」といった書き方をしているので、決して男女別定員というわけではありません。また、Q&Aにもこう記載があります。

Q 合格者の男女比率を考慮していますか?

A 基本的には成績順で男女比を考えずに合格者を決定します。
 ただし、合格者の男女比バランスが7対3、8対2などの場合、男女の合否ラインに差をつけることもあります。

渋谷教育学園渋谷中学高等学校 よくいただくご質問

しかし、入試結果を見る限り、どの入試回でも男女で合格最低点が異なっているのが実際です。直近7年の合格最低点を男女別で出してみたのが以下の表です。

2019年の第3回入試だけが例外的ですが、それ以外の全ての回で女子の方が合格最低点が高くなっており、明らかに女子の方が厳しい入試と言えます。

ただ2024年はこの男女差が大きく縮小する動きになりました。特に第1回で顕著で、常に10点以上の差があったのが4点にまで縮小していました。

出願者・受験者・合格者の数と実質倍率についても、各回ごと男女別に見てみます。まずは第1回から。

第1回は、2020年以降だと男女の倍率は逆相関のグラフに見えます。男子は偏差値が上昇しながらも倍率は下がってきていましたが、2024年に跳ね上がりました。女子は近年4倍を超える倍率だったのが2024年はやや緩和しました。

もうひとつ注目したいのが合格者数で、男子は近年では最大数、女子は最小数となりました。合格最低点の差が縮まった中でのこの数なので、単純に男子受験者のレベルがアップしたというのがここから見えることかと思います。

第2回については、女子はやや減少傾向なのに対し、男子は受験者数が増加し実質倍率も上昇しています。2023・2024年と合格者数が絞られているのが特徴的で、これは人気上昇で合格者の歩留まり(入学者割合)が高まっている結果なのかなと考えることができそうです。

第3回は定員も少なく、日程も2月5日ということで受験生の動向によりブレる回となるのであまり参考にはできないと思いますが、一応挙げておきます。

以上見てきたように、女子はそもそも合格最低点も高く倍率も高いというのが渋渋の入試です。女子の方が合格ハードルが高くなっていることを理不尽に感じるとは思いますが、別に男子を優遇したいとかいう意思の表れではもちろんなく(たぶん)、「合格者の男女比率」でもなく、「入学者の男女比率」を考慮した結果だと私は思います。その辺りを見るため、年度ごとの男女別合格者数と入学者数(中1生の人数)を以下の表にまとめました。

水色とピンク色の部分を見てもらうと、男女それぞれ全入試回合計の合格者数と入学者数がわかります。これを見ると、合格者数は男子の方が1.5倍くらい多く、入学者数は逆に女子の方が多くなっているのがわかります。これはどういうことか。それは、女子は合格したときに渋渋を選ぶ人が多い(つまり第一志望が多い)が、男子はそうではない(ない人が多い)ということでしょう。

男女それぞれ一番右の列に、合格者数に対する入学者数の割合を歩留まりとして表示していますが、女子は合格者の半数以上が入学していそうなのに対し、男子は3分の1程度に留まっています。入学者の男女比を合わせようとすると男子の合格者を増やす必要があり、それがここまで見てきた入試結果の差につながっていると考えられます。

おそらく完全に入試条件を合わせると女子の方がだいぶ多くなってしまい、それがさらに男子を敬遠させ、というループになることを懸念してのことかなと邪推しています(本当のところはわかりません)。まあいずれにしても、入学する男女の人数をできるだけ合わせたい、その結果として男子の合格最低点が低めになっているというところでしょう。

ちなみに2023年・2024年と男子の歩留まりが上がっていて、これは第1回合格者の手続きの動きが良かったために合格者数を絞ったのかなとか、第1回と第2回と連続受験した人が多かったのかなとか色々考えられます。第1回入試の合格発表が第2回の試験後だったりして日程が入り組んでいて、男女の動きなども絡んできて複雑ですが、どういう決定をしているのかはちょっと興味があります。

まあそれはともかくとして、とりあえず女子に人気が高いが故に、女子には合格のハードルも高い、という点はまず特徴としておさえておければと思います。ただ男子も難易度は上昇していてその差は縮まってきているというのも直近の傾向として言えるでしょう。

合格最低点による分析

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