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塾テキストの違いで考える中学受験

先日、日能研に通わせている知り合いにテキストを見せてもらいました。これで4大塾すべてのテキストを見たかたちになり、これまで集めてきた情報と合わせ、何となく塾の違いや全体の流れが見えたような気がするので、塾テキストから見た各塾の特徴などを書いておきます。まあ共感されなければ、いち親父の戯言として聞き流していただければと思います。

理想を追うサピックス

授業で扱うテキスト(デイリーサポート)と演習用テキスト(デイリーサピックス)が基本の学習教材で、どちらも授業のときに単元ごとのテキストが配られます。算数のデイリーサポートは授業で扱った問題と同じ問題が裏に印刷されていて、それを自宅で復習して思い出し、さらに演習用テキストで関連問題を解いて定着させるという流れになるので、記憶の定着という意味で非常に考えられた設計になっていると思います。この流れに乗ることができれば、(自走もでき)最高のパフォーマンスを発揮できるテキストだと思います。

ただこの"流れに乗ること"自体が難しくなっているのが今のサピックスでもあるでしょう。テキストは授業前に予習できないので(させないのがポリシー)、授業で内容を理解してくることが必須なわけですが、内容が高度で大量になってしまった現在の受験ではここのハードルが非常に高くなっています。結果、自宅で復習というより改めて学習しなおすための家庭サポートが必要だったり、逆に算数特化の塾などで事前に学習しておくなど、流れに乗るための対策が必須になっているというのが実態のようです。

自走を目指す日能研

授業用テキスト(本科教室)と自宅での復習用テキスト(栄冠への道)に分かれています。非常に分厚い本で、これを塾に持っていくだけでも体力強化になりそうです。内容はどちらも子供に語りかけるような書き口で説明が手厚い印象です。自宅での復習用に、授業でやった内容を思い出すためのガイドがあったり、子供が自走できるための配慮を随所に感じます。

テキストが白黒ということで確かに子供が取っ付きづらい感はあるかもしれませんが、サピックスもメインどころは白黒だし、別にこれが不利だとは個人的には思いません。演習用教材が不足しているとの評判も耳にしますが、算数は別の演習用教材もあるので、それを合わせれば特に他塾に比較して少ないとも思いません。ということで、カリキュラムが他塾より遅い点を除けばテキストの優劣は特に感じません。

じゃあ日能研が難関校実績を落としてきた要因は何だろうということですが、これは結局、サピックスの台頭により世の中が変わってしまったため、という点に尽きるかなと思います。おそらく塾カリキュラムだけで子供が自走して難関校に合格できるという世界は、2010年代半ばまでに終了したのではと思います。そこまでは塾と子供任せで十分戦えたんでしょうが、現在の難易度だと、親や外部のサポートによって多少無理をさせないと届かない世界に入ってしまっているということだと思います。

サピックスを追う四谷大塚

2024年入試組に合わせて四谷大塚の予習シリーズがリニューアルされ、さらに前倒しカリキュラムになったというのは有名な話です。内容を見ると、もはや5年生からのスタートでは消化しきれない内容なので、4年生からのスタートは必須になったと言えるでしょう。

授業+演習用テキストの予習シリーズ、演習用テキスト(演習問題集)というのが基本的な構成で、1週間1単元の内容を学習し、週末に週テストを受けるというのが基本的な流れです(早稲アカは2週間に1回のテスト)。

定番と言われる予習シリーズですが、逆に言えば尖った特徴はないということでもあるかと思います。フルカラーで自学できるとも言えますが、内容は重いので子供が一人でマスターできるほど甘くもないと思います。サピックスとの比較でひとつ言えることは、季節講習に単元学習がある・なしの差があるおかげで、予習シリーズの方が1週間に盛り込まれる学習量が多くハードだという点ですかね。

ちなみに名前の通り予習型と言われることもある予習シリーズですが、どこを予習すべきかというガイドもなく、1週間の内容が盛りだくさんで復習すべき箇所も多い現状では、予習の流れを組むのはほぼ不可能ではと思います。(ので、予習型とか復習型とかいう議論がそもそも無意味だと思っています)

さらにサピックスを追う早稲アカ

早稲アカは予習シリーズがメイン教材ですが、プラスで早稲アカ独自の教材(上位校への算数、マスターテキスト、錬成問題集など)があります。

予習シリーズ単体でも1週間で消化しきれないほどの内容が詰め込まれているわけですが、さらにテキストが上乗せされているのが早稲アカです。具体的な使い方まで細かく知っているわけではないので何とも言えませんが、適切に問題と分量を制御してあげないと逆に消化不良を心配したくなる感じがあります。

自走か上位かの二元論

塾を中心にして子供が自ら学んでいくというのが理想的な中学受験スタイルだとすると、それで難関校に届く時代は10年前くらいに終わったのではと感じます。それは日能研からサピックスへと覇権が移り、サピックスの裾野が広がっていく中で強化されていったように見えます。

この動きは予習シリーズ改訂でさらに強まりそうで、現代の中学受験で難関校を目指していこうと思った場合、受験勉強が始まってからの伴走、もしくはカリキュラムの始まる小4前にある程度のゲタを履かせておくこと、これらは参戦する上で必須なものであると思って始めた方がいい気がしています。と考えたときに、中学受験はコスパが悪いという意見が出てくるのは、ある意味で当然のことかと思います。(現代の高校受験はまた違った意味で大変だし闇も深い気はしますが)

どこの塾がいいとか、どの学校を狙うならどの塾とかいう塾選びは多くの人の関心事だとは思いますが、全体の動きからすれば誤差に収まる程度の小さな違いでしかないと思います。それよりも、自走できることに主眼を置くのか、大人のサポートありきで上位を目指すのかというところに目を向けた方がいいんじゃないかなと思います。これが両立しづらくなってしまった現在、おそらくですが、前者は日能研に多く、後者はサピックスに多い、というのが今のポジショニングなんだと思います。(内容のレベル違いというよりどっちを指向する人が多いかという違い)

これらは結局、何のために中学受験するのか、というところに行きつきます。学力の底上げなのか、勉強の仕方なのか、勉強に向き合う姿勢なのか、もしくは特定の中学へ入学するという結果なのか、答えはそれぞれだと思いますが、意識しておくべきところじゃないですかね。

個人的には親サポートの醍醐味を知ってしまったので、ガッツリ伴走するところに今は中学受験の価値を置いています。ただ親が関わると言っても、親が子供の手を引っ張って引き上げるとか、ましてや叱ったり支配下に置くなどというのではなく、子供の特性を見て試行錯誤しながら、親自身が関わり方を学んでいくという姿勢が最も大事だろうなと思っています。子供だけでなく自分自身も成長させるツールとして受験を置いてみると、一歩引いて俯瞰して子供に関われる気がします。
(ちなみに数少ないサンプルからの超個人的な印象ですが、日能研で子供なりの勉強をしている子だと勉強に前向きな子が多い気がしていて、人生という長い目で見たときに、無理させて難関校に押し込むのと果たしてどっちがいいんだろうなと考えることはありますね)

あとは、とりあえずやってみて、合わないと思えば路線変更するという軽さも必要な気がします(塾コストが高いのは気になるので、お金をかけすぎないことも大事かも)。またその変更先も、別に高校受験とか大学受験とかに捉われる時代でもないと思うので、色んな可能性を試して広げてあげる、という思考で子供と向き合うのがいいんじゃないかなと思いますね(自戒を込めて)。

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