【大学附属】早稲田大学の附属校を徹底調査
早稲田大学の附属校・系列校を深掘りします。早稲田は附属校と系列校が多数あり、入試形態や推薦枠も複雑なので、その辺りも含めて解き明かしていきたいと思います。
私立大学は系列化・附属校化の動きが活発で、総合型選抜への動きとの相乗効果で一般入試が徐々に狭き門になってきているという話があるので、上位私立校を見ていくことでその現状も見てみたいと思います。
学校案内的な内容にも多少触れますが、それよりも敢えて入学定員や進学先といった数字を追いかけていくことにフォーカスします。これによって、早稲田大学への入学ルートの全体像の把握や、現実的に小学校・中学・高校・大学受験のどの段階を目指すかといった戦術面を考える材料にもなればと思います。
親世代よりも受験事情は複雑になってきているので、大学受験までの受験全体の大きな流れを見るのにも活用していただければと思います。
大学定員と内部進学の全体像
大学入学定員の全体像
まずは早稲田大学の入学定員についてざっとまとめます。
定員ベースの入学割合は、外部入試が82%・内部進学が18%となります。慶應に比べると、系列校の数が多い割には外部入試の割合が若干高めです。従来型の学力試験である一般選抜は56%と、半分強まで縮小しています。グラフにするとこんな感じです。
以前、早稲田大学が指定校を含めた推薦比率を6割に増やすというニュースが出て話題になりました。ただ出処と思われるYahooニュースの記事は削除されていて、元情報も見つからないので、このニュースの信憑性は疑わしいと個人的には思います。とはいえ毎年のように入試変更は行われていて、基本的には従来型の一般選抜は減る方向性にあるというのはその通りかと思います。
学部ごとの差はそこまで大きくなさそうですが、一般選抜が極端に少ない政治経済学部(39%)・国際教養学部(29%)といった辺りが目立ちます。早稲田の看板学部と言われる政治経済学部で内部進学が最も多い(34%)というのはおさえておきたいところかもしれません。
看板学部や人気学部で内部進学が多いというのが、慶應とも共通した特徴のように見えます。(一般選抜の人数が少ないために難易度が高く見える、という逆の見方もできるのかもしれませんが)
文系・理系で分けるとこんな感じです。
文系・理系でそれほど目立った違いはないかなというのが印象で、どちらも一般選抜は5割強といったところです。
内部進学ルートの全体像
早稲田大学の系列校は以下の通りです。
早稲田大学 高等学院・高等学院中学部(早大学院)
早稲田大学 本庄高等学院(早稲田本庄)
早稲田実業学校 高等部・中等部・初等部(早実)
早稲田中学校・高等学校
早稲田佐賀中学校・早稲田佐賀高等学校
早稲田大阪高等学校(旧・早稲田摂陵高等学校)
早稲田渋谷シンガポール校(高校課程)
このうち、早稲田大学と名前のつく2校が直系の附属校(学校法人が早稲田大学)、それ以外は系属校ということになっています。
早稲田の場合、中学・高校と同系列の学校に進学するのが基本で、慶應のように進学先が入り組んでいないので、ある意味わかりやすいと思います。図にするとこんな感じでしょう。
首都圏の4校(図の左4校)に絞り、入試の特徴を挙げると以下の感じです。
小学校受験は早実のみ
男子は中学受験で3校、高校受験でも3校の入試がある
女子は中学受験で早実1校のみ、高校受験は2校
進学校ながら半分の推薦枠がある特殊な早稲田中も含めて考えると、男子の場合は、男子校2校の存在によって、中学入試でも高校入試でも同じくらいの大きな人数枠があります。共学校でも男子の方が人数枠が多かったりします。一方で女子の場合は、中学受験では早実のみ(定員40名)、高校受験でも早実(定員30名+推薦)と早稲田本庄(定員100名+帰国生)くらいしか選択肢がないので、どこを取ってもかなり狭き門に感じます。
早慶ともに女子に門戸が狭いのは、現代社会では問題じゃないかと個人的に思いますが、それについては別の機会に考えたいと思います。
各系列校からの進学先割合
細かなデータはそれぞれの学校ごとに見ていくとして、まずどの学部への進学が多いのかを割合で見ておきたいと思います。
まず明確な違いがあるのが政治経済学部への進学数で、大学直系の早大学院・本庄のみ20%を超えています。法学部も同様の傾向です。そこ以外は目立った違いはないかなというのが印象ですね。
人数の多い首都圏4校についてグラフで見てみます。
学院2校はほとんど同じようなグラフです。それと比較すると、早実は政治経済が少ない分だけ商学部・社会科学部が大きめ、早稲田高校は全ての学部に満遍なくといったイメージです。早実の理工系学部比率が少ないのは共学だからでしょうかね。
ちなみにこれは人気動向ではなく、各校の推薦枠がこうなっていると考えられます(公開されている早稲田高校の定員枠はほぼこの通りなので)。成績が良ければ基本的にどこでも選べると思いますが、入学時の学校選びでも意識しておきたい点ではないかと思います。
ではここから、具体的に各学校を深掘りして見ていきます。ただし早稲田渋谷シンガポール校は、日本から一般的に受験する位置付けの学校ではないと思うので、ここでは割愛します。
早稲田大学 高等学院・高等学院中学部
学校法人早稲田大学が設置する直系の付属校です。大学予科としてスタートしたあと、戦後の学制改革で高校となり、2010年には中学部が開設されました。最寄りは西武新宿線の上石神井駅ということでやや都心から離れていますが、敷地は広く、雰囲気のある欅並木が門から校舎まで続き自然を感じることのできる環境にあります。
校風・教育の特徴など
制服や校則はほとんどなく自由で、ほぼ全員が早稲田大学へ進学できる。やりたいことに打ち込むことのできる反面、自ら学ぶ姿勢も必要。欠席日数や成績により留年もある。
学部進学を見据えた高校2年次からのゆるやかな文理コース制と高校3年次での大学準備講座・自由選択科目、また第二外国語の必修、卒業論文など、大学受験にとらわれない教育が行われている
高大一貫教育の推進:学部進学説明会、モデル講義、大学教員による授業、大学正規授業の履修(先取り単位認定もあり)など、大学との連携を進めている
入学試験
【高等学院(高校)】
一般入試:筆記試験(英語・国語・数学・小論文)[2月11日]+出願書類(調査書等)自己推薦入試:出願書類(調査書・出願者調書等)+面接[1月22日]
【高等学院中学部(中学)】
一般入試:筆記試験(国語・算数・社会・理科)・面接(グループ面接)[2月1日]
高校入試は自己推薦と一般入試があり定員もそれなりに多いので、チャンスが多いという意味ではいいですね。ただ、どちらも調査書が合否判定に使われるようなので、内申点が取れるというのは必須のようです。
学費
進学先
他の系列校よりも人気学部の進学枠が多く、希望の学科への進学はしやすいようです。政治経済学部への進学数は他の系列校よりかなり多いです。
再掲となりますが、2024年の進学先グラフは次の通りです。
早稲田大学 本庄高等学院
早大学院と同じく学校法人早稲田大学が設置する直系の付属校で、1982年に早稲田大学(前身の東京専門学校)創立100年を記念して開校しました。男子校として設立されましたが、2007年に共学化しています。埼玉県本庄市の丘陵地の広大な敷地にキャンパスが作られていて、都心からもだいぶ離れて立地していますが、上越新幹線の本庄早稲田駅という学校のためのような名前の駅が作られているので、(寮もありますが)都内から通うことも可能でしょう。
校風・教育の特徴など
制服や校則はほとんどなく自由で、ほぼ全員が早稲田大学へ進学できる。やりたいことができる反面、自ら学ぶ姿勢が必要。欠席日数や成績により留年もある。
2年次までに一部を除く必修科目を全て履修し、3年次は大学0年生として文理それぞれ選択科目を指定して、大学での専門へ接続するカリキュラムを組んでいる。2年次には教科の垣根を超えた独自の教科横断型学習プログラム「大久保山学」を履修する。
卒業論文:3年間の学習の集大成として、担当教員の指導を受けながら調査・文献収集をし、自分の定めた1つのテーマについて1400字×15枚以上の論文にまとめる。
入学試験(高校のみ)
【国内生】
一般入試:筆記試験(国語・数学・英語)[2月9日]+調査書
α選抜(自己推薦):書類選考[1月5日必着]→面接[1月23日]
【帰国生】
帰国生入試:筆記試験(国語・数学・英語)[2月9日]+調査書
I選抜(帰国生自己推薦):書類選考[1月5日必着]→基礎学力試験(数学・国語)+面接[1月23日]
一般入試は日程的に都内の学校と併願できるため、偏差値は高めですが受験者数も合格者数も多めです。
学費
進学先
ほぼ早稲田大学へ進学していますが、医学部志望の人へは日本医科大学への推薦枠(2名)があるようです。
早稲田実業学校 初等部・中等部・高等部
早稲田大学直系の2校とは学校法人が異なり、こちらは系属校という位置付けです。実業学校の名の通りかつては商業科がありましたが、2002年に普通科のみとなり、同時に男女共学化と初等部の開設が行われ、国分寺への移転も行われました。ちなみに早稲田系列の学校で小学校があるのはこの早稲田実業のみです。ほとんどが早稲田大学へ推薦で進学できますが、直系2校とは学部枠に違いがあります(政治経済などは少ない)。
校風・教育の特徴など
去華就実(華やかなものを去り、実に就く)の校是のもと「実業」の精神を育てるという教育方針があり、自由な直系2校よりもやや堅い校風の模様。
同じ敷地内に小中高があり、子ども同士の交流や教員の連携、初等部からの国際教育など、小中高の繋がりを意識した教育が行われている。
スポーツ推薦もありクラブ活動が非常に盛んなことで有名、特に硬式野球部は甲子園の常連校で有名選手を多数輩出している。
入学試験
【高等部】
一般入試:筆記試験(英語・国語・数学)[2月10日]
推薦入試:課題作文・面接(本人のみ)[1月22日]+大会等の実績・推薦書・調査書
【中等部】
一般入試:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月1日]
【初等部】
1次試験(考査)[11月1日〜5日のうち1日]
→2次試験(面接・本人+保護者)[11月8日〜10日のうち1日]
どの段階から入るにしても定員が少なく、ハードルは高い印象を受けます。
学費
進学先
内部推薦進学以外、他大学の合格実績は次の通りです。
早稲田中学校・高等学校
学校名に「早稲田」を冠したのは早稲田大より早く(当時の早稲田大は東京専門学校だった)、大学と同じくらいの歴史ある男子校です。早稲田大のすぐ近くに立地しているのもあり、普通なら直系の附属校となりそうなものですが、独自路線を歩んだ歴史もあって系属校となっています。高校からの入学はなく、6年間の中高一貫教育を行っています。
校風・教育の特徴など
早稲田大への推薦枠が半分程度で、全員が東大など大学受験に向けて勉強する超進学校。推薦が決まるのが高3の12月で、最終的に内部推薦になるとしても、そこまでは基本的に大学受験を前提に勉強をすることになる。
都心にあることもあって敷地が狭いという難点があったが、2023年に新校舎建て替えにより校庭の拡大や多目的ホール・屋上利用など、運動スペースの充実が図られた。
入学試験(中学のみ)
第1回入試:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月1日]
第2回入試:筆記試験(国語・算数・社会・理科)[2月3日]
2回受験のチャンスがありそれなりの合格者数は出してくれます。第1回の定員が多く、ここ2年では第1回の合格者の方が多くなっています。
学費
進学先
外部受験による他大学への進学状況は以下の通りです(合格者数ではなく進学者数)。
進学校として見た場合、かなり現役進学率が高い方だと感じます。ただ逆に附属校として見た場合は、その他(=浪人)もそこそこの人数は発生している点を覚悟しておく必要があります。
早稲田大阪高等学校(旧・早稲田摂陵)
2009年に早稲田の系属校になった、大阪府茨木市にある学校です。元々中学校が併設されていましたが、2023年に閉校し高校のみとなりました。
2025年4月1日に早稲田大阪高等学校へと名称変更し、また2025年度入学生より早稲田大学への推薦枠が40→74名へ増加することが発表されました。新たに3コースを設置し、早稲田大への進学を目標とする早稲田コース(定員74名)、難関国公立・私立大学への進学を目標とする文理コース(70名)、私立大学への進学を目標とする総合コース(105名)となるとのことです。
入学試験(高校のみ)
本校会場入試:一般入試(5教科)/資格点数化(5教科)/帰国生(3教科+面接)/吹奏楽(3教科+実技+面接)[2月10日]
所沢会場入試:一般5科/一般3科/帰国生[1月22日]
大宮会場入試:一般3科[1月24日]
学費
進学先
他大学への合格実績は次の通りです。
早稲田佐賀中学校・早稲田佐賀高等学校
2010年、早稲田大学創立125周年記念事業として、創設者の大隈重信の出身地である佐賀県に系属校として開校しました。中学・高校とも首都圏入試があるので、首都圏からも受験し進学する人が一定数います。
校風・教育の特徴など
半数の推薦枠があるが「難関国公立大学や医学部などに合格できる学力、実力で早稲田大学に合格できる学力」を身につけることが教育目標とされている
校則や寮の規則は厳しめという口コミが多い
全寮制ではなく福岡などから通学することも可、在校生の出身エリア割合は次の通り
入学試験
【高校】
推薦入試(専願):筆記試験(本校:3教科)+面接(個人)+調査書等+実技(体育系)[12月11日]
帰国生入試(専願/併願):筆記試験(本校/首都圏:3教科)+面接(個人)[1月8日]
一般入試(1月・専願/併願):筆記試験(九州:5教科/首都圏:3教科)[1月8日]
一般入試(2月・併願):筆記試験(本校/首都圏:3教科)+面接(集団)[2月18日]
【中学校】
新思考入試(専願/併願):筆記試験(本校/首都圏:総合I・Ⅱ/総合I・英語)+面接(専願のみ)+調査書等[12月4日]
帰国生入試(専願/併願):筆記試験(本校/首都圏:総合I・Ⅱ/総合I・英語)+面接+提出書類[12月4日]
一般入試(1月・専願/併願):筆記試験(九州/首都圏:4教科)[1月9日]
一般入試(2月・併願):筆記試験(本校/首都圏:2教科)+面接[2月5日]
学費
進学先
他大学への合格実績は次の通りです。
まとめ
以上、早稲田大学の入試と、附属校・系属校を見てきました。
親世代の意識とのギャップ
もう一度、早稲田大学の入試で見たポイントを挙げてみます。
全定員に対する一般入試の割合は50%程度(共通テスト利用を含む)
入学者に占める内部進学者の割合は20%前後
人気学部ほど一般入試枠は少ない(政治経済など)
附属校・系属校は増えていて、さらに総合型選抜の拡大、私大定員の厳格化などが重なっているので、少なくとも親世代の受験とは様相が変わっているというのはおさえておくべき視点でしょう。
だから附属校が得だとかいう単純な話ではなく、やりたいこと・行きたい学部なども踏まえどういう進路を取ると良いのか、それぞれの実情に合わせて考えていけると良いのではないでしょうか。また、受験全体を俯瞰して見たときに早慶の影響は大きいので、そういう視点でも見ていきたいです。
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