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紫乃と美甘の読書会 第1回「自己紹介代わりの本」

13年来の唯一無二の友人である紫乃と、Twitterのスペースを使って読書会を始めることにした。タイトルはずばり、「紫乃と美甘の読書会」である。
初回は、「自己紹介代わりの本」をテーマに5冊ずつ本を紹介した。そこでこのnoteでは、わたしが紹介した5冊についての記録を残す。
アーカイブは最後にリンクを貼っておくので、興味のある方はぜひ。

「王女グリンダ」茅田砂胡(2007)

この本と出会ったのは、小学校5年生の時だった。そしてそれ以来ずっとわたしのなかで不動の好きな本第1位となっている。何がそんなに惹きつけられたのかと、説明することは難しい。ただ1頁目の1行目を読んだ瞬間、そこに描かれていた登場人物に一目惚れをしてしまったのだ。小説でもひとは一目惚れをするのだということを、わたしはこの作品で初めて知った。
この作品と出会ってからというもの、わたしは茅田砂胡先生の世界にどっぷりと浸かって中高時代を過ごした。これほど影響を受けた作家は他にいないと思う。間違いなく「王女グリンダ」はわたしの原点だ。

「フェンネル大陸シリーズ」高里椎奈(2004-2010)

この作品と出会ったのは、たしか高校生のときだったと思う。ノベルス版の表紙イラストを担当していたのが、かねてからファンだったミギーさんというイラストレーターだったのが、図書館でこの本を手に取ったきっかけだった。
この作品が好きな理由は、もちろんわたしの大好きな異世界ファンタジーものだったからというのが大きい。けれどもそれだけでなく、緻密に構成された物語が、最後まで読むことによって一気に全貌が明らかになる爽快感にも虜になった。読み返すたびに新たな発見があるのだ。それから一番大切なことは、この作品の根底にあるのが性善説だということだ。「フェンネル大陸シリーズ」には、根っからの悪人は登場しない。悪いことをしているように見えるひとにも、何かしらの理由がある。もちろん、現実世界はそうでないこともあるだろう。けれど物語の中では、わたしは性善説を信じていたい。

「62のソネット+36」谷川俊太郎(2009)

こちらは大学生になってから出会った。友人から「二十億光年の孤独」を勧められて、谷川俊太郎への興味が湧き、書店で探したときにたまたま出会った。子どもの頃から谷川俊太郎の詩は好きだったが、あくまで教科書に載っていたり、合唱曲の歌詞になっていたりするもので、自ら選んで詩集を手に取ったことはなかった。しかし高校生の時に学校の図書館でシェイクスピアのソネット集を読んで以来、ソネットという形式には興味があった。そこで書店でこのソネット集を見つけた時に、「日本語のソネット」ってどういうのだろう? と興味が湧いたのだ。
わたしは高校3年生ごろから、本格的に詩作に取り組み始めた。しかしあまりにも集中的に書いていたので、大学生になる頃には自由形式で書く口語詩に、なんとなく行き詰まりを感じていた。そういう時期に出会った谷川俊太郎のソネットは、まるで天啓のようだった。14行という限られた形式に則って書くことで、かえって表現の幅が広がったように感じた。そしてもっとたくさんのひとに自分の作品を読んでもらいたいという欲が生まれた。詩作が、自分を救うためだけのものではなく、誰かの救いになればと思うようになったのだ。

「A子さんの恋人」近藤聡乃(2015-2020)

こちらも出会ったのは大学生。紫乃と一緒にたまたま立ち寄った書店で気になり、その後紫乃が購入したものを貸してもらって読み、あまりの衝撃に即座に自分でも手元にそろえた。だから今回、絶対に紫乃も選ぶだろうなと思ったら、案の定その通りだった。それくらい、わたしたちの心の深いところに刺さる作品だったのだ。しかしこの作品については語りだしたら止まらないので、また機会を設けて語ることとする。

「火の鳥」手塚治虫

こちらは小学3年生のときに、父親の本棚から借りて読んだ。つまり今回挙げた中では一番付き合いの古い作品だ。だからというわけではないが、わたしの人生観「諸行無常」は、この作品によって作られたのだと思う。
もともと読んだのがどの版だったか忘れてしまったが、わたしは大学生になってバイトをするようになってから、バイト代で毎月一冊、講談社の手塚治虫文庫全集を購入するという目標を立てていた(結局あまり実行には移されたなかったが)ので、「火の鳥」も文庫全集で集めていた。しかし諸事情で今年の夏に全巻揃えようとしたところ、なんとどの書店に行っても在庫のない巻があったのだ!それどころか出版社にも問屋にも在庫がないなんて……。講談社の方、もしこのnoteを見ていたら、どうか手塚治虫文庫全集の欠巻を再版してください……。


こうやって振り返ってみると、わたしの「自己紹介代わりの本」は、偶然の出会いによって知った本ばかりである。面白い。
今回語り切れなかった本もたくさんあるので、折を見てまたnoteでも紹介していきたい。
なお、紫乃と美甘の読書会はだいたい隔週での開催を予定している。次回は2022/09/17(土)20:00~21:00(JST)の予定。テーマは「違国日記」ということで、乞うご期待!

紫乃 Twitter: @s0h0i0 (https://twitter.com/s0h0i0)
紫乃と美甘の読書会 第一回「自己紹介代わりの本」(2022/09/03) アーカイブ: https://twitter.com/i/spaces/1jMKgLgNLWqGL

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