ロケット
僕がリビングで宿題をやっていると、突然ものすごい音がして、ソファでスマホを見ていた姉ちゃんの頭が吹き飛んだ。びっくりして戸口の方を見ると、ショットガンを構えたばあちゃんが入ってきたところだった。
「ば、ばあちゃん」
ばあちゃんは汚いものでも見るような目で僕を一瞥すると、ショットガンを構え直した。あれはばあちゃんの嫁入り道具で、装填数は確か2発だ。僕は慌てて椅子からダイニングテーブルの上にのぼると、カウンターキッチンの向こうにジャンプした。間一髪、銃声が轟いた。
新しい弾を装填する音がする。その隙に僕は、キッチンのドアから廊下に逃げ出した。急がなければ。
僕は階段下の収納に飛び込んだ。確かここに、一昨年の誕生日にもらったハンティングナイフがあるはずだ。銃を持ったばあちゃんに勝てるかどうかはともかく、丸腰では何にもならない。ナイフを手に入れると、僕は床を探った。思った通り、床下へ抜ける点検口があった。
「智彦、どこだい?」
ばあちゃんの声がした。「芋けんぴ食べるかい」という時と同じ声色で、僕はぞっとした。もちろん答えない。
僕は点検口のフタを開け、するりと床下に潜った。どうにか下からフタを閉めた直後、階段下収納のドアが開く音がした。
僕は床下を這って、じいちゃんとばあちゃんの和室を目指した。この事態を収拾させられるのは、ばあちゃんと長年連れ添ったじいちゃん以外にない。やがて、別の点検口のフタを見つけて押し上げると、そこは和室の押入れの中だった。フタに乗っている座布団を押しのけ、どうにかよじのぼった。
そっと押入れの襖を開けると、座敷の真ん中にじいちゃんが倒れているのが見えた。
近寄ってみるとすでに息がない。どうやら銃ではなく、首を絞められたらしい。僕は絶望感に襲われ、思わずそこにしゃがみこんだ。その時である。
「智ちゃん!」
僕を呼びながら、柴犬のメリーが走ってきた。
【続く】
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