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頭上で回るは観覧車

【カクヨムの『同題異話』という自主企画のために、指定されたタイトルに沿って書かれた作品です】

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 しばらく前から、変な夢を見るようになった。死体になった僕が埋められている夢だ。
 仰向けに埋められて身動きのできない僕には、なぜか地面の上の様子がよく見える。視線の先には、なにかとても入り組んだ骨組みの、金属でできた大きなものが建っている。
 同じ夢を見るたびに視界は鮮明に、しかも遠くまで見通すことができるようになっていく。そしてある日、僕はふと、上に見えるのは観覧車なのだということに気づく。錆びたゴンドラに描かれたウサギやクマの絵には見覚えがある。その観覧車はどうやら、僕の地元にあった古い、今はもう廃墟になった遊園地のものらしい。
 つまり僕は遊園地の跡地、まだ取り壊されずに残っている観覧車の下に埋められているのだ。そう気づいた途端、喉に巻き付いた紐の感触や、失禁したせいで冷たい股間のことなんかも思い出して、僕はわりと厭な気分になる。

 その観覧車はたまに、ギリギリと耳障りな音をたてて回り始める。埋められている僕は、ああ誰かお客さんが来たのだな、と思う。
 相変わらず身動きはできないが、代わりに視力はどんどん鋭くなり、最近ではゴンドラの中身すら見通せるようになってきた。だからそのお客さんというのが君と、誰か僕の知らない男だということがわかる。
 君と見知らぬ男は、腕を組んで楽しそうにゴンドラに乗り込む。耳障りな音をたてて観覧車が回り始める。
 ゴンドラの中でふたりは楽しそうに話し、笑い、ふと見つめ合ったり、隣に座ってもたれ合ったり、指を絡ませたり、キスをしたり、もっと際どいことまでやっている。しかしゴンドラが下に着くと、君たちは何もなかったように身繕いをし、涼しい顔をして出てくる。
 僕はそれを見ているだけだ。視界から消えていく君たちの、仲睦まじい足取りを見送ると、することがなくなってとても寂しい気持ちになる。

 そんな夢を見て目を覚ますと、どんな夜中でも必ず君が隣にいて、目をぱっちりと見開き、僕をじっと眺めている。
 君の目は常夜灯の下で爛々と輝いて見える。まるで獲物を狙う猫のようだ。
 君がそんな目で見るから僕が観覧車の夢を見るのか、それとも僕が観覧車の夢を見るから君がそんな目で見るのか……正直そんなことはどうでもいい。だって夢の中の君はとても楽しそうだし、ぎらついた瞳で見つめられると、僕はなぜかとても嬉しくなるから。

 何でまた君はそんな顔をするんだろう?

 僕が気にしているのは、今夜も夢を見るかどうかってことだけだ。錆びついた観覧車が頭上で回る、君が出てくる夢を。

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