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オリヴィア・ロドリゴ来日公演レポ | GUTS WORLD TOUR [2024/09/28]

オリヴィア、めちゃくちゃよかった。。。。という話をします

YouTubeに動画アップしたのでそっちみてね

2021年発売のデビューアルバム「SOUR」を引っさげたツアー「SOUR TOUR」は2022年4月から開催された。この時点で巨大な会場を埋められる人気を獲得していたにもかかわらず、オリヴィア本人の意向で小規模な会場から始まった。これは、オリヴィアがステージングやファンとの親密さをいかに大切にしているかを示す印象的なエピソードだ。

そんな「SOUR TOUR」を経て開催が発表されたツアーこそが今回の「GUTS WORLD TOUR」。2024年9月28日、有明アリーナで開催された日本公演に行ってきた。

実は、オリヴィアが来日したのは今回が初めてではない。2023年9月に、アルバム『GUTS』の日本盤に封入されていた応募券から申し込むミートイベントがあった(私も購入して応募した)。去年、日本でオリヴィアを観ることが出来たのは幸運な、ごく一部の人だったわけだが、イベントであっても、彼女が日本に来てくれたという事実は、来るワールドツアーに日本が含まれる期待を膨らませた。

今年発表された日本公演はすぐに完売し、追加公演も発表されたが、私はチケットを確保できなかった。オリヴィアの世代や背景から、「drivers license」を聴いて勝手に親近感を抱いていた私にとって、彼女は是が非でも観たいアーティストだった。というより、ライブで見る想像を膨らませていた数少ないアーティストの一人だった。

ニヤリとしてしまうほどの皮肉や、思わず目を背けたくなるほどの生々しい感情をさらけ出すオリヴィア・ロドリゴの楽曲。「vampire」後半のパートが生み出すダイナミズム、「drivers license」の美しく映画的なシンガロング。特に「ゲット・ヒム・バック!」はボーカルの重なりが特徴的で、シンガロングを誘う曲だ。聴いているだけで自分も楽曲の一部になったような感覚さえ覚える。内なるエネルギーを解放するには十分すぎる。

結局、公演数日前のチケットの追加販売でようやく手にすることができたが、そんなオリヴィアの楽曲に共鳴した者同士が日本に集まることが夢のようだった。普段の生活ではなかなか感じられない、見知らぬ人々と一つになれる感覚。それはライブでしか得られない特別な経験だ。

コンサートは会場につくだけで心が踊る。普段の生活では出会わないような人々が、アーティストという共通点を持って集まる空間だ。会場には、オリヴィアと同世代の女性が多くを占めていたが、親子で来ている人もいた。英語が聞こえてきたかと思えば同じ声で日本語も聞こえてくるようなバイリンガルな空間が、自分にとっては非日常的で楽しかった。今年のテイラー・スウィフトの公演では、外国人が大きな蝶の飾りを身につけた日本人を見て「スレ〜〜イ」(slay: イケてる)と褒めているのを目撃した。

そう、ファンにとってコンサートはファッションを楽しむ場でもある。オリヴィアのアルバムにも取り入れられている薄紫色は、会場のいたるところで見られた。オリヴィアをイメージさせるスパンコールをあしらったミニスカートや、今回のツアーの象徴である星形のヘアピンなど、各々が思い思いに愛を表現する姿を見るのは楽しい。

開園15分前になるとロウソクがスクリーンに映し出された。「GUTS 」という文字を形をした、火の灯ったろうそくは、開演時間が近づくにつれてだんだんと溶け出す。7分前になるとろうそくの形は認識できないほどになってしまい、”そのとき”が近いことを示唆している。

全体が暗転して、重低音が鳴り響いたと思えば、足音が聞こえてきた。スクリーンに映し出されたのは光に向かって走り出すオリヴィアの姿。会場の高揚感は最高潮になり、ステージに現れるのを心待ちにする。

映像の中でノックするオリヴィアが映った。コンコンコン。ノックといえばあの曲だ。さらに煽るかのごとく、ギターとドラムが鳴り響いたのち、ついにあのイントロが姿を現した。セカンド・アルバムから、「bad idea right?」だ。音源よりも力強い歌声で、自信に満ち溢れたオリヴィアに早くも感動した。”Seeing Tonight? / It’s bad idea, right? ”で観客も歌い出す。その勢いのまま「ballad of a homeschooled girl」。ジャンプにスキップ、蹴ったりでオリヴィアが本当に楽しそうだった。

「Welcome to the Guts World Tour!」とオリヴィアが力強く叫び、開幕を宣言する。このセリフはテイラーを思い出した人も多いんじゃないか。続いて「今日は跳んで、叫んで、歌って欲しい」と観客に呼びかける。そして、集まったファンに感謝の言葉を伝えると、次の曲へと移っていった。

初っ端からロック曲が続いた後は、セカンドアルバムからの第1弾先行曲の「vampire」を披露。オリヴィアのソングライティングの進化と新たな物語の幕開けを告げた曲だ。こんな最初にやっちゃって良いの?と思ったが、そんな心配は杞憂だった。

8人のダンサーと共にパフォーマンスした「traitor」は、ギターが印象的なアウトロになった。もう、これで終わってもいいくらいの満足感があった。

一度暗転した後、ステージ中央に現れたのはピアノとオリヴィアだった。「drivers license」。この曲でオリヴィアのことを知った私は握っていた携帯電話をしまい、この曲を全身で浴びようと思った。初めて聴いた時期のあれこれを思い出しながら。ブリッジパートはもちろん歌った。夢が叶った。

teenage dreem」では幼少期のオリヴィアがバックのスクリーンに映る。バレエを取り組むオリヴィアの姿も入っていた。「brutal」のミュージックビデオにもバレエをするオリヴィアが登場していたが、幼ないころからやっていたものだとは知らなかった。ああ、開演前に見た女の子は、ちょっどスクリーンに映るオリヴィアと同じくらいの歳の子だったな。

pretty isn’t pretty

love is embarrassing

ダンサー、コーラス隊、そしてバンドメンバーを紹介。バンドメンバーが紹介されたときにちょろっとプレイしてくれるのはライブの定番だが、ベースの人が”Seven Nation Army”のリフやったときニヤけた。

「今日は特別な日なの。ドラムのヘイリー の誕生日なんだよ」とオリヴィア。「ハッピバースデートゥーユー」をみんなで歌ってヘイリーをお祝い。メンバーが誕生日であることに出くわすのはこれで何度目だろう。そのたびにライブの醍醐味だとも感じる。

せりあがった四角形のステージに寝そべりながら歌ったオリヴィア。終わった後に「なんで寝そべってたの?」という声が後ろから聞こえてきたが、これ「『making the bed』って曲だからだろうが!!」と言いたい気持ちを抑えた。

しばらくしてオリヴィアは会場後方に現れた。歓声を浴びながら向かったのは、三日月型のセット。オリヴィアが乗るとそれは光を発し、宙へ上っていった。披露したのは「logical」。三日月と、その周りを飾る星々、そして観客が持つ公式グッズのペンライトとが幻想的な空間を作っていた。月はゆっくりと回転し、さまざまな方向のファンが歌う彼女の姿を見ることができた。

三日月型のステージセットに乗ったまま次の曲を披露する前に、オリヴィアが「次の曲はSOURからで、私の個人的なお気に入り。」と一言。そして流れ始めたのはアコースティックギターの温かい音色。enough for youだ。これは私個人的にも特にお気に入りの楽曲で、好きなパートは「あなたに賢いって思われたくて自己啓発の本を読んだの(I read all of your self-help books / So you'd think that I was smart)」という歌詞。好きな人のため努力する彼女を表したこの歌詞がリアルで素敵な描写だ。ミュージックビデオになっていていないので、今回のツアーではスキップされるかもと思っていたが、私のお気に入りが彼女にとっても気に入ってる楽曲だと知り嬉しかった。

lacy

so american

歌うオリヴィアとギタリストが背中合わせになって始まった「jealousy, jealousy」はくらくらするほどセクシーだったし、アコースティックギターのギタリストとステージに座りながら披露した「happier」「favorite crime」は感動的でしんみりとした気分になって聴き惚れてしまった。

deja vu

the grudge

赤い衣装に身を包んだオリヴィア!「brutal」のおでましだ。紫がシグネチャーのオリヴィアだが、赤も似合う。ここからは情熱的な赤の時間の始まり。

至近距離で映ったり、ステージのガラス越しに下からのアングルで映ったり。感情の熱気はまだまだ上がる。ギターを手にしたオリヴィアはロックスターそのものだった。

さらに、セカンド・アルバムの一曲目として収録された曲「all-american bitch」が続く。曲の間で「イラついてることに全力で叫んで!!」とオリヴィア。耳がどうかなりそうなほど、各々が思い思いに叫んだ。思い起こした人や事は人それぞれだろうが、一体感が生まれた。私たちが求めていたものとは、こういうものではないかとさえ感じる瞬間でもあった。

開演前に流れていたWet Legというイギリスのインディーロックバンドの曲、“Ur Mom”を思いだした。この曲のブリッジパートではカウントダウンからリアンが11秒にわたってスクリームする。これはスクリームセラピー(絶叫療法)からインスピレーションを受けたとのことで。曲の中に皮肉や悪趣味が混じっているのはオリヴィアと共通するところある。つまるところ、あれは単なる盛り上げではない。叫ぶことは癒やすことで、ポジティブな行為なのだ。

アンコール一曲目は「good 4 u」を披露。「新しい彼女ができて良かったね!」と全力で皮肉るような曲がこんなにも愛され、楽しい気分で盛り上がれるなんて不思議だ。最後の最後でも衣装チェンジがあり、今のオリヴィアを最も表現しているようなタンクトップとスパンコール付きショートパンツ姿で登場。

ラストは「get him back!」。赤いメガホンも加わり、彼女の魅力が全開だった。なんて似合っているんだろう、なんてこんなにも観客を楽しませてくれるんだろう。大歓声の中、幕を閉じた。あっという間の時間だった。

オリヴィア・ロドリゴは同世代を代表するスターだ。親近感を抱かせる魅力もある。彼女が影響力を責任を持って活用する姿勢には深い敬意を感じる。そして、彼女の楽曲の持つパワーと卓越したステージパフォーマンスは圧巻だ。このコンサートを通じて、私はオリヴィア・ロドリゴが好きだということを改めて実感した。

以上、オリヴィア、めちゃくちゃよかった。。。。という話でした


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