COVID-19がコーヒーチェーンに与える影響/ブラジルの収穫期

元記事:How COVID-19 May Affect the Chain as Brazil Heads Into Harvest - Daily Coffee News [Jonas Ferraresso | April 27, 2020]

COVID-19 パンデミックでコーヒー業界がこの先どうなるか先行き不透明な中、これから収穫期を迎えるブラジルほど大きな課題を抱えている国はないだろう。ブラジルは世界一のコーヒー生産国であり、同国の農業期間 CONAD によると今年のコーヒー生産量は5720万〜6200万袋になると予想されている。また輸入量は2019年に4070万袋(ブラジル輸出評議会 CECAFE 見積り)、国内消費は年間約2100万袋(ブラジルコーヒー業界団体 ABIC 調べ)となっている。

2019年9月からの好調な天候により2020年はコーヒー品質の向上が見込まれる、というのがブラジルコーヒーセクターが全て理想的条件下にある場合の予想であったが、COVID-19 の到来はコモディティマーケットや収穫作業そのものの中断の可能性、さらには世界的な消費行動の変化の可能性までをも呼び起こした。

ブラジルのコーヒーチェーンにCOVID-19 が与える影響を理解するためには、まず ”ブラジルは完全機械化されたコーヒー王国” という固定観念を見直す必要がある。

ブラジル地理統計資料院(IBGE)の農業に関する最近の一斉調査ではブラジルには約264,000戸のコーヒー農園があり、そのうち72%は20ヘクタール以下、16%が20〜50ヘクタール、12%が50ヘクタール以上となっている。国内で収穫されるコーヒーのうち70%は手摘みであり、収穫期には約200万人の臨時雇用を生み出している。

労働者の人員確保と安全性の両立
・農園から輸出まで
・安定したコーヒー需要

・労働者の人員確保と安全性の両立

現在機械化を導入していない地域のコーヒー農園では、ブラジル北東バイーア州 Bahia からの労働者を多く雇用し収穫作業にあたっている。労働者達は長距離バスでブラジル南東のミナスジェライス州、エスピリトサント州、サンパウロ州まで移動し、ほとんどの場合農園が整備している共同宿泊施設を利用する。そういった施設は他の公共設備と同様で ”ソーシャル・ディスタンス” 向きに作られているわけではなく、COVID-19 感染予防のガイドラインに沿った場合通常の半分の人数しか収容できない。
ブラジル農務長官はパンデミック期間中の農作業の進め方について、農家向けにガイドブックやプロトコルを発表している。

予防策として州や市はバスや車両の高速道路通行を制限し、地元に留まって労働することを推奨している。だが労働者がコーヒー農園にたどり着けても、例年通り作業開始というわけにはいかない。

・コーヒー農園のような大規模な労働環境で、健康管理のプロトコルを実施し、ガイドラインを遵守することは可能か。
・コーヒー農園でコロナウイルスの感染者が発生した場合どのように対処すべきか。また全ての労働者が検査を受けられるように、14日間収穫を停止するべきか。
・ウイルス封じ込めのために収穫作業を中断・スローダウンしなければならない場合、国から緊急支援は得られるのか。
・もし農園で何千もの臨時労働者が感染してしまった場合、コーヒー農園近くの小さな町の医療インフラは対応できるのか。

これらの問題は、2020年のブラジルのコーヒー収穫が当初の予想より長期に渡る可能性と、それによりコーヒーの品質が下がる可能性があることを示している。生産者は、労働者の減少に伴う収穫期の前倒しを検討しており、その結果未熟豆が収穫される可能性がある。

・農園から輸出まで

もうひとつのポイントは、農園から港までの輸送だ。ブラジルではほとんどのコーヒー生豆が港まで高速道路を通ってトラックで運ばれるが、高速道路ルート上にある多くの商業施設は現在閉鎖されており、トラックの運転手たちは既にレストランやモーテル、仮眠所といった補給地点を探すのに困難を感じ始めている。これによりいくつかの地域において、コーヒー生豆の流通に遅れが生じる可能性がある。

輸出港では、コンテナの有無が最大の問題となっている。中国発着便をはじめとするここ3か月間の世界貿易の減少は、ブラジルの一部の港においてコンテナの減少につながるとニュースは報じている。
また、高齢者や既往歴など感染重症化リスクの高い従業員が自宅待機を命じられるなどで、コーヒーチェーン全体で人手不足となっている。

・安定したコーヒー需要

その一方で、世界中のカフェやレストラン、ホテルが休業や営業時間制限をする中でも、コーヒーの消費は堅調、または上昇する可能性があると最近の調査結果が出ている。休業直後の数週間で、家庭におけるコーヒーの購入額はアメリカで約31%、ブラジルで約35%上昇している。世界の大口バイヤーたちはコーヒーを追加購入し在庫強化を行い、市場の不透明感に備えようとしている。ブラジルの収穫期が ”ソーシャルディスタンス” 下で行われることとも合わせて、短期的にわずかな価格上昇を招くとみられている。

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junko