移住を強いられるコーヒー農家たち - グアテマラの例

元記事:Coffee Farmers Face Increasing Pressure To Migrate - Daily Coffee News [Dan McQuillan | February 13, 2019]


気候変動、借金、物価、そして北部三角地帯の一部では暴力など、移住を促進する要因はいつだって同じだ。しかしこれらの力による圧力は増大しており、さらにこれらの複数が同時に起きた場合、その複合的な性質を無視することはほとんど困難である。中米のコーヒー農家への圧力が高まっているという仮説は、数字だけでなく、多くの定性的な特徴からも裏付けられている。


11 月、アメリカの中間選挙に先がけたニュースをチェックしていた人は、恐らく一日の中で何度も移民キャラバンの話に出くわしただろう。また1 月にはホンジュラスを出発したキャラバンのことも話題になった。このようなキャラバンは珍しいことではないが、秋に発生したキャラバンはその規模の大きさで多くの人を驚かせた。筆者のフィールドチームが驚いたのは、キャラバンが話題に上る少し前、Cプライスが1ポンド1ドルを下回った頃に、プログラム参加者や家族、地域の友人や知人が徐々に北へ向けて旅立ち始めた、という話をスタッフから聞き始めたことだ。Cプライスはやや回復傾向にあるが、先週の時点でZacapaエリア、Chiquimulaエリアの農家では、ファームゲートでパーチメントの価格が1ポンドあたり0.75ドルにとどまっていた。

マスコミの報道が増えるにつれて、一見突然起こり始めたようにも見えるこの移動の決断を実際に促しているものは何か調査し始めた。その結果次の3つのことが判明した。

複雑な決断要因 


移住というのは、簡単にできる決断ではない。一朝一夕に起こるものではないし、コーヒー価格だけの問題でもない。コーヒー業界やバリューチェーンそのものが絡んだ複雑な問題だ。米国への移住費用は高価だし、危険も伴う。愛する人を残せば次にいつ会えるかもわからない。コーヒー農家の場合、コーヒー葉さび病、干ばつ、コーヒー価格など様々な要因が重なることで移住につながるケースが多く、移住の経済学に関する文献は、この意思決定プロセスの複雑さについて記している。

コーヒー価格と負債


コーヒー農家は他の農家よりも多くの負債を抱えている。CRS プログラム(注釈:零細農家を知識・技術支援するプログラム)に参加している穀物農家の場合、内部の移動ネットワークが発達しており、農業以外の収入源にも依存していることが多い。それに対してコーヒー農家は1 つの収入源(=コーヒー)に依存している傾向があり、生産量の増減や市場価格の影響を受けやすい


さらに複雑なことに、コーヒー農家は事業を成功させるために信用に大きく依存している。さらにコーヒーの収穫期に現金を手にするまでの 1 年のうち 8~9 か月間は、信用と貯蓄に頼っていることが多い。保険も高度な価格リスク管理ツールもない状況下では、信用供与と引き換えに収穫を約束していたにもかかわらず年間を通じて価格が下落した場合、農家は窮地に立たされることになる。


ある農家は最近、収穫前に価格のシグナルを受け取った際、彼に残された選択肢がただ一つ、移住しかないことを悟った。彼はこの決断を「再資本化」と呼び、米国に移住して資金を集め、借金を返済した上で再度農業に戻る可能性を考えていると語った。平均的な年でコーヒー農家の収入に対する負債の比率は約 50%だが、借金の増加、農園改修という機会費用の増加に伴い、近年この比率は上昇している。フェルナンドという名の別の農家は、その農家の収入に対する負債の比率は 75%にまで上昇していると話した。彼は通常1年のうち9か月間、彼に資金を提供している仲介業者に収穫物の約半分を借りているという。しかし今年はコーヒーの価格が安いため、彼はそれ以上の借金をしている。借金を返済した後最終的に手元に残るのは約600ドルほどで、家族を養うにはほとんど2か月しか持たない。


気候変動とその影響/コーヒー葉さび病、干ばつ


2012〜13年に発生したコーヒー葉さび病は、コーヒー農園に壊滅的な打撃を与えた。地域全体で生産量が20%減少し、グアテマラだけでも5億ドルの損失と、世界のコーヒー生産地で大幅な収入減となった。それ以降深刻な流行は起きていないが、コーヒーは多年生であり、その時受けたダメージからいまだ回復期にあるといえる。
多くの農家はコーヒーへの望みを捨てず、2014年から16年にかけて農園の改修を始め、昨年と今年(注釈:2018・19年)にかけて木の回復を辛抱強く待ち続けた。楽観的な見方もあったが、結果的に2012年以前の生産レベルに戻ったばかりの農家を最悪なタイミングでコーヒー価格の下落が襲ったのだった。

(以下省略)

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junko