山あり谷あり。コンゴ民主共和国の2020年ニュークロップコーヒー

元記事:Farmers in Eastern DR Congo Overcome Extreme Challenges to Produce Great Coffee - Daily Coffee News [Richard Hide | July 22, 2020]


コンゴ民主共和国東部、キブの北では今年の収穫期、コーヒー生産者が直面している従来の問題に加えて、武装集団による攻撃、洪水に土砂崩れ、エボラ出血熱、さらに COVID-19 のパンデミックと様々な問題が発生した。

Daily Coffee News は一年前、コンゴ民主共和国東部のスペシャルティコーヒー生産地としての並外れたポテンシャルと、それを実現するために活動している人々について紹介した。 それ以来この地域のコーヒー生産者は様々な脅威にさらされてきたが、それでも臆することなく、コーヒーを作り続けること、より良い暮らしを追求すること、絶滅の危機に瀕する土地と野生生物を守ること、特にこの地に最後に残るマウンテンゴリラの保護活動に取り組んでいる。

この記事では、ヴィルンガ国立公園やファーム・アフリカ、様々な取引相手や事前融資を行っているルート・キャピタルと提携してコーヒー開発プロジェクトに取り組んでいる協同組合のクオパデ Coopade とカワ・カンヅルル Kawa Kanzururu に関して取り上げる。 これらの組織は、強固なバリューチェーンを構築するためのしっかりと協力関係を築くことで、どれだけのことが乗り越えられ、達成できるかを証明したいと考えている。

・異常気象
・武装集団による攻撃
・最優先事項:品質
・女性の活躍
・次のステップ:持続可能で包括的な農業
・マーケティングパートナーの重要な役割


異常気象

2020年5月22日、コンゴ民主共和国東部、ルウェンゾリ山の西側斜面にあるニンギ Ngingi 村を暴風雨による土石流が襲った。村にあるコーヒーのウォッシング・ステーションが被害を受け、ドライングベッド上にあったパーチメント付きのコーヒーは流され、収穫を待っていた農地のコーヒーの木も破壊された。それだけでなく、ウガンダのカシンディへと続く道、1,050マイル(1,689 km)離れたケニアのモンバサ港へと運ぶ際の主要なルート上にあった橋も破壊した。 その後、迂回路の北ルートがCOVID-19の影響を受けて部分的に通行禁止、さらにドライバーの隔離政策に伴い、輸送コンテナとトラックの両方が不足することとなった。(中略)


武装集団による攻撃

5月31日の夜、武装した男達が突如近くの村を攻撃し、6人が死亡、4人が拉致され、住民は恐怖にさらされた。それ以降も攻撃は続いており、現在までに40人以上が死亡し、さらに複数人が拉致されている。 カワ・カンヅルルの組合員の多くは農場から逃げ出したが、協同組合は活動を続けており、残ったコーヒーを集めてコンゴ北東部のベニにあるコーヒーミルに運んでいる。 武装集団は、この地域の豊かな資源を支配するべく恐怖と混乱で20年以上にわたってこの地域を苦しめ続けており、協同組合もそのことは認知していた。
2018-19年の収穫シーズンには、クオパデのウォッシングステーションの管理者2人が殺害され、ヴィルンガ国立公園のレンジャー175人以上がマウンテンゴリラや他の野生動物の保護活動中に殺された。一番最近では、13人のレンジャーが春の初めごろに殺されている。国立公園は現在農業チームが拠点としているムツォラの北部基地を強化しているが、このような状況の中でも、クオパデとカワ・カンヅルルの農家たちは自分たちが栽培する素晴らしいコーヒーによって地域社会に平和と安定、繁栄をもたらすという強い使命感と決意を持ち続けている。


最優先事項:品質

豊かな火山性土壌、理想的な気候条件、標高2000メートル以上の高地で生産されるコーヒーは、最新の技術を用いて生産処理され、高いカッピングスコアのポテンシャルをもつ。それを実現するため、ヴィルンガ国立公園・ファームアフリカの共同プロジェクトはこの一年間、各ウォッシングステーションで設備の補填やパルパー(注釈:コーヒーチェリーからパルプ(果肉)を剥ぎ落とす機械)の修理、新しいウォッシングタンク(ファーメンテーションタンク)の導入、ドライングベッドの拡張などを優先して行った。


女性の活躍

コンゴ東部が女性にとって非常に厳しい場所なのは周知の事実であり、実践的な方法によって変化をもたらしていくことが不可欠だ。クオパデとカワ・カンヅルルは、女性が運営する洗浄ステーションを設立・奨励することで、これを実現しようとしている。 今年のパイロットプロジェクトでは、女性メンバーがクオパデのキリンデラ洗浄ステーションに届けたコーヒーを特別なロットとして加工・輸出した結果、最も高いカッピングスコアを得た。彼女らはこのコーヒーを「キリンデラ・ウィメンズ・ピース・コーヒー」と名付けた。「コンゴ東部で行われている残虐行為のせいです」と女性たちは理由を語った。「コーヒーを栽培することで、女性たちは今起こっていることにノーと言えるようになります。そして、きちんと雇用すれば若者たちは犯罪に手を染めなくてもよくなります。私たちは、コンゴ民主共和国に住んでいるすべての人、ヴィルンガ国立公園に住む全ての生物に平和が訪れることを願っています」


次のステップ:持続可能で包括的な農業

この地域で栽培されたコーヒーは何十年もの間、ウガンダに密輸される前に仲買人に低価格で売る、という販売ルートしか存在せず、長期的に品質向上をしていくための理由や必要性がそもそもなかった。 新たな市場が生まれた今、農家は長期的に生産性を向上させながら、食料やその他の作物を生産することで年間収入の安定的な確保を考えている。
ヴィルンガ国立公園・ファームアフリカの共同プロジェクトは今年、良質な実践的農業のためのトレーニングを開始することになっている。具体的には、レインフォレスト・アライアンスやオーガニック認証を受けた農業システムの中で、木陰栽培や窒素固定のための植樹、木材や食料の確保、さらに品種改良されたブルボンコーヒーの苗床の整備などを計画している。


マーケティングパートナーの重要な役割

ヴィルンガ国立公園・ファームアフリカの共同プロジェクトには戦略的マーケティングパートナーとして Volcafé Select、Malongo と Rombouts がついており、長期契約に基づく並々ならぬ献身を見せている。 Volcafé Select の責任者である Dirk Sickmueller 氏は2019年後半に訪問し、Malongo のバイヤーである Jean-Christophe Galland 氏も COVID-19 パンデミックの前に訪問する予定だった。彼らは協同組合が生産したコーヒーをすべて買い取って品質・認証に正当な対価を払い、ケニア・モンバサの港で品物を受け取るために地元の貨物運送業者と不断の努力を続けた。その結果は報われ、物語はまだ終わっていないものの幸運なことに2019-20年収穫のコーヒーはすべて無事にコンゴ東部を出発し最初のコンテナがヨーロッパに到着しつつあり、近くアメリカにも上陸する見込みとなっている。

ーーー

編集部注:この記事で述べられている見解や意見はすべて筆者のものであり、必ずしも Daily Coffee News と意見を共有するものではありません。

----------------------------------------------------------------------------

今回の記事からは以上です。

junko