＊掌size小説＊　クロワッサン

あなた昨日の空見た?

飛んでたでしょ?
飛んでたわよね…

隣にいた人が言うのよ
あの雲が飛んだら
甘くなるって…

あなた知ってた?

大変よね…
甘くなってごらんなさいよ

たちまち地球の重さが
変わっちゃうでしょ　
　
イヤになっちゃうわね
落ち着いてきたところなのにね…

あなたも気をつけてちょうだいよ
いつ飛ぶかわからないわよ

話によると　
パン屋さんの都合によるらしいのよ

ええ　そうそう
あの角にあるでしょ

あそこのお店のクロワッサン　
飛んだらね　甘い雨を降らすのよ

悪いこともないようでね
雨にあたると　笑顔になって
丸くなるらしいのよ

そうなの！
顔や心　カラダもね

地球もさらに丸くなるって
あなた信じられる?

ここだけのお話よ
ナイショ…

と言ってもね
このお話は結構有名みたい

天気予報では
まだやらないみたいだけどね

どう?
また飛んでほしい?

私?
私は…秘かに待ってるのよ

明日あたり飛ぶかしらって

飛んだら知らせるわね
いっしょに見に行きましょうよ

見上げながら
温かいカフェ・オ・レを゙
いただきましょ

今日は楽しかったわ
ありがとう

また連絡するわね
さようなら

＊…………………………………………＊

（参考資料）

田中達也 さん
ミニチュア写真家/見立て作家

作品「クモワッサン」　より