見出し画像

「月の雨と冷たい露に 芝蘭は交わる」*ありのままcafe*10/9

いらっしゃいませ、
あら、お久しぶりでございます。

お元気でございましたか、

ええ、こちらは変わりなく、
今年の夏の猛暑には、
すっかりカラダもココロも、
疲れ果てはしましたけれど、

なんとかこの通り、
元気にしております。

あなた様は、
いかがお過ごしでございましたか…。

まぁまぁ、私としたことが、
まずは、お掛けになってくださいませ。

ちょうど、ケーク・サレを焼きましたの、いかがですか、

今日はこれで、
お店は閉めようと思っていたところで、

そうなんですよ、
今日は朝から雨ですし、
だんだんと風も強くなって、
気温もどんどん下がって、
空は重くなってまいりました。

なんだか、すぐそばに冬がいるような、
そんな気がして、
窓はすべて閉めてしまいました。

それでお店も閉めてしまおうかと、
そんな理由なんですよ…。

よろしければ、
すこし、おつき合いいただけませんか。

まぁ、嬉しい。
ありがとうございます。

そうですか、
お宿はいつもの、
「森のお宿」ですね、

それなら安心でございます。
ここからですと、目と鼻の先、

それでは、乾杯をいたしましょう。

いただき物のですけれど、
スパークリングの日本酒がございます。

たしか、お好きなはず…。
ええ、「櫻正宗」の、

今日のケーク・サレは、
すこし塩味をきかせましたから、
きっと合うはずでございますよ。

それにしても、
秋というのは日の暮れるのが、
早すぎますね…、
さぁ、さぁ乾杯いたしましょう。

あなた様にお会いしてから、
どれくらいたちましたか、

そうですね、最後にお会いしたのは、
たしか…、1年前。

あの日もたしか、
上弦に向かう三日月を待つ頃、

雨上がりの空は紅に染まって、
お店の中まで燃えるような、
不思議な夕暮れ時だったと、
記憶しております。

あの日も、
あなた様は「森のお宿」へ、
お泊りになると言って、

夕焼け空をぼんやり眺めながら、
ブレンドを片手にくつろがれて、

しばらくすると、
便箋になにかお手紙を書いておられた、

達筆な文字が囁きはじめるような、
静かで優しい、そんなお手紙を、

あら、いやだ、ごめんなさい。
いけませんね…、お許しくださいませ、

あまりに素敵な字を、
お書きになるものだから、つい。

早いものですね、
月日が流れるのは、
暦の上で、今日は「寒露」。

あの日、あなたがお帰りになった翌朝は、とても冷えましてね、
冷たい露が街にも降りてまいりました。

いよいよ、秋が深まりますと、
月は冴え、風ははっきりと吹きはじめ、
乾いた空が冬をつれてきますね…。

スパークリングのお酒から、
温め酒の恋しい季節が、
やってまいります。

実のところ、
この夏は、いろいろとありましたの、
わたくし…。

ええ、暑すぎましたから、
仕方のないことですわ…。

けれど、こうして、
秋が来てしまったからには、
あわてても仕方ございませんね。

まぁ…、嬉しいです…。

そうでございますね、
今、できることを丁寧に、
やってゆくつもりでございます。

それで充分、
充分でございますね。

あなた様のおっしゃることは、
まるで難病に効く漢方薬のようで、

そうですね、
それは「霊芝」のようでございます。

えっ、
まぁ…。香りましたか、

秋の七草のひとつ、
「藤袴」のお花を乾燥させまして、
匂い袋に入れおりますの。

「藤袴」は、「蘭草」とも申しまて、
「霊芝」のことは、
「芝」と呼びますから、

あわせますと、「芝蘭」。
古くより、「芝蘭の交わり」と申しますと、素晴らしい交友を意味いたします。

今宵は月の雨となりましたけれど、

素敵なひと時に、
もう一度、乾杯をいたしましょう。

「芝蘭の交わり」に…。


*……………………………*


*参考資料*

*ケーク・サレ*
フランス語で「塩味のケーキ」の意味
野菜・チーズ・魚介・肉などをいれる

*櫻正宗*
神戸市は灘五郷の蔵元
山邑太左衛門が西宮の宮水で
酒造りをはじめ
全国に灘のお酒が広められた

*月の雨*
雨の日に月が見えないことの意味
秋の季語 同じ意味の季語に
「雨月」「雨の月」「無月」がある

*……‥………………………*

山下景子著
「美人の日本語」
「美しい暦のことば」

白井明大著
「旬を楽しむ日めくり七十二候」

ふうちゃん様 イラスト
いつもありがとうございます☘

*…………………………*

最後まで
おつき合いをいただき
ありがとう存じます

出会いに心から感謝申し上げます
おひとりおひとり
ご挨拶の叶いませんことを
お許しくださいませ

秋が来ると 
冬は その隣で
不安そうに寄り添いながら

秋と冬は
ほんとになかよしです

「芝蘭の交わり」とは
このようなモノなのかも
しれませんね…

季節の変わり目に
どうかご自愛くださいませ

わたくしは
夏の疲れなのか
秋のせいなのか
夜中に目を覚ますことが
時折ございまして…

そんなときには
皆様の記事を密かに開きまして
秋の夜長を愉しんでおります


いつもありがとうございます

1年で1番素敵な季節
「秋」に乾杯 🥂

秋の夜 雨の音を聴きながら…☘

























この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?