【磨け、授業力。】由井薗健先生のmove actionをお伝えします。
【はじめに】
授業てらす社会科担当の三浦です。今年も、由井薗健先生のプロ授業が行われました。
昨年も今年も、由井薗先生の講座には、こんな声が届きます。
「由井薗先生の話を聞いて、感動した」
「涙が出た」
こんなに人の心を動かす由井薗先生の講座について、紹介したいと思います。
【講座スタート】
由井薗先生の水俣病の実践から講座がスタート。
「なぜ工場の排水(どく)は、12年流され続けたのか?」
インパクトのある出会いで子どもの情意をひきつけて学習問題を合意させていきます。
「トヨコちゃんは何も悪くないのに、ひどい」
「なぜすぐにどくを止めないのか!」
など、子どもの感情は動いていきます。
そこから、当時の日本が置かれた高度経済成長期についても考えていきました。水俣市や日本全体の利益を考えると、工場を止めることはできなかったという立場の見方が生まれ、葛藤が生まれます。
「日本は、人の命よりも、生活の豊かさをとったのか?」
授業中に生まれた子どもたちからの言葉。
今を生きる私たちにも突き付けられる言葉です。
由井薗先生の社会科授業では、今を生きる私たちが考えなければならない問題が子どもの言葉として語られます。
「いくら日本のためでも、人の命をうばうどくが、12年も流され続けていたのは、納得できない」
子どもらしいこだわりの詰まった振り返りが紹介されました。
どうしたら、このような振り返りが書けるのか?由井薗先生からは、
「板書のキーワードを入れて、自分を主語にして書くのが、こだわりのある振り返りになっていく。そして教師が、その子の振り返りの良さを語りながら伝える。その子しか経験できないこと、エモいことが書かれてくる」
という極意をいただきました。
こんな社会科授業できたら、一人一人が誰かを幸せにしようと思う日本になっていくのだと思います。
【由井薗先生から】
今回のテーマ「move action」を振り返って、由井薗先生からメッセージをいただきました。
研究的雰囲気のない学校にぽつんと取り残された教師、流行を追うかっこいい研究についていけない教師。そういう教師たちは、どうすれば自分の授業をよくすることができるのでしょうか。
次にあげる一つ二つでもよいのです。きっとあなたには新しい景色がみえるようになります。
1 仲間をひとりつくって互いの授業を見合うこと
見てもらう箇所を打ち合わせて5分くらいでよいからできるだけしばしば。見る方もありきたりの研究授業よりずっと勉強になりましょう。
2 自分の授業の録音をできるだけたくさん聞くこと
しごとをしながらでも、のんびり休んでいるときでも、ごく気楽に聞くのがよい。ふと気づくことの中に、すばらしい宝石がひそんでいます。
3 1つの単元を1枚の紙でまかなってみること
計画も評価も注意事項も計画はメモのように書けばよいのです。そして授業前後、いや授業中も教卓にのせたその紙の上にどんどん書き込んでいく。スタイルは自分であみだしなさい。座席表を生かすのも一案。その紙一枚あれば、授業中も授業後も十分まにあうというところが肝心。たくさん書けば能率が悪くなります。
4 一人ひとりの子のカルテをつくること
おやっと思ったことだけかんたんに書けばよいのです。ひと月ふた月すれば、どの子についてもいくつか手がかりができる。そういうメモ的なカルテをいつもポケットにつっこんで歩く。はんぱな時間にちょっとのぞいては解釈してみましょう。
5 子どもごとにちがったノートのとり方ができるように指導すること
ノートは個性的に考えていくためのステップです。その指導は簡単なようでむずかしい。しかしそれであなたは子どもを知ることができます。自分の授業を変えることができます。
6 なるべく小さい具体的な問題を自分で1つ選んで、1年続けて研究してみること
研究というものがわかります。見かけのよいにせものの研究にだまされなくなります。その意味でかっこいい問題はダメです。ささやかで大切な問題はいっぱいあります。
今から52年前の上田薫氏(『社会科わかる教え方総論篇』国土社)の言葉です。
私自身、公立時代は社会科の研究校にいたわけでもありません。しかし、この言葉に支えられ、いくつか実践し続けてきたことで、「新しい景色」が見えてきたことは事実です。
それにしても、改めて読み返すと、1つ1つ、今の自分に共感することばかり…。
「授業は目の前のこの子、あの子のためにある」と考える「磨け授業力」に参加された皆さんにも、いくつか共感できるものがあるのではないでしょうか。
1つでも共感できるものがあれば、今すぐその一歩を踏み出してみましょう。それが「MOVE ACTION」ではないでしょうか。
【おわりに】
このメッセージを読んで、授業人由井薗健先生の地道な努力があって、子どもが動き出す授業が生まれるのだと思いました。
「目の前にいる子ども」
を思い浮かべながら、私たちにできることは何かを考えていくことが大切なのだ教えていただきました。
そこには、派手さはありません。
毎日毎日、それぞれの瞬間で、子どもと向き合う。
私自身、そんな教師になりたいと思いました。
授業てらす 三浦健太朗
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