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【漫画】兄嫁と結婚します 37

大正時代の東京・上野を舞台にしたマンガを描いています。
もうすぐ結婚式です。


はらから



前夜の花婿



明日は結婚式です。


解説

【蛇足】結婚と新生活を控えた侯爵と華枝の話を描きたいと思いました。すぐ近所(400~500mの程度)のお屋敷に嫁ぐとはいえ、家族と離れ、娘時代を卒業する華枝。彼女なりに、弟たちと千代に何かするのではないかと考えました。まあ、私が千代にウェディングドレスを着せたかっただけなのかもしれませんが!(笑)
今では白無垢とウェディングドレス両方を着る花嫁も増えましたが、大正時代は圧倒的に白無垢の花嫁が多く、ウェディングドレスの花嫁はごくわずかだったと思います。両方着た千代はかなり珍しい存在でしょう。

結婚の前後を描いた映画では「花嫁の父」(リメイク作品「花嫁のパパ」)のように、花嫁とその父親を描いた作品が多い気がするのですが、華枝と父親を描こうか…いや、むしろ花婿になる侯爵とその娘の話の方が面白いんじゃね?! と思って描きました。
華枝は家族でごちそう食べてなんなら軽く1杯飲んで、ご挨拶した後、気分よく寝てそうだからな。緊張したり眠れなくなったりするのは侯爵の方だな、と(笑)。

心配する娘たちとの会話はあれこれ考えていたのですが、実際に描いてみると短くまとまりました。いつも通りの父親を見たら安心したようで、素直に部屋に戻りました。私も描いていてびっくりしましたが、ああ侯爵は娘たちを安心させることができるようになったのか、親子の信頼関係ができたのか、と気づき、感慨深かったです。
白井は相変わらずで、侯爵の再婚は睦子の希望でもあると話しても、どこまでが本当でどこからが作り話かわからない(笑)。乳兄弟、赤ちゃんの頃からの腐れ縁で、侯爵の家来になるために生まれたような人です(白井は認めたくないでしょうが)。英国留学にも同行、侯爵のことも睦子のこともよく知っている。
侯爵を主人(植草家の家長)として機能させるために執事として仕事をしていますが(好待遇で)、ほんの少しは一人の人間として気にかけている部分もあるかと思います(1%未満かもしれませんが)。あと、変に優しく慰めても警戒して面倒くさいし、イラっとさせた方がエネルギーが出ることも知っている(笑)。

睦子にとっても、白井は子どもの頃から知っている人なので、侯爵に言えないこと、言いにくいことを白井に頼むことがあったと思います。手配や交渉に長けているし、チップさえ渡せばよく後腐れがない(笑)。
睦子は残された時間が長くはないと自覚してから、思いつく限りの根回しと準備を水面下で進めていたことでしょう。侯爵には「病気を治すことだけ考えなさい」と怒られるから言わなかったと思います。

ショパンの「前奏曲 第7番イ長調Op.28-7」が睦子のイメージです。「太田胃散」のCMで有名ですが、ピアノの美しくシンプルなメロディと、曲の短さが彼女らしい感じがします。
戦前はもちろん昭和の頃までは喫煙者が多かった(男性は特に多かった)のですが、睦子が煙草の匂いを嫌うから、侯爵は喫煙の習慣がありません。自分で吸わなくても煙草を吸う人の多い会議に出ることはあり、散々いぶされて戻るった侯爵に、「お疲れさまです」と言いつつも顔をしかめる睦子。好かれるためというよりは、睦子が嫌がるのをわかっていて煙草を吸うような馬鹿なことはしない、という感じです。

念のため。コーベットの本がつまらないというのではなく、白井が侯爵の読書傾向と読解力、最近の興味関心等と、蔵書の種類や内容、文章の難解度等を把握しており、侯爵がこの本を読むとうとうとしそうだなと目星をつけていただけです。仕事は完璧な執事(性格はともかく)。

侯爵と華枝の結婚は、両家をあげての一大プロジェクトで、結婚式や花嫁道具の準備、植草家のリフォームや引っ越しはもちろん、手続き、挨拶、各所からの問い合わせ対応、贈答品を受けたり礼状を送付したり、限られた時間の中でお金も手間もかけつつ、ありとあらゆる準備を進めてきたはずです。もちろん全部は描けませんが、想像するだけでお金持ちの結婚って大変だ~! と思いました(笑)。

それぞれの思いを胸に、結婚式を迎えます。

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