映画

  子供の頃から大の映画好きだった。
白黒のテレビで放映され、何度も観て痺れたのが坂東妻三郎の『無法松の一生』
 黒沢監督の『生きる』、小津安二郎もいいし進藤兼人も最高。
市川雷蔵に嵌った原因は、『破戒』島崎藤村原作の部落民の話だった。
 小学生で『兵隊やくざ』が大好きってどういう子供だったんだかねぇ。
戦争は大嫌いなのに雷蔵の陸軍中野学校は夢中になって観た。
 大人(46歳)になって死にかけた時、私を救ったのは『シンドラーのリスト』だった。
 精神病院を描いた『カッコ―の巣』は、何度観ただろう。
どの映画にも魂を揺さぶる言葉が出て来る。

『フィラデルフィア』に、エイズになった弁護士が、ホームレスの男と出会い
 その男が語る。
「正しいガバメント(政府)とは、絶対に間違わないことでなく、間違わない正しい道を模索し行いながらも間違いだったと気付いた時、それを認め明らかにし正すことを行う。ことの出来る機関である」と。
 これは、原発、戦争、公害問題、差別、教育、思想、哲学に至るまで全てに通じることではないかと私は思う。
 「琴柱(ことじ)にニカワす」という史記から出た言葉がある。
琴の柱をニカワで固定してしまうと音が狂っても直せなくなってしまう。その時の流れで正しいと思い込んでいたことも、その時々で変化していく。
 物事は、全てライブで起きて 行われているのだ。
過去にも未来にも縛られず、ただ今に真直ぐ心を向けて生きる。
 それを、仏教では、爾今(にこん)というらしい。

 でも、過去から学ぶことは大事でありがたい教えだ。
戦争で子を失った人が言っていた。
「あの時『戦争はイヤだ』と言わなかった、言えなかった。言っても仕方ないと思って諦めた。でも、あの時に戻れるなら、何と言われようと言いたい。
『戦争はイヤだ』と…」
 さて、果たして、子供が生きているその時に戻ったら、その人はそれを言うだろうか?と、思いながら考えた。
「私は、原発に反対です。止めて下さい」と、私はどれだけ声にしているだろうか?     と。

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