いじめ?
小学校低学年の頃、教室は机を2つ並べて座っていた。
要は、2人ずつ男女の席替えで番号を引いて席が決まるくじびきだ。
たしか、一学期に1回か、1年に一回かの頻度で席替えをしていた覚えがある。たいして興味がなかったので、決められた席に座っていた。
ある日の席替えで、クラスで一番大きな男の子、縦も横も、所謂肥満児が私の隣になった。
私は多少自閉症のせいもあり、自分の陣地が守られないと集中できない。
彼は藤森くん、という名前だった。
そして、彼は今から考えると当然なのかもしれないが、私の陣地に体がはみ出してくる。
「もっと、自分の席に行って」と、私は毎日のように言った。
彼には小学生用のいすも机も小さかったのだ。たぶん。
でも、毎日毎日肘が当たったり、股を広げて座っている彼の膝にぶつかったりするのが私のストレスになった。
で、何度言っても私のほうにデブだからはみ出してくる
ある日、思い切り腕をつねった。
子どもで、嫌なことは本当に嫌だったので加減など全くなし、思いっ切りだ。
「はいってこないで、っていってるだろ!」と言って。
ええと、女子ですが、怒ると江戸っ子べらんめえになる。
彼はつねられても、ヘラヘラと笑っていた。その顔を見るとなおさらいらいらして、「あんた、わざとやってるんでしょ、向こうへ行けよ」と、机を押しやったり、足を踏んづけたりした。
それでも彼は少しも小さくならない。
この席、死ぬほどいやだ、と思い始めてきた。毎日毎日、藤森の顔を見るのもいやだった。でかい図体、へらへらとわらう、薄黒い汚れた顔。
いやでいやで、毎日、毎日腹が立つたびに思い切り腕をつねっていた。
おもいっきり。どうして、人の陣地を荒らすのか。
そして、やめて、とも言わずへらへらと笑っている、なんだこいつ。
頭も悪い、ノートも書かない。ただ邪魔なだけのとなりの藤森。
そして、休まない。いつ行っても学校にいる。
私は病気があったので、入退院を繰り返していた。
で、学校へ行くと憎い藤森がどーんと座っている。
つねってもつねっても、何も感じないようだ。「あんた、痛くないの?」と聞いたら、袖をまくって見せた、
アザだらけ、私がつねったアザ。内出血しているのがたまりにたまっていた。「げっ」と声に出るぐらい驚いた。
「こんなになってるのに、感じないの?」と聞いたりしたが何も言わないでへらへら笑っているだけ、気持ち悪いやつだ、と思っていた。
ある、ホームルームの時間、先生が、何か言いたいことがあったら手を上げて言いましょう、というのが1週間に一度あった。
「あの子が掃除をさぼって帰った」「あの子があの子にブスと言って泣かせた」というような問題をだれかがいい、先生が「では、○○さんはこれからはそんなことしないでください」と注意する。
小学校の低学年などそんなものだ。幼稚園の延長みたいなもの。
そして、私はひとりが好きだったので、誰の名前も覚えていなかった。
すると、急に隣の藤森が手を上げて
「となりの○○さんが僕をつねってくるので、やめてほしいです」とはんべそをかきながら言ったのだ。
それを聞いて私は驚いた、
先生が何か話す前に「ええええ?あんたヘラヘラ笑っていやだなんて言わなかったじゃないか」とびっくりして言った。
「なにあんた、信じられない、あたしのせいだっていうの?あんたが私の陣地にはみ出てくるからでしょ?いやだからその分だよ」と言った。
先生はいつものように、
「○○さんは藤森くんをつねったりするのはやめましょう」と言った。
私は、腑に落ちず、立ち上がって「先生に言われるなら、藤森が直接私に言えばいいと思います」と一気に頭にきて藤森をにらみながら言った。
そして、答えを聞くことなく、
席に座って、「あんたが、邪魔なんだよ」と言って
彼の机を手で離して、「こっちにくっついてこないで」と言った。
そして、「言いたいことがあれば直接言えよ、もう二度と話さないけど、大嫌いなんだよ、気づかないわけ??、自分がやられたって?、なんでやられたかは言わないんだ、へーーーーーーーー」と言った後、
腹が立って腹が立って、本当はぶん殴ってやりたいぐらい腹が立ったが、机に突っ伏して「ふんっ」と、そのホームルームが終わるまで顔を上げなかった。
その後も「あの人があの人を」「引き出しにゴミを入れないように」などなどホームルームは進んで終わった。
で、次の日から、くっつけないといけないのかもしれないが藤森が机をくっつけてくると足で蹴飛ばした。無言で。
一生話す気もしなかった。自分のことを自分で言えないなんて女みたいな男だ、いやならいやといえばよかったのに。と思っていた。
先生が机を直してくっつけてきても思い切り蹴飛ばして離してやった。
こっちのほうがいやだよ、といいたかったからだ。
こんなデブをわたしの隣にするな、と本当は言いたかったが、席替えまでの我慢だ。
なかなか席替えはない。
でも、机を10cmは離して落ち着いていた。私は。
嫌な思いせず、つねるのもたいへんだったから。
すると、ある日「僕のことつねってもいいから、机をくっつけようよ」と藤森が言ってきた。
「? あんたって、ばかなの?くっつけると、つねられて、いやだからホームルームで言ったんでしょ?つねってもいいからっていうなら、はじめから言うなよ、くっつくな!!!」と怒った。
ばかなやつだ。そんなに先生にいい子に見られたいのか?
先生も馬鹿なら、こいつも相当バカだ。あんなアザになっても良いと??
痛さを感じない、ブタなんだと思っていたら、まんまと先生に告げ口する。
信用できない奴。
というわけで、席替えまで席を離したまま、わたしは藤森をゆるさなかった。
という話。
今となっては、立派ないじめだ。
私は体がでかいからといって人の陣地にはいってきたくせに、私を告げ口するのか、と当時は真剣に考えていた。
デブが悪い、と。
私は藤森とそのご、クラスが一緒になっても言った通り無視し続けた。
わたしがやっていたことは、最悪ないじめだったのか?と考えたのは大人になってからだ。急に思い出したのだ。
そばに居なければストレスにならないので忘れていた。
こんな感じでのいじめもあるだろう、いじめ、いじめ、とよく聞くようになった。なんとなく、ケンカ上等の私は、中学も高校でも大学でも職場でもいじめっ子だったような気がしてきたからだ。
団体でつるむことはしなかったが、気に入らないと、急に無視していた。
何人も「何が嫌いになったの?」と友達に聞かれた。泣かれた。
飽きっぽいのだ。友達にすぐ飽きてしまう。
これもいじめって言えばいじめだなぁって。
いじめられっ子ではなく、いじめっ子だったということだ。
考えてみるともしかしたら、いじめっ子だった私を「いじめられっ子」はいじめられていた記憶を抱いてどこかでいきているのかもしれない。
私を忘れることもなく。私はすっかり忘れていたけれど。
学校なんて、そんなに深く考えるところではない、先生も友達もべつにいらない、と思っていたのは私だけだったのかもしれない、と今思うようになった。
なんて日だ!というぐらい気づいたときに驚いた、
謝る気はさらさらないよ、藤森。
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