〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(5)農業 増える耕作放棄地 農地の集約にも課題

 コメの作付面積と収穫量で全国トップクラスを誇る上越市。近年は少子高齢化による後継者不足、農地を手放す農業従事者の増加など、多くの問題を抱えている。

 同市高田の市街地から東に約10キロ、同市妙油の農業会社「花の米」はコメの生産、加工、販売を行っている。黒川義治社長をはじめ、長女の松野千恵さんと夫の直人さん、三女の黒川沙希さんが実務の中心となり、黒川社長の妻・薫さんと二女・西山安依さんが事務などの手助けを行う家族経営で成り立っている。後継者の面で心配はない。

花の米

〈写真=家族間での後継に成功した「花の米」。女性が活躍する農業経営体として農林水産省から選定された〉

 同社は現在、事務所のある妙油を中心に平野部で約40ヘクタールのほ場を所有している。現状の施設と人員規模を踏まえ、「農地を増やしたとしても50ヘクタールから60ヘクタールがマックス」と黒川社長は話す。仮に100ヘクタールまで増やすと自社以外の施設を使うか、会社の設備を拡充する必要があり、規模を広げることは得策ではないと考える。自社が今後も生き残っていくためには、収穫量が期待できない中山間地のほ場を手掛けることも現時点では難しいという。

 しかし、今後は高齢化と後継者不足によって農業をやめる人が増え、農業を続ける農家の元に農地が集まることが予想される。市内全体を見ると、集落営農を行う団体や生産組合も高齢化が進み、先細りは避けられない。

 同社と同等規模の農業団体が複数あれば、手放された農地が集約され、耕作放棄地となるのは抑えられるが、今後、条件の悪いほ場から切り捨てられていく可能性がある。「つながりのない場所の農地まで管理する余裕はない」と言い切る。

 春耕に向けて農業従事者が本格的に動き始める4月を迎えた。黒川社長は「県で何番目だろうが、消費者に『おいしい』と言ってもらうことが一番」と前を向き、今年もコメ作りに情熱を注ぐ。つづく

※この記事は2020年4月5日付上越タイムスに掲載されたものです。文中の年齢などは当時のままです。ご了承ください。

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