〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(3)林業 森林整備し次代へ 技術継承、生産加工も

 上越市の面積の55%、妙高市では同73%を占める林野。かつて燃料や資材として木材が使われていた時代は変わり、現在は放置・荒廃している森林が増加、木材価格の低迷も続き、土地所有者や境界の不明など、多くの課題を抱えている。上越地域にはいわゆる、林業を営みとする林家はいない。森林組合と所有者が中心に守っている。昨年4月から新たな森林管理システムがスタート。地方自治体(市)と組合、所有者が一体となった整備が求められる。

 上越にはそれぞれ森林組合があり、地域の特色に合った運営をしている。旧上越市や頸北、頸中などを管内とするくびき野森林組合(中川耕平組合長、組合員数5351人)では近年、市発注の公園整備、支障木の伐採、民間業者の請負工事の他、廃棄物処理事業の割合が高くなっている。

 大滝忍参事(61)は「それぞれの山の維持管理と生産性が上がるように守っていくのが本来の仕事。森林整備を充実させていきたい」と役割を話す。組合員ら対象の各種研修や講習会を開き、林業知識の向上や技術の継承に努めている。

 旧頸南5市町村をエリアとする頸南森林組合(田中新一組合長、組合員数3525人)では、林産事業(利用間伐)を中心に進めている。林業機械は高性能化し、若い世代への技術の継承を課題に挙げる。冬は上越、妙高両市の市道除雪も請け負う。

 最近はドクダミやヨモギ、スギナなど乾燥野草の生産、販売に取り組んでおり、年配者の生きがいにつながり、林業振興の活性化にも役立っている。約20人が関わっており、山本孝一参事(59)は「張り合いを持ってやっておられる」と頼もしく見詰める。

 十日町市松代、松之山を含めた旧東頸城5町村を管内とするゆきぐに森林組合(村松二郎組合長、組合員数2326人)では、平成3年からナメコの生産を行い、現在、年間約9億円を売り上げ、事業総収益の75%に上っている。井部慎一事業統括部長(60)は「堅調。年間を通して引き合いがあり、ナメコは需要が固定している」と話す。

f96a2aa7-50cd-4147-aec1-ed7c774db5c9_1_写真③ ヨモギの袋詰め作業状況

〈写真=採取し乾燥させたヨモギの袋詰め作業(頸南森林組合提供)〉

 木材加工で発生するおが粉をナメコ生産に活用する。加工された製品は、国道253号沿いの直売場「青空市場」(大島区岡)で販売する。広葉樹林整備を進め、「地産・地消」の循環による地域貢献を目指している。つづく

※この記事は2020年4月3日付上越タイムスに掲載されたものです。文中の年齢などは当時のままです。ご了承ください。

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