〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(7)事業承継 どう〝外貨〟稼ぐか 「とがった強み」持つ

 上越市は事業承継に関するセミナーの主催や外部機関と連携して相談会を開き、承継を促進するほか、経営を継いだ人に経営やマネジメントを学ぶ機会を設け、後継者の育成を支援する方針だ。「事業者が望む形で引き継げるような意識啓発を推進していく」(市産業政策課)。

グラフまとめ1

〈グラフ=廃業を予定している事業所のうち売上額、収益額、顧客・販路確保の状況(令和2年『上越市中小企業実態調査』の結果をもとに作成)〉

 では実態はどうか。2月の同市の調査で「事業承継を検討していない」と回答し、今後について「廃業の予定」とした事業所(回答者全体の23・7%)のうち、3分の2が売り上げ、収益、販路とも「減少傾向」と答えている。市内の経済関係者によると、戦後または高度経済成長期に創業した企業は、当時こそ時流や需要によって売り上げや販路を拡大してきたが、大手企業の海外進出や業務のIT化、流通のスピード化で「今となっては、時代に合わない産業も少なくない」という。

 家族間承継やM&A(企業の合併・買収)と、さまざまな形態の事業承継に関わる「勝島経営研究所ビジネスカツシマ」(同市栄町2)の二宮直人氏は「これから生き残っていく企業は、県外との取引で〝外貨〟を稼ぐことができるか、その分野での『1強か2強』」と話す。地域内で同業者との過当競争を生き残るだけでは、後継者への魅力も、買収する側から見た企業価値も乏しいという。

 では、多くの企業にまったく可能性はないのか。二宮氏は時代の変化に合った対応や「とがった強み」が必要だと話す。「例えば、街の自動車修理工場の後継者が、米国産車を店に並べ始めた。これが売れている。修理などもしているなら、ピンポイントで稼げる。そういうジャンルは強い」と例を挙げた。

 また事業承継を目指すなら、早めに取り掛かることの他に「経営者がそれを楽しむこと」だという。「苦労は自然と周囲に見えてしまいがちなもの。楽しく仕事をできていると表現することが、実は最も大切」と話した。つづく

※この記事は2020年4月7日付上越タイムスに掲載されたものです。文中の年齢などは当時のままです。ご了承ください。

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