〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(6)事業承継 存続か廃業か岐路 地元の中小・小規模事業者 地域密着企業に難局

 人口減少や高齢化の進行は、地域の産業にも影響を及ぼしている。特に経営者の高齢化と後継者不在は、円滑な世代交代や事業承継の足かせとなっている。背景には競争の激化や企業の将来性、といったいくつもの問題がある。地域の現状と課題を探った。

 上越市、妙高市、糸魚川市それぞれの統計によると、3市合計で1万4000を超える事業所があり、従業員数は合計で約13万人。3市とも飲食業や小売業をはじめとする第3次産業の割合が高く、従業員数では建設業や製造業など第2次産業の比重が大きくなる。

 3市には上場企業の生産拠点がいくつも立地するが、それは事業所全体の一握りに過ぎない。上越市は3市の中で最多の約1万事業所が立地するが、99%が中小・小規模事業者だ。地元を商圏に、地域密着で市民生活を支えてきた企業も多い。そうした事業所が今、存続か廃業かの分かれ道に立っている。

 上越市は2月、無作為抽出した市内の約2000事業所を対象に、事業承継の検討の有無、後継者または候補者の決定状況などを調査した。その結果「事業承継を検討していない」と答えた事業所が51・8%に上った。また「検討していない」と答えた事業所のうち、45・8%(調査全体の23・7%)が「廃業の予定」と答えている。

 同様の調査は平成26年度にも行い、当時の調査では「事業承継を検討していない」と答えたのは54・4%。うち「廃業の予定」と答えた事業所は65・7%(全体の36・7%)だった。

 市産業政策課は「例えば青果店や自動車修理工場のように、生活に密着した事業所が廃業していくとすれば、市が制定した中小企業・小規模企業振興基本条例の趣旨からも課題。また、平成26年度の調査以降、事業承継セミナーや専門家相談などの機会を増やしたことが、数値の悪化を防いだ要因と考えられる」としている。つづく

※この記事は2020年4月6日付上越タイムスに掲載されたものです。文中の年齢などは当時のままです。ご了承ください。

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