〈上越タイムス創刊30年 地域を守る〉産業編(9・終)伝統産業 地元の味にファン 山本味噌醸造場 新商品、体験で発信力

 伝統産業は人口減少や後継者不足、中央の大企業の進出などの影響を受けている。伝統を守りたいが、将来の見通しが立たず、子どもには継がせられないというジレンマが立ちはだかる。

 上越市ものづくり振興センターは「淘汰(とうた)されているが、今も続いている所は何らかの取り組みをしている」と話す。市が力を入れている発酵食品の一つ、みそを製造している山本味噌醸造場(同市中央1)の山本幹雄代表社員(47)に取り組みを聞いた。

みそや

〈写真=伝統の雪ん子みそ(左)をメーンに、タマリーブなど新商品でみその周知を図る山本さん〉

 主力の「雪ん子みそ」は、大正5年の創業時から変わらない製法で造り続けている。景気が悪化すると消費が安価なみそに流れることもあるが、「地元のみそで育った人が使ってくれる。変えようがない」と山本さんは話す。

 人口減少や家庭でみそを使う機会が減っていることから、10年ほど前から対策を始めた。健康志向の人向けの減塩みそ、付加価値を付けた雪室貯蔵や、材料にコシヒカリを使ったみそを製造している。液状のたまりみそとエキストラバージンオイルを混ぜた「タマリーブ」は北陸新幹線開業に、メギスの魚醤(ぎょしょう)を使って魚の風味を出した「メギみそ」は同市立水族博物館「うみがたり」開館に合わせて開発し、土産物需要を狙った。

 基本はあくまでもみそで、これらの商品は「みそを知ってもらうためのツール」だと説明する。学校や市の講座でのみそ造り体験も積極的に行っている。講座では、造った直後のみそのしょっぱさを味わってもらい、発酵の力を伝えている。若い世代にみその造り方だけでなく、地元の企業を知ってもらいたいという思いがあるという。

 将来の後継者については、「自分の子どもに限らず、直江津のみそ屋として店と味を残してくれる人に継いでもらえれば」と考えている。新商品も作っているが、「メーンの顧客は生まれ育った味を大切にしている直江津の方。売り上げも大切だが、地域貢献をきちんと行い、地域と一緒に歩む会社で在りたい」と話す。おわり

※この記事は2020年4月9日付上越タイムスに掲載されたものです。文中の年齢などは当時のままです。ご了承ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?