見出し画像

コロナ禍における、いち音楽ファンの話。

先週、あるバンドの野外ライブに参戦した。
コロナの影響から2度の延期を経て開催された、結成10周年・メジャーデビュー5周年の記念ライブは、いろんな意味で「特別」な時間だった。

事態が収束し、日常を取り戻したとき「あの頃のライブはこうだったなぁ」と、少しでも穏やかな気持ちで振り返ることがでにるように、今回の感想を残しておこうと思う。

GWのど真ん中に開催予定だったライブは、延期を重ねた結果、平日の夜に振り替えられた。
変更先の日程がなかなか決まらず、中止も視野に入れていたギリギリのところを施設側の尽力により、開催に踏み込めたとメンバーは話していた。

入場前には検温とアルコール消毒。チケットは全て電子化され、もぎりも自身で行った。スタッフも観客も全員マスク。エリア内は適正な距離を保てるよう印が打たれていた。

1分も押すことなく、開演時間ぴったりに、彼らはステージに現れた。
最初に披露されたのは、タイトルに「喜び」が入った曲。
春から温め続けられた彼らの思いが、音に乗って会場を埋め尽くす。

笑顔で頷きながら、手を挙げ、肩を揺らし、全力で音を楽しむバンドメンバーの姿は、コロナ前と何も変わっていない。

わたしはというと、
とにかく、もどかしさで一杯だった。

応えたかった。
彼らが届けてくれる音に。
伝えたかった。
思い通りにいかない日々が1年以上も続くなか、いつも支えられていること、何度も励まされていることへの感謝を。

曲のコールに合わせて声を出すことも、メンバーの名前を呼ぶこともできない。その距離をどうにか埋めたくて、音に合わせて手を叩き、身体を揺らし、何度も何度も繰り返し拍手を送った。


1時間半のライブはあっという間に過ぎ、最後の1曲となった。
アンコールの定番である曲の中には、こんな歌詞がある。

涙や笑顔をそっと 渡せるように
この場所があって
なにを犠牲にしたってそれだけは
僕らが守っていきたいんだ

自分たちが音楽を届ける場所。
ファンがその想いを受取る場所。
それが彼らにとっての「ライブ」なんだと勝手ながら解釈している。

観客一人ひとりの目をまっすぐに見て歌い上げられるこの曲は、出会ったときから変わらない大好きな曲のひとつだ。

最後のコメントでメンバーが言った「今度のライブでは皆で声出せたらいいね」の一言。一日も早く日常を取り戻したいと改めて思った。

感染症の影響を受け、延期・中止の発表をSNSで何度も見てきた。
それがたとえ参加予定でなかったライブだとしても、あの空間に救われた経験がある人間として、どうしようもなく悔しかった。

悪いのはウイルスであって、だれのせいでもない。
それでも拭えない悔しさがあるのもまた事実だと思う。

あるバンドマンが言った。

「会場に来てくれた皆、ありがとう。たくさん悩んで来ない方を選択した皆にもありがとう。両方の勇気に感謝を伝えたいです。」と。

自分たちが信じ、貫いてきた音楽を「不要不急」だと言われても。
それでも腐ることなく、真っ直ぐに向き合う姿に、またもや救われた。

大それたことはできないけれど。
それでも音楽に救われた人間として、これからの音楽業界に少しでも貢献したいと強く思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?