見出し画像

⑨「逆輸入」は、ココが自損型輸入と違う。

私が作った「自損型輸入」という新しい貿易・経済用語が、少しずつ世の中に広がってきました

今年に入ってからは、経済団体、産業別組合、マスコミ、各種団体から講演のご依頼があり、自損型輸入という新たな視点を得た方々から、様々な反響をいただいてきました。



そんななか、時々、「もしかしたら、誤解されているかもしれないな」と感じる言葉に出会います。

それは、自損型輸入を語る方々が、「逆輸入」という言葉を用いる場合があることです。

「逆輸入」という言葉は、貿易に従事していない一般の方にも馴染みある言葉のため、説明時に使いやすく、似たイメージで語られるのかもしれないと思ったので、ここで、輸入の基本的な構造を見てみましょう。



★通常輸入

「日本にはなく、外国にある品目」を日本に持ち込んで販売する。

つまり、日本国内の産業に損害を与えることはない経済行為。

★開発輸入

「日本にはなく、外国にはあるが、商品化のためには日本からの技術支援や資金提供が必要な品目」を日本に持ち込んで販売する。

つまり、輸出国(だいたいは開発途上国)には産業と雇用が生まれ、日本の国際貢献にもつながり、日本国内の産業に損害を与えることはない。



そして、このどちらにも属さない構造の輸入が「自損型輸入」です。

★自損型輸入

「日本に昔からあり、外国には市場も需要もなかった品目」を、価格競争力の獲得と強化を目的として海外で作らせ、日本に持ち込んで販売する。

つまり、日本経済に売上、利益、賃金、物価、税収の減少とデフレ圧力をもたらし、多くの産地と業界に甚大な損害を与える。

この三つの輸入の歴史、構造、被害は、私の著書『コスパ病』、『脱コスパ病』、『日本の未来は畳が拓く』で詳述した通りです。



では、「逆輸入」とは何でしょうか。


逆輸入とは、例えば、

・欧州市場限定で輸出販売していた日本製のスキンケアが、現地で好評を博した結果、日本でも輸入販売されるようになった。

・米国市場限定で現地生産していた日本車が、現地で好評を博した結果、日本にも輸入販売されるようになった。

・その他、ある国で流行した日本食、日本の音楽、日本の本などが日本でも注目され、日本でも輸入販売や再生産がなされるようになった。

このように、逆輸入とは、

◆その国で日本に由来する商品が人気を博し、話題になった(つまり、日本から輸出されるか、現地で生産されるかして流通した結果)。

◆海外の反応からその商品を見直したり、注目したりした日本人が、日本でも買いたいと思うようになり、日本由来の品目でありながら、後から国内需要が生まれた。

という輸入手法のことで、このように構造上の特徴をシンプルに見ると、「逆輸入」という言葉は、簡潔かつ適切な用語であることが分かります。



そして同時に、『逆輸入』という輸入は、

「海外で流通しているものの、日本には実質的に市場を作れるほど十分な需要が存在していなかった品目」

を取り扱うことから、

「日本に昔からあって、海外には市場も需要もなかった品目」

のみを安価に輸入する『自損型輸入』とは、手法も構造も影響も全く異なる輸入であることが理解できます。



日本に大量に輸入され、産地である熊本県八代市の基幹産業に甚大な被害をもたらした「中国産の畳表」は、中国の国内市場でヒットし、人気を得た結果、日本人が畳の魅力を再発見して輸入されたのでしょうか?

狭い日本の道路で小回りが利く、過疎地の自治体専用の「電気自動車の中型バス」は、中国で「日本のEVはすごい!」と評価された結果、日本人が日本車の良さを再評価して輸入されたのでしょうか?

小骨まで几帳面に取り除かれ、日本人の食べ方や日本のお米に合うサイズ、味付けで歓迎されている「サバ缶」は、ベトナムで大ヒットした結果、日本でも輸入して食べられるようになったのでしょうか?



畳表も、電気自動車(バッテリー除く)も、サバ缶も、全て元々、日本で現地調達と自力供給が可能だった品目です。

そして全て、「海外で先にヒットした」という事実はなく、「日本人がその良さを忘れて買わなくなった」という事実もありません。

全ては、日本人の自損型輸入業者が、安い人件費と製造コストを武器に実現させた「低価格」による国内シェア獲得を目的に海外で作らせ、日本で輸入販売(自損型輸入)して広がった品目です。



このように、逆輸入は、自損型輸入とは全く異なる概念であり、輸入手法です。



自著『コスパ病』にも記しましたが、私が「自損型輸入」という言葉を創ったのは、日本特有の自国とその国民を貧しくしていく輸入手法を特定する言葉がなかったからでした。

問題の本質を掴む重要なポイントだと思いますので、日本経済を蝕む『自損型輸入』について、より深い理解へと繋がれば幸いです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?