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研究成果の社会還元! 若手研究者向け「Science For Society」活動

近年、研究者の皆さんの中にも、研究成果を社会に還元するということに興味を持たれている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

JSTがCREST・さきがけに参加している若手研究者へ提供しているScience For Society(SciFoS:サイフォス)という活動は、このような興味を持っている方のほか、以下のようなお悩みを抱える方にもお勧めのプログラムです。

・社会実装を意識するようにアドバイスを受けたが、まず何から始めれば良いか分からない
・アカデミアとは違った視点から自分の研究活動を見つめ直したい
・企業とのつながりを持ってみたいがなかなか持てない

SciFoSとは

SciFoSは、CREST・さきがけを実施している若手研究者が、自身の研究成果が「どのような社会的価値を創造し、またどのような社会的ニーズを満たすものなのか」ということについて価値仮説を立て、実際に研究(室)外部の複数の企業・自治体・研究機関・個人などにインタビューをすることにより、その仮説を検証し、自身の研究のあり方や方向性(出口)を見直すための活動です。

SciFoSは、アメリカ国立科学財団(NSF:National Science Foundation)が提供しているI-Corps™(Innovation Corps)というプログラムを参考にJSTでアレンジを加えて、2013年度から実施している活動です。これまで延べ150名以上が参加しました。現在でもCRESTの研究担当者や研究参加者、さきがけ個人研究者を対象に、広く参加者を募っています。

SciFoSの流れ

はじめの一歩「価値仮説の構築」

はじめの一歩として、SciFoS参加者には「価値仮説シート」(下図)の作成をお願いしています。自分の研究成果を整理し、それを「ほしい!」と思ってくれるインタビュー先の候補を絞り込むことが目的です。

価値仮説シートの作成を通して、SciFoS参加者の研究成果を求める”切実なニーズ”を想定

ここで重要なのは、想定するニーズを「インタビュー先のやりたいこと」から少し掘り下げて、「インタビュー先が実現したい、しかし実現できずに困っていること」と考えることです。

より切実なニーズを想定することができれば、今後、ニーズを満たすために新たに必要となる研究内容の絞り込み・方向性の決定もスムーズになりますし、研究成果の価値や、独自性・優位性をインタビュー先にアピールする強みにもなるでしょう。

活動は半年間

参加者が価値仮説を立てると、いよいよ半年間のSciFoSがスタートします。具体的には以下の4つの取り組みを実施します。

(a)キックオフ会議:SciFoS専門アドバイザーの指導のもと、参加者の研究がどのような社会的ニーズを満たすか整理します(=価値仮説のブラッシュアップ)。
(b)インタビュー先選定:個別に参加者とヒアリングを行い、具体的なインタビュー先候補を決定します。
(c)インタビュー活動:企業等(3社程度)へのインタビュー(対面またはオンライン)を参加者自身が実施します。 
(d)活動報告会:参加者間で、インタビュー結果やインタビューの中で得られた気づきを共有します。また、専門アドバイザーが今後に向けてのアドバイスをします。

SciFoSの活動サイクル

SciFoSは半年間という限られた時間での活動であるため、上図のサイクルを1度だけ回すことになります。SciFoSを通してサイクルを回す方法を身につけていただき、SciFoS終了後も、価値仮説検証を継続していただきたいと考えています。

SciFoSを支える体制

SciFoSの活動をより有意義なものとするために、SciFoS専門アドバイザーとインタビュー先を調整する専門業者にご協力いただいています。

SciFoS専門アドバイザーとして、ベンチャーキャピタルにご所属の2名の方に参加いただいています。この活動を実施する上でのポイントや考え方などについての参加者向けのレクチャーを行っていただくとともに、参加者の立てた価値仮説に個別のアドバイスをしていただきます。

SciFoS専門アドバイザー (左)飯野いいの将人まさと様 (右)つつみ孝志たかし

そして、実際のインタビュー先を選定し、アポイントメントをとるために、専門の業者にもご協力いただいています。参加者との個別ヒアリングを実施して、最適なインタビュー先について話し合い、参加者が納得した上でインタビュー先を決定できるよう、支援していただいています。

参加者の声

多くの参加者の皆さまから、大変だったけれども良い経験になったというコメントをいただいておりますので、ここでその一部を紹介いたします。

・基礎研究と社会実装の視点の違いに驚いた。特に社会実装ではエンドユーザーを意識する点を今後に役立てたい
・これまでに経験のない角度から自らの研究の意義を見つめ直すきっかけとなった
・自分自身の考えとインタビュー結果(社会的な価値)とのズレを客観視するうえで、考えを文字にして整理することは非常に重要であると感じた
・自分ではコンタクトできないような多様なインタビュー先を紹介していただき、よい経験になった
・SciFoSで出会った企業と共同研究開発に発展している
・SciFoSを通して、これまで興味のなかった起業活動に取り組むようになった

おわりに

SciFoS活動の結果、新しい研究のテーマを見つけるのも、共同研究先を見つけるのも、研究成果の技術移転を目指すのも、あるいは起業に向けた準備を進めるのも、この経験をどう活用するのかは参加者の皆さん次第です。

SciFoSは半年間の短い活動ですが、CRESTやさきがけで研究を実施している多くの若手研究者に参加していただき、ここで学んだ考え方や経験を、今後の研究者人生に様々な形で長く活かしていただくことを願っています。

過去のSciFoSの活動報告書は以下のウェブサイトからご覧いただけます。
・SciFoS活動報告書:https://www.jst.go.jp/kisoken/presto/research/scifos.html