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『世の中に悪い人はいない』

『世の中に悪い人はいない』
ウォン・ジェフンさん(KADOKAWA)

この前に読んだ本からの頭の切り替えがうまくいってなかったのか、読み始めはなかなか内容が頭に入ってこなかったのだけど、読み進めるうちにじわじわ効いてきた。
傷つけたり傷つけられたり、勝手に傷ついたりと生きているだけで何かしらの傷が生じるのが人間。
帯にもあるように不思議な話がちょこちょこと。表題作はSFちっくなファンタジー。
このタイトルそういう意味だったの?!ってなったわー。でも、そうだね、“ニンゲン”が牛耳ってる世界はほんとに……

人との付き合いの中で嫌なこととか辛いこととかあると、ひとまず心の奥底にしまって蓋をする。
いつの日かそのことを思い出した時に、まだ傷が疼くか、思い出として終わらせられるか。
それは内容によってだったり、人によって違うものだから自分自身の心と向き合いながら癒していくしかない。
その傷の治療に直接の効果はなくとも、他の人の温かな優しさに触れることで治癒能力が高まることはあるよね、と思う。
ラストの『猫の傷』も「え!そういう意味〜!!」ってなるし、とにかく各話のタイトルが秀逸。

読み進めるほどにじんわりと効いてくる、デポ剤みたいな短編集。

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