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社員のモチベーション向上で見落としがちな世代別の対応策

従業員の仕事に対するモチベーションを上げるためには、目標設定やコミュニケーションの円滑化、本人の希望をふまえた配属や人事評価の公平性・透明性が重要です。一方で20-30代前半の若手と、35歳以降の中堅・ベテラン層とでは、モチベーションを高める要素が異なります。

今回は、企業において見落とされがちな、ミドル層のモチベーション向上策について考えてみます。

目標あってこそのモチベーション

はじめに、モチベーションそのものについて触れておきます。モチベーションとは、「目標に向かって努力し、その達成を目ざそうとする意欲を意味する」(MM総研のコラムより)と定義されています。

つまり、企業で働く人にとって具体的な目標があってこそ、モチベーションが高まるということです。上司らが「やる気を出そう」「頑張ろう」などと励ますよりも、上司が目標達成に向けた仕事の進め方をアドバイスしたり、部下と一緒に考えたりすることの方が有効だと考えられます。

心理学者のピンダーは、仕事に対するモチベーションについて、「個人の内部および外部にその源をもつ一連の活力の集合体である」と定義しています。自分以外の何かにより生まれるモチベーションのことを、「外発的動機づけ」といいます。

モチベーションについてもっと詳しく知りたい方は、「モチベーションとは何か?生産性の向上に役立つ事例や、関連書籍、企業の取り組み」を参考にしてください。

なぜ世代ごとのモチベーション向上策が必要なのか

次に、社員のモチベーション向上において、世代に応じた施策が必要な理由を説明していきます。若手社員や中間管理職、ベテランといった階層によって社員のモチベーションに関わる要因が異なることは、政府や大学などによる各種調査によって分かっています。

20代と40代で変わるモチベーション要因

厚生労働省の「平成30年版 労働経済の分析」は、働く人のモチベーションについて調べています。同分析によりますと、課長は年代を通じて「仕事の楽しさ」がモチベーションの向上をもたらしているといいます。

一方で20代は、「仕事の取り組み自体が楽しく、次第にビジネスや事業に携わる感覚や仕事の面白さ・ユニークさを経験し、40代後半以降も 『仕事の楽しさ』がモチベーションを維持・向上させていた」(平成30年版 労働経済の分析)と指摘しています。

医薬の研究や安全管理に従事していた別の人は、「20代は好き勝手に利益も考えず、(中略)実験してみたいことをやるなど、仕事に取り組んでいること自体が楽しく、満足していた」(同分析より)そうです。

その人は40代後半になっても、仕事の楽しさが仕事のモチベーション向上につながっていましたが,若いメンバーと仕事をする楽しさが加わっていたといいます。仕事自体の楽しさは、全世代で社員の働きがいにつながっていますが、ベテランになるとメンバーとともに働くという新たな喜びも得られることが分かります。

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出所:厚生労働省「平成30年版 労働経済の分析 -働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について-」

課長は自分なりの工夫が生きがいに!?

企業では一般的に30代半ば以降になると、課長職につく人が増えてきます。課長職クラスになると、仕事の進め方を自分なりのやり方に変えたり、プロセスを改善したりすることで、モチベーションが向上する傾向があります。

香川大学の研究論文は、「担当課長は,比較的幅広い年代で「達成」すること、「顧客ニーズ」に応え続けることがワークモチベーション向上をもたらしている」と分析しています。

さらに、「顧客ニーズに沿った提案をしてワークモチベーションを向上し続けるには、ルーティンに仕事するだけでなく、自分なりの工夫やアレンジ、プロセス改善といった『主体的ジョブデザイン』によってワークモチベーションが向上する経験が下支えしている」ともいいます。

20代から30代前半までは、いわば「自分の好き勝手に仕事をする」というスタイルであったものが、30代後半以降は顧客志向になっていく傾向もみられます。課長職クラスになると、顧客の声に耳を傾けるうちに、新たな提案が浮かび、顧客自身も気がつかなかったような潜在ニーズを掘り起こすことで充実感を得ています。

また、「プロジェクトマネジメント力を発揮してワークモチベーションを向上させるには,一人だけの力ではなしえず、他者との関係性、すなわち『多様な人間関係の構築』や『社内外からの信頼』によるワークモチベーション向上が影響している(同論文より)とも考えられます。

まとめ

プラスアルファ・コンサルティングが40代以降の正社員を対象に行った調査では、約44%が仕事への働きがいを感じていることが分かりました。働きがいを感じる理由として、自分の裁量で行える仕事が多いことや、会社の事業が社会に貢献していることが実感できることなどが挙がっています。

これとは反対に、調査への回答者の約28%は自身の長年のキャリアが活かせず、やりがいのない仕事によりモチベーションが低下しているとの結果も出ました。モチベーションが低下しているのは、「給与が安く、昇給もほとんどないため」「誰にでもできる簡単な仕事」「長年積んできたキャリアを活かせない部署にいる」などの理由からです。

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出所:株式会社プラスアルファ・コンサルティング「ミドル以降の世代の働きがいとモチベーション実態調査」

同調査では、有効回答数の約25%が、モチベーションを自ら上げるために「スキルアップ」に取り組んでいると回答しました。この結果から、スキルアップを目指すのは若手社員だと考えられがちですが、40代以上でもスキルアップ志向の社員は一定数いることが裏付けられました。

さらに40代以上のミドル社員は自分の成果だけでなく、仕事を通じて社会やチームに貢献することで充実感が得られることが、これまで紹介した各種調査から分かってきました。

厚生労働省などの調査によりますと、社員のモチベーションを押し下げている要因として、キャリアを活かせない仕事についていることや評価の不公平感、経営方針への納得感のなさなどが指摘されています。さらに、経営側と従業員の間のコミュケーションの悪さも一因にあると考えられます。

先に紹介したように、ミドル層は同じ部署のメンバーなど他者との関係性がモチベーションに影響しています。特にミドル層では自分の関わる仕事や会社そのものが、社会に役立っているという実感を味わうことによって、従業員エンゲージメントが高まることも期待できます。

従業員エンゲージメントは、従業員が会社の方向性に共感を持ち自発的に貢献しようとする意欲を指します。経営側が企業理念の社員への浸透を図り、ミドル層を含めた社員とのコミュニケーションを改善することにより、社員のモチベーション向上だけでなく従業員エンゲージメントの向上にもつながるでしょう。

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※本記事は、PULSE AIメディアのコラムの転載となります。

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