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子供部屋を独房にしない

日本の現代住宅設計の第一人者である宮脇檀氏とその研究室が20年の軌跡をまとめた「宮脇檀の住宅設計テキスト」(宮脇檀建築研究室筆)より表題のテーマについて引用・記述します。


 動物は明らかにその巣を子供のためにつくる。育児のためにつくられた動物の巣に対して、人間の住居はそれほど単純ではない。しかし家をつくる動機の多くが子供の受験等に理由をつけているところを見ると、子供に子供室を与えて、そこでゆっくり勉強をさせたい、または個性を涵養(かんよう)させたいというのは、一般の親の希望であるように見える。
 けれども、さまざまな調査が示しているように、子供会地は本当に閉ざされた子供部屋で幸せに勉強しているのだろうか。幼児たちは、まずとざされた子供室が嫌いである。そんなところに押し込められるよりは、家族がたくさんいるおこたや食卓のところにいたいし、宿題だって、幼児の時期の宿題はそんな所で十分である。
 本当に勉強部屋としての子供室が必要になるのは大学受験を控えた高校時代以外にないといってもいいのではないか。だとすると、子供が勉強もしない子供室をつくって無理やり独房ふうに押し込めておくことは、親の勝手な思い入れであって、子供たちにとっては迷惑至極のこと。ある時期までは子ど部屋をクローズしないでオープンにし、他の生活空間と一体化してつくっておく方法、そしてこどもが成長するに従って、その仕切り方を相談しながら決めていく方法が今のところ最良の答えであると考えている。
(宮脇檀)


20年以上前の記述と思われる内容だが、よくわかる。現代では子供は居間で勉強することが多いと言って、子供用の勉強スペースをキッチンの一角やリビングの一角に計画することが流行っている。弊社ではこの宮脇檀氏の残した考えを参考にして「錦糸町のリノベーション」をデザインした。

錦糸町のリノベーション「家族の机」

 家族の机と名付けたこの場所は、3人兄弟が並び、それぞれの成長に合った場所に陣取り家族の一体感をもって勉強する空間とした。なぜ「家族」と名付けたかというと、一部の子供用の机の対面に「父の机スペース」があり、同じ天板でつながっているからだ。父が読書家であることから大量の蔵書があり、その本棚も家族にオープンにした計画である。たくさんに刺激を感じながら兄弟が親子としての関係を築き上げながら成長していくシーンをイメージした。
 「子供は放っておいても育つ」…そんな言葉を耳にしたことがある。しかし子を押し込めて、洗脳するように親の価値観を押し付ける孤独な子供部屋は今の時代では誰も望んでいないことだろう。子が放っておいても育つのは、放す環境が子を育てるからだといえる。私達建築家はそういう「環境」を整備することが問われていると思えてならない。
(白井純平)


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