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【全用途】見ておくべき物件ポイント(保存版)

テナント探しは出店のとても重要なフェーズです。立地条件、契約条件、設備条件、造作譲渡の条件などたくさんの条件をクリアし、ご納得いただいたテナントで出店をされることでしょう。特に居抜きの場合は造作譲渡や、既存サービス動線計画がどうなるか等が気になることでしょう。ここではいくつか段階を追ってテナント探しのポイントをまとめていきます。

これらの条件は一般的なものであり、具体的な店舗の業態やコンセプト、目的によってさらに細かな条件が存在するかもしれません。テナント探しの際には、ニーズやビジネス計画に合致する条件を重視することが重要です。


①エリア環境条件

住宅街の代名詞スクールゾーンとビールがアイコンの飲食店通りのエリア
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

人通り

路面店と空中階店舗(通りよりも高い上階の店舗で階段やエレベーター等でアクセスする)ではその家賃帯が路面店の方が高い傾向にあるように、フラッと訪れる客数が異なります。しかし昨今ではSNSや集客サイトなどにより目的となる店舗に直接訪れる客が多いと考えられています。特に目的意識のある客はトレンドやニーズを読み解くことで、店側が積極的な販売促進活動を行うことで路面店である必要が薄れることがあります。それでも人通りの多いエリアに出店することは、高い集客性につながりやすいため、人通りの多いかどうかは、ターゲットとしているエリアの中でも気になるところです。

アクセスビリティ

最寄り駅やバス停からのアクセス、駐車場の有無は大変重要なテナント条件となります。中央市街地での出店であれば公共交通機関が整備されている可能性が高く、駅やバス停から徒歩圏内でアクセス性のよい立地条件はもはや必須条件といっても良いくらい重要です。地方都市では車社会であるケースが多く、駐車場の有無といった車のアクセスビリティを検討することが重要です。近隣コインパーキングとの提携など戦略的に駐車スペースを確保していくことは遠方からの集客につながることが期待されます。地方都市では「駐車場がある」ということをSNSや集客サイトにしっかりと明記するとよいでしょう。

周辺競合店と、その相乗効果

類似する競合店のいない条件で、エリア内の人通りをすべての集客ターゲットの来店を目指すのが最初に思いつく戦略です。自身の店舗が目的店となるのが理想ですが、周辺の競合店からの流入客や、エリアの特性を期待して利用される客も存在します。例えばコーヒー店が集まっているエリアがあれば、「あの辺に行けば喫茶店があるだろう」という考えだけで一定の集客性が期待できます。競合店で有名店があり長蛇の列を作っていれば、あきらめて周辺店に入店する人もいることでしょう。こうした周辺店舗との相乗効果を生み出し、地域を活性化できるとよいでしょう。類似の飲食店が集まることで食べ歩きや飲み比べ需要を喚起し、顧客にとって魅力的な選択肢になります。近隣の関連施設の存在は集客や売り上げ増加に貢献するだけでなく、ビジネスの認知度や競争力の向上にも寄与します。

周辺関連施設

顧客の立ち寄りや需要を引き寄せる関連施設が近隣にあるとよいでしょう。例えばスポーツジムの近隣に健康的な低糖質スムージーバーなどは集客力が高いと考えられます。オフィスビルであれば日中のランチ需要なども期待できます。また、エンターテインメント施設や観光地の近くであれば、イベント客の流入や休暇季節などの需要が得られます。

②建物条件

テナント工事のイメージ
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

面積と間取り(内形寸法)

テナント面積と間取りは大変重要な条件です。例えば面積が30坪あったとし、間口がたったの4mだとしたら24.75mも奥に長い「うなぎの寝床」と呼ばれるかなり特殊な間取りとなります。客席や厨房のバランス配置などにも影響するため本当に必要な内装計画ができるか、入念に検討する必要があります。多くの新店舗クライアントは契約前にデザイナーを連れて内見し、簡易的に測量してもらい客席数の当たりをつけたりします。

建物の構造種別

建物には耐火性能という評価があります。比較的木造建築物の方が鉄骨造や鉄筋コンクリート造より耐火性能の低い建物が多いです。ただし法令によっては木造を選ばないほうがよいケースもあります。例えば飲食店の場合、消防法の耐火性能要求によってコンクリートブロックで厨房の火の元を簡易的に区画するように消防署から求められることがあります。また外壁にラスモルタルという仕上げを使っている木造の場合、漏電遮断ブレーカーを建物全体に設置するよう指導を受ける場合があります。こうした条件を整理しつつ、建物のどこに出費が必要かテナント契約時に検討がついているとよいでしょう。

分電盤と容量

現代のテナントで電気が通っていないものはほぼありません。しかし電気にはいくつかの分類と容量があり、それぞれに適した設備にて内装設計が行われます。容量不足であった場合は電力供給会社にお問合せいただければ、引き込み可能最大容量まで随時調整が可能です。業務用の動力を要する機材を使う場合は動力引き込みの有無を確認することで、電気引き込み工事が生じるか判定できます。

建物の衛生面

例えば上下階のテナントが不衛生な状態な場合、虫害や獣害などの被害を受ける場合もあります。また最上階で漏水被害があり断続的に雨水の漏水などがあればカビの被害などもありえます。こうした自身の店舗計画でない与条件により厳しい立場に立たされるような物件は選んではいけません。

③契約条件

元々マンションのベランダだったテナントスペースを活用した半個室
©(株)白井一級建築士事務所/SHIRAI ARCHITECTS

所有区分と工事区分

テナントとして入居する際、どこまでが所有資産なのかを整理しておくとよいでしょう。例えば、テナントビルで元々マンションだった場合、元々バルコニーだった範囲が屋内化されているなどというケースもあります。その場合バルコニーの窓廻りの壁が外壁として中に隠蔽されていることがあります。こうしたケースでは解体できない壁となる場合があります。
排水量が増える利用法の場合も注意が必要です。不純物(例えば毛や油汚れ)が流れる排水の場合、配管詰まりも発生しやすくなります。トラップなどを設け、適切に清掃し他区画へ迷惑のかからない運営をしましょう。

内装及び造作譲渡

居ぬき店舗の場合、内装や造作物の譲渡契約を交わすことがあります。居ぬき店舗は同一用途であれば初期投資額が抑えられ工期も短縮され出店しやすくなります。
造作譲渡契約は丁寧に交わしましょう。例えば以前の所有者がどのような使い方をしていたかわかりません。譲渡された設備が壊れていたとしても、自己責任で修繕することもあります。

新店舗をご検討される方の中には専門家(デザイナーや業者)を連れていく人もいます。100%のリスク回避ができるとはいえませんが、大きなリスクは回避しやすくなります。

以下のリンクに専門家に相談する際に契約に進みやすくなる調査ポイントまとめています。気になる方はご参照ください。

こうした内装や造作は固定資産となるため、事前に税理士と会計処理の方法を確認しておくとよいでしょう。また、造作譲渡契約に含まれていない内容物が残置される場合後々のトラブルに発展する場合があります。しっかりと数量の確認をされるとよいでしょう。

まとめ

簡単に物件探し時に見ておくべきポイントをまとめました。これらは一般的なもので、必ずしもすべての要件を満たすものではありません。
こうしたテナント探しに積極的に助言してもらえるデザイナーが大勢います。新店舗をつくる上で有力なパートナーとなるデザイナーを探されるが一番の保険かもしれません。

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