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秋と私

夏が終わり、1年間の研修生制度も後半戦に入ります。

外部実習から戻った私たち研修生は何倍もパワーアップして・・・ということもなくいつも通りの研修を受けていました。

変わったことといえば、同期の1人が9月に研修生を辞めたこと。色々と理由はあったようですが、約半年間ともに切磋琢磨してきたムードメーカー的存在の仲間が離れることは少なからず私の心に強いパンチを食らわせてきました。

第3期研修生

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この写真がセンターのどこかに掲示されてるとかされていないとか・・・



この時期には補助犬学会への初参加もあります。

皆さんご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、日本身体障害者補助犬学会学術大会・シンポジウムは日本でも人と動物(犬)の両方に関わる珍しい学会と言われています。


日本介助犬協会の研修生はカリキュラムの中に学会発表が含まれており、自分たちで研究テーマを考えます。抄録作成からポスター発表、演題発表資料の作成など1年間でも大変大きなイベントの一つとなっています。

私たち第3期研修生が考えた研究テーマは2つ。

「犬舎内環境における犬の敷物の嗜好性について」(正確なタイトルはすみません覚えていないです)

「介助犬の認知度調査」(同上、すみません)

夜な夜なみんなで話し合ったり、検証をしたりしながらポスター発表の準備をしました。

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当日の準備の様子

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開催施設の見学(うろうろしているのを撮られてました)



この時期に私にはもう一つの苦難がやってきます。

それは生活をするためのお金がなくなっていくということでした。研修生制度は授業料は一切かからないですがお給料もありません。目的は人材育成であり、それは学校に近いと思います。

他のメンバーとは違い、半ば衝動的に飛び込んだ私には貯金もほとんどなく、研修に通うための定期代や生活費、夏の外部実習などであっという間に文無しになっていきました。当然自分の計画が原因だったのですが、お財布に100円とか300円しか入っていない日もあったりで「今日はこれで何が食べられるかな」と考えながら過ごす日々・・・


アルバイトと研修の両立

苦しくなってきた私はアルバイトを始めることにしました。以前にも書きましたが研修生制度は週4日間。残りの3日間でアルバイトをして生活費を少しでも稼ごうと思い、どうせやるなら今学んでいる福祉に関わるものにしようと地元の介護入浴サポートのアルバイトを始めました。収入は微々たるものですが、お財布に数百円という厳しさよりは少しは良いはずです。


この頃から研修はさらに忙しさを増してきます。日々の犬たちの管理だけでなく、座学スケジュールも増え、もちろん報告書の数も増えますね。トレーニングレッスンのレベルもだいぶ上がってきて、介助動作の練習も始まります。

それまでの基礎動作とはレベルも段違い。例えば、Sit(座る)のような一つの動作ではなく、いくつかの動作を合わせて(Pull(引っ張る)+Take(取る)+Push(押す)+Give(渡す)=冷蔵庫からペットボトルを持ってくるなど)一つの号令になるようなものもあります。

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冷蔵庫から飲み物を持ってくる練習中

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靴を脱がせるお手伝いの練習中

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発券機からチケットを取る動きを教えている篠崎さん


毎週の研修時間だけではやりきれず、休みの日にも自主的に出てきて練習をする研修生もいました。しかし、アルバイトを始めた私にはそれが出来ませんでした。

他の研修生と私の差が顕著に現れたのは定期試験でした。12月の実技試験では明らかに他メンバーより完成度が低く、完成には程遠い状態で試験に臨みました。「どのようにトレーニングをしたのか?」という職員の問いも、圧倒的に努力が足りていない私には答えることが出来ませんでした。

筆記試験ではおそらくこれまでのどの研修生よりも低い点数をとる結果になりました。4月、9月の定期試験よりは難易度が上がっているとはいえ、50点〜80点を他の仲間たちがとっている中、私の26点という点数は職員の皆さんを大変失望させたのではないかと思います。


自分と向き合う秋

落ち込んだり精神的なバランスが崩れると、楽しかった研修が急に重く感じます。高尾駅から日本介助犬協会の施設までは長いけやき並木があり、秋には美しい紅葉の道を作り出します。しかし、私にはそれを感じる余裕はなく本当にこのまま研修を続けていくことは自分にとって良いことなのだろうかと悩みながら毎日歩いていました。

無題

1年間通った懐かしい道です(Google mapより)


先輩職員からは「他の研修生は休みの日にも自主練習に来て頑張っているのに、遠藤くんにはなぜそれが出来ないの?」「その姿勢は犬たちに失礼だと思わないか」というコメントもいただいたことがありましたが、理由は言い訳でしかなく言えないと思っていました。行き場のない気持ちは行き場のないまま飲み込みます。


そして12月末に面談が行われました。

この面談は研修生である私たちに、翌年からの職員採用が発表されるとても重要な面談でした。



今回はここまでです。研修内容というよりは私自身のストーリーがメインになってしまいましたが、秋は多くの研修生が悩み立ち止まる時期でもあります。研修生を辞めていく者も入れば、泣きながら一歩踏み出す者もいたり、研修内容よりも自分と向き合う時期だと思い、このように書きました。

職員の多くは悩み、しゃがんでは立ち上がって、倒れては起き上がって進んできた人たちです。


ではまた次のお話で。

介助犬1組の育成には240万円~300万円ほど費用がかかります。 みなさまのご支援をよろしくお願いします!