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2020インフラ健康診断書(道路部門・路面(舗装))

土木学会事務局です。

土木学会では2016年度より、「インフラ健康診断」の取り組みを行っています。これは、土木学会が第三者機関として、橋やトンネル、上下水道などの社会インフラの健康診断を行い、その結果を公表し、解説することにより、社会インフラの現状を広く国民の皆さまにご理解いただき、社会インフラの維持管理・更新の重要性や課題を認識してもらうことを目的としています。

今回は2020年度の健康診断結果から、「道路部門(路面(舗装))」の健康診断結果と健康状態の維持向上のための処方箋をご紹介いたします。

診断結果は、健康度(現在の状態)がC(要注意)で、維持管理体制(維持あるいは回復するための日常の行動)が、下向き(現状の管理体制が改善されない限り、健康状態が悪くなる可能性がある状況)とされました。

以下、「道路部門(路面(舗装))」の健康診断結果を解説いたします。

路面(舗装)の特徴

日本の道路舗装は、総延長約100 万km、総面積約5,400km2(車道)に及び、その舗装の95%がアスファルト舗装となっています。

路面を構成する舗装は、車両走行に伴う交通荷重を直接かつ繰り返し受けることから損傷が進行します。また、一般地域あるいは積雪寒冷地域での気象条件の違いによって、その損傷の形態も異なります。

したがって、路面と舗装の状態を適宜把握しながら必要な管理行為を適切に実施していく必要があり、その路面の損傷は利用者の安全性や快適性に直接的に多大な影響を及ぼします。適切な維持管理によりサービス性能を良好な状態で維持することが重要です。

現状の健康状態

道路舗装の健康状態は、2013 年から2019 年の7 年間の中で実施され、公表あるいはアンケート調査による点検結果(舗装点検要領による路面の健全性や路面性状のひび割れおよびわだち掘れ深さ)を基に、各道路管理者が実施した点検の延長に対して修繕が必要と判定した延長の割合によって評価しています。その結果は管理者ごとで異なり、国および都道府県・政令指定都市の道路舗装の修繕が必要と判定した延長の割合はそれぞれ19%および16%程度で、その健康度は「C」、市区町村の延長は20%を超えており、その健康度は「D」、走行速度が速く、高い走行安全性が求められる都市内および都市間の高速道路の修繕が必要と判定した延長は7%程度で、他の道路よりも厳しい基準で評価したその健全度は「B」で、全体の平均では「C」となりました。

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道路舗装は、走行速度や道路の重要度によって管理値が異なりますが、国、都道府県・政令指定都市および市区町村管理の道路には望ましい管理水準を満足していない道路もあります。特に、市区町村管理の道路については、さらなる健康度の改善が望まれます。なお、都道府県・政令指定都市・市区町村管理の道路は、全道路延長の約97%に及びますが、点検結果の公表が一部の管理者に限られており、今後の点検結果の公表が望まれます。

維持管理体制

国や都道府県・政令指定都市および市区町村管理の道路は、舗装点検要領が制定されたこともあり、点検・診断・措置・記録を行うメンテナンスサイクルが構築され実行され始めています。しかしながら、多くの管理者においては、舗装の長寿命化修繕計画(個別施設計画)などが策定されていると考えられますが、その計画の公表は、点検結果の公表と同様に一部の管理者に限られています。高速道路株式会社管理の道路は、路面の点検結果と損傷箇所の補修延長の公表など維持管理体制がよい状況になっています。

一方、都道府県・政令指定都市へのアンケート調査の回答では、維持管理体制に係わる維持管理計画の策定などのほかに、舗装に関する予算削減の影響において、80%以上の管理者で修繕箇所の先送りや苦情件数の増加など、現状の健康度を維持することが年々難しい状況になっていることがうかがえる結果となっています。また、点検結果を保管するデータベースは、約65% 程度の管理者で導入されていますが、点検結果の経年変化などを的確に比較・検討することで予防的な管理にもつながることから、データベースもより多くの管理者に導入が望まれます。これらの結果は、市区町村の管理者においても同様な状況にあると推測されます。

修繕などの措置が適切に行われなければ、舗装の健康状態が今後改善に向かうことが難しい状況になることから、維持管理体制は下向き評価になりました。

路面(舗装)の健康度の維持・向上のための処方箋

道路管理者は、舗装長寿命化計画あるいは舗装維持修繕計画を、長期的な予算や体制も含めて全ての管理者において作成し、公開するとともに、計画通りに実行する。

道路管理者は、舗装点検要領に準拠して維持管理するときは管理する道路を損傷の進行程度や重要度によって分類し、各分類した道路あるいは路線ごとに使用目標年数と適切な管理水準を設定する。

道路管理者および点検実施者は、路線の重要度などを考慮して舗装路面を目視あるいは計測機器による方法を適切に選択して点検する。

道路管理者および点検実施者は、点検によって舗装路面の健全性を診断し、必要に応じて行う路盤などの詳細調査の方法と構造の評価方法を理解しておく必要がある。

道路管理者は、舗装の長寿命化に向けて、路盤以下の構造的な健全性が失われないよう、予防的な措置も含め損傷箇所の適切な修繕を行う。

健康診断書の解説動画

土木学会では2020年6月16日にインフラ健康診断書の結果を受けて講習会を開催しました。道路部門(舗装)の診断結果の解説動画(約9分)を以下でご覧頂けますので、あわせてご覧下さい。

インフラメンテナンス総合委員会

現在土木学会では、インフラメンテナンスを力強くなおかつ恒常的に位置づけるため、既存の関連委員会を発展的に統合し、会長を委員長とする「インフラメンテナンス総合委員会」を2020年度から常設し、活動を推進しています。活動予定など、最新情報は以下のサイトでご確認ください。

インフラメンテナンス技術(舗装)講習会(2021年2月9日・オンライン)

土木学会インフラメンテナンス総合委員会アクティビティ部会並びにインフラメンテナンス国民会議北海道フォーラムでは、このたび地方自治体への支援活動の一環として、道路舗装を主な題材としたインフラメンテナンスの最新の知見を学ぶ「講演会」、舗装を中心に各自治体の悩みに直接答える「出前講座」を組み合わせた『インフラメンテナンス技術(舗装)講習会』を、北海道地域を対象に開催する運びとなりました。

本講習会は北海道内の市町村職員を主な対象としておりますが、積雪寒冷地域の地方自治体の舗装インフラ管理に様々な立場で携わる方々に対しても参考となる講習内容となっておりますので、多くの方のご参加をお待ちしております。

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国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/