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社会と土木の100年ビジョン-まえがき

本noteは、土木学会創立100周年にあたって2014(平成26)年11月14日に公表した「社会と土木の100年ビジョン-あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く-」の本文を転載したものです。記述内容は公表時点の情報に基づくものとなっております。

1914年に創立された土木学会は、今年(2014年)100周年を迎えることとなった。今年は支部から始まって本部まで様々な記念事業が盛大に行われている。その記念事業の一つとして100年にわたる土木学会のこれまでを振り返り、これからの100年を見通したビジョンを作成することとした。それを取りまとめたものがこの「社会と土木の100年ビジョン-あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く-」である。

本ビジョンの策定作業は別掲の土木学会将来ビジョン策定特別委員会によって行われたものであるが、完成までの過程において、若手土木技術者が合宿ワークショップや支部「若手交流サロン」で議論し、学会内の各支部・調査研究委員会や外部の有識者から意見をいただき、理事会において概要段階から完成段階の各段階で議論いただいたものであり、最後にはパブリックコメントもいただいた。

前半の記述でわかるとおり、土木学会の100 年は日本の近代土木とともに芽吹き、成長し、それとともに環境問題を始めとする社会の歪みに対処してきたと言ってよい。今や、日本の土木技術は世界のトップランナーであると言える。都市、鉄道、道路、港湾、空港や治水、治山、上下水道、電力供給、耐風、耐震、耐津波、耐波浪の諸技術、それらを構成するダム、橋梁、トンネルなど、土木施設の計画から建設、維持更新に至るまでの諸技術を世界一流のレベルに発展させてきた。しかし、同時に国内外の社会では人口、経済、資源、環境などの諸問題が発生し、これらへの対処にも追われることとなった。

そして、将来はこれらの諸問題を当初から組み込んだ土木工学の発展が不可欠である。それが「持続可能な社会の礎を築く」に込められており、それを実現するためには総合工学として、狭い土木の範囲に閉じこもらずに「あらゆる境界をひらき」周辺分野と連携し、取り込む必要がある。

このような視点から、土木が関係するそれぞれの部門の具体的な方向性をとりまとめたのが後半である。その中で、土木技術者の役割や、土木学会の役割が書かれている。目指すすがたは、豊かな国民生活、経済活動を支える美しく、安全で、いきいきした国土である。

この100年ビジョンは、将来の土木技術者および土木学会の向かうべき方向、北極星のように不動の目標を示すものにしたいと試みたものである。これが土木学会100周年宣言の基となっている。このビジョンと宣言の策定にあたって、上記に挙げた諸氏を含む関係者の方々には言い尽くせぬ貢献をいただいた。心から感謝申し上げる次第である。

平成26年11月14日

公益社団法人土木学会会長
土木学会将来ビジョン策定特別委員会委員長
磯部 雅彦


← 再掲の背景と目次

→  第1章「社会と土木の100年ビジョン」の位置づけ


百周年記念祝賀会で宣言を発表した際の磯部会長講演の全文を以下リンクでご覧いただけます。

その他、百周年関連事業の内容は以下リンクのアーカイブでご覧いただけます。


国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/