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社会と土木の100年ビジョン-第6章 土木学会の役割

本noteは、土木学会創立100周年にあたって2014(平成26)年11月14日に公表した「社会と土木の100年ビジョン-あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く-」の本文を転載したものです。記述内容は公表時点の情報に基づくものとなっております。

大学等教育機関で土木工学を学び、土木に関係する産、官、学における各主体の中で土木工学の知識、技術を活用して従業している技術者が集い、交流する場が土木学会という学術団体であり、また技術者協会である。このような性格を持つ土木学会は、社会と土木の関係、土木界の構成、土木技術者の就業状況などに鑑み、社会と土木技術者の利益のため次に示すような役割を担うべきと考えられる。
この役割を記述するには、土木学会の定款に規定されている目的や事業、また土木学会が2011年4 月に公益社団法人化されたときに行った公益事業の体系整理を参考にして行う。また、これまでに学会活動の中期計画として策定されたJSCE 2000JSCE 2005JSCE 2010 でもその役割が論じられているので、これらも参考とする。
定款にある目的は、「学会は、土木工学の進歩及び土木事業の発達並びに土木技術者の資質の向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与することを目的とする」とされていて、すなわち「土木工学の進歩及び土木事業の発達」を道具とし、またこれを使う「土木技術者の資質の向上を図る」ことを手段として、これらを活用して「学術文化の進展と社会の発展に寄与すること」を目的としていると解することができる。以下にこれら3 つを土木学会の役割として詳述する。

6.1 学術・技術の進歩への貢献

(1) 知識・技術の先端性、学際性、総合性の追求
• 土木工学の総合化による土木学へ
社会・経済活動の基盤となる各種施設・システムを構築し、運営する学問は現在土木工学と呼ばれており、工学の一分野と考えられているが、その必要とする内容からすると工学内には収まりきれないものを持つ。例えば、施設の計画時にはミクロ経済学を応用して費用便益分析が行われ、その妥当性が検討される。公共施設・システムの出現はその利用者など人々の行動や社会に影響を及ぼし、一方ではその人々、社会の価値観は多様化しており、この価値観に基づく社会の各種行動選択に配慮するなど社会学的な考慮も必要とされる。また、土木が構築する道路や河川、港湾、下水道などの多くは政府や地方公共団体などにより管理され、それは法令によって規定され、従って法律・行政の知識も必要とされる。さらに、土木が執行する公共事業は公的投資、雇用、生産、税源に影響を及ぼすマクロ経済学上の主役の一人であり、マクロ経済学の基礎的知識も備える必要がある。すなわち、公共施設・システムの構築・運営には従来の土木工学が教える工学的な知識・技術だけではなく、その投資、経済への影響、行政上の扱いも含む経済学、法学、社会学、行政の知識も含む総合的なものである。このような総合的な視野から現在の土木工学は今後「土木学」へと変貌していく必要がある。

(2) 知識・技術の事業への応用
土木の知識や技術はこれまで著しい発展を遂げてきたが、さらに発展させ社会に貢献するには、その実用において経済性や環境・社会への負荷などの考慮が不可欠であり、そのような分野の知識・技術も組み入れる必要がある。また、土木施設の機能向上・付加や景観性向上といった視点から土木構造物に情報機器等の設備や意匠性を取り入れることが今後の在り方として求められる。
また、土木技術が事業等で広く使用されるには、技術の有用性が客観的に保証されることが必要であり、土木学会は中立的な権威のある第三者機関としてその保有する技術評価制度により社会にとって有用な土木技術を評価し、その普及を図っていく。さらに、表彰制度により有用な技術の開発、社会への適用を表彰することによってこれらの行為を奨励する。

(3) 知識・技術の蓄積と活用
土木学会には100 年に及ぶ学会活動の成果が知の蓄積として、また会員、土木技術者、人類の知的財産として大量に存在しており、今後の多岐にわたる学会活動はさらにこの知的財産を拡大させ続けるであろう。この知識・技術の蓄積は活用されてこそ意味を持つものであり、そのため利用しやすい整理、見え方、形態にして保管し、例えばデジタルミュージアムのような広く会員、一般への閲覧に供していく方策を検討し、実施する。

6.2 社会・人類の発展への貢献

(1) 社会的課題への取り組み
①気候変動問題、インフラ老朽化問題、国土強靭化問題等の解決方策の提言
人口減少、少子高齢化、低成長経済、赤字化する貿易収支、恒常的な財政赤字、膨大な政府の債務残高などが示す厳しい社会経済情勢の中、気候変動問題やインフラ老朽化問題、国土強靭化問題など長期にわたって土木界も取り組まなければならない問題が多くみられ、従来の仕組みや制度の下では解決が容易でない様相を呈している。これら重要諸問題の解決に資する方策を新たな制度設計も含めて検討し、社会に提言する。

②日本社会と土木の未来像の提言
日本は現在先進国となって久しく、社会基盤施設も概ね整い、今後の社会の目標が必ずしも定まっていない状況のように見えるが、そこでは政府等の各種計画においてもかつてのような中長期的な経済計画や国土計画などは提示されていない。産官の各種主体においても中長期を見通した戦略的な投資が十分になされておらず、近視眼的な組織運営に終始しがちになってきている。このような状況は毎年の支出が国力、民力の蓄積に結びつかず、未来を生き抜く力を涵養する投資をしているとは言い難い。このような中、中長期的な日本社会、そしてその構築に貢献する土木の未来像や社会の諸制度を検討し、提言することは意義深いことである。

③災害緊急調査の実施
近年、気候変動や地殻変動の加速化、活発化に伴う風水害や土砂災害、地震、津波、火山噴火などの自然災害の規模、頻度が増加しており、これらによる社会経済的被害が拡大しつつある。このような背景において災害発生時に災害緊急調査団を関係学協会、国土交通省等と連携して被災地に派遣し、現地調査を行い、災害の原因・メカニズムを検討し、被災地の復旧・復興や今後の防災・減災対策に資する提言を行うことは重要であり、これを一層推進する。

(2) 国際貢献
①社会インフラシステムの海外移転、輸出
日本は先進国にまで発展したこれまでの過程で社会経済活動のあらゆる場面で、交通・通信システムや防災システム、利水システム、エネルギー供給システムなどといったハード、ソフトからなる各種の社会インフラシステムを整備、運営してきた。これらは国際的にみても極めて優れたサービス提供システムであり、これらを無償あるいは有償で広く海外に移転し、活用することは、世界的にみても各地域の発展や人類の福祉向上にとって望ましく、これを推進する。

②国内外の土木関係活動のシームレス化の推進
日本の土木技術が海外でもより広く活用され、日本の土木、土木技術者がより大きい国際貢献ができるように、学術活動、企業活動を国内外の区別なく円滑に行うために技術基準や公共調達方式、公共事業・業務の実施監理方法の国際調和等に関して環境整備を推進する。

③技術基準の国際調和
社会経済のグローバル化が加速する中、ヒト、モノ、カネの国際的移動、移転、流通が拡大しつつあり、土木界においても土木関係の産業、製品、技術などの海外との交易が増加している。特に日本の土木に関してはその技術的優位ゆえに輸出入が行われる場合が多く、それを保証する計測方法や評価方法、設計方法、施工方法、材質などに係る各種技術基準が国際的に通用することが必須である。そのためこれらの技術基準の国際的調和を図ることが重要であり、また国際的に優位にある基準については広く海外にも紹介し、普及させる方策を検討し、進める。

(3) 社会とのコミュニケーションの推進
①市民、メディアとのコミュニケーションの推進-不言実行から有言実行へ
これまで不言実行を良しとしてきた土木技術者が存在し続けることができたのは、社会が暗黙のうちに彼らを認め、その存在を許容してきたからである。さらにいえば、黙認されるほどにその存在の必要性、意義は高かったのである。一方で、これに甘えて不言であることに慣れてしまい、無意識のうちに有言であることを怠ってきた。すなわち、土木技術者の活動が影響を及ぼす関係者、さらには社会に対して行う説明、対話などのコミュニケーションが不十分であり、またその対応が不親切であったと言える。このようなこれまでとは異なり、現在の土木技術者の存在意義は以前ほどに高くない、さらには悪いイメージに誤解されることすらもあることを認識すべきであり、有言そして傾聴こそ今これを実行すべきである。そのために、土木界の各者が一体となって社会とのコミュニケーションに当たる「土木広報センター(仮称)」の設置について検討し、推進する。

②社会の技術リテラシー向上への貢献
現代社会は科学技術の発展により私たちに様々な恩恵を施してくれているが、それは巨大複雑システムの様相を呈しており、交通やエネルギー供給、防災・減災、住宅、教育、医療、金融など各種のサブシステムから構成されており、もはや一般市民にはどのような仕組みになっているのか、自分とどのような関係にあるのかを詳細に理解することは不可能になっている。しかし、このような各システムが私たちにどのような恩恵、サービスをなぜ、どのようにして届けてくれているのかを大体においても把握、理解しておくことは、サービスをよりよく利用するうえで、また災害や事故等によるサービスの途絶時の対処の上でも重要なことである。この理解の中には各システムの構築・運営に必要とされた制度や技術があり、これらの一般社会における理解度・リテラシーの向上に関係学術団体として貢献することは社会の強靭化の視点からも重要である。

6.3 技術者の育成、資質向上

(1) 学校教育、継続教育の推進、改善
• 学校から始まるキャリアパスに沿った継続教育の推進
土木技術者は学校教育で土木工学を学び、これに基づいて社会の様々な分野で、世界の各地で活動しており、その多くは社会インフラの整備、運営に直接的、間接的にかかわる職業に就き、これを通して社会の発展に貢献している。この土木技術者の活動の基礎をなす土木工学などの知識、技術を生涯にわたって継続的に学習することが必要である。
土木技術者は、大学等の教育機関を卒業した後、就職して若手技術者、中堅技術者、幹部技術者、そしてシニア技術者というように、それぞれの分野でキャリアパスを歩むが、その過程のそれぞれの段階でどのような能力をどの程度まで習得すべきなのか、そのためにはどのような継続教育が必要なのか、そのあり方を検討し、提示する。このような継続教育を通して育成される土木技術者こそが、社会に貢献できる力量を備えた技術者・専門家として社会から尊重される存在となりうる。
この学校教育から始まるキャリアパスを土木技術者としての使命感やインセンティブをもって進めるように、土木の魅力を伝えるとともに労働環境を改善して、土木界に人材を引き付け、確保することも重要である。

(2) 技術者の能力保証と活用
土木技術者は大学等の教育研究機関での土木工学に関する基礎的な技術教育を受けたのち、社会においてそれを職業を通して現実社会に直接的、間接的に応用して能力と経験を向上させていく。
このような彼らを社会的に活用するための方法に彼らの能力を評価して、保証する技術者資格制度がある。この制度により個々の技術者の技術・経験の水準が保証され、業務や役職に必要とされる遂行能力が備わっているのか確認でき、技術者たちが適材適所で活用されることが促進される。このような考えの下土木学会は土木学会認定土木技術者資格制度を整備したが、この活用の範囲、度合いを拡大するために資格制度が適用できる技術領域を拡大したり、実際の業務によりよく適合させたりするように制度の内容を改善することが肝要である。また、資格の活用においてはその資格保有者が一定数以上確保されていることが現実には必要で、そのため制度の普及、資格保有者の増加が重要である。

(3) 技術者交流の促進
学会の重要な機能の一つに学会活動を通して技術者間の交流を促進することがあげられる。土木学会本部においては各種委員会活動により活発な技術者交流が行われているが、これを支部やさらに分会、学生分会(スチューデント・チャプター)にも展開を図り、全国的に技術者間の交流を促進する。

(4) ダイバーシティの推進
人口減少、少子高齢化、福祉の重視、国際化などが進展する中で土木界においても性、年齢、国籍、障害などの差異を乗り越えて、広く人材を活用することが社会的にも求められている。また、このような多様な属性の技術者が土木界において各種社会的課題に取り組むことにより従来と異なる視点からより良い課題の解決策を提案しうると考えられる。そのため、土木学会を始めとする土木界においてもダイバーシティ推進活動を持続的に進める。土木学会では、各種委員会・支部における活動への女性会員の参加、役員への女性登用、さらには学生や若手技術者、シニア会員が参加しやすい活動の場の提供を推進していく。

6.4 学会の役割を果たすための活動と運営の姿

上記では主に土木学会の色々な役割について述べたが、この役割を果たすために様々な活動を繰り広げる必要がある。これについてはJSCE 2015(2015 年度~2019 年度までの土木学会の中期事業計画)の中で土木学会が今後実施する各種事業を具体的に記述している。これらのうちの主な活動、また、これらの活動を展開するための運営の姿はどのようであるべきかを以下に述べる。

(1) 今後の主な学会活動
①分野横断的な調査研究活動の促進
2012 年12 月に発生した中央自動車道笹子トンネル天井板落下事故を契機に、土木学会は社会インフラ維持管理・更新検討特別委員会を設置して、これまでに長期間をかけて営々と計画的に整備されてきた各種の膨大な量の社会インフラの今後の老朽化が進む局面での対応を検討している。この課題では、鋼構造物やコンクリート構造物、土構造物等の各種構造物、道路、鉄道、港湾等交通施設や河川・ダム施設、電力施設、上下水道施設等の各種施設、調査、計画、設計、施工、維持管理等の各種整備段階等にわたって幅広く分野横断的に検討を進めることが肝要である。
また、この取り組みの社会的重要性、長期性などに鑑み、この特別委員会を社会インフラメンテナンス工学委員会(仮称)として常置委員会に改組することも検討する。改組されれば、各種公共施設の維持更新に関する技術的な諸活動の拠点として、維持更新の技術・制度を体系的に検討、構築し、技術の進歩とともに維持更新事業の適切な実施を促進、支援する。
このような分野横断的な取り組みは、上記のほかに防災・減災などでも考えられる。事前防災、発災前後の危機マネジメント、復旧・復興といった各局面での災害対応や、各種構造物・施設の防災性能向上など幅広い視点からの総合的な調査研究等の取り組みの検討を推進する。

②会員制度の拡充
中長期的な国土計画の立案や老朽化の進む膨大な量の社会インフラの維持更新などの土木に関する諸問題に、厳しい財政事情の下で持続的に対応していくためには、それらに関する国民の受益と負担を明らかにして広く国民の意見を求め、社会的な理解、合意を形成していくことが重要である。このような社会における土木に対する理解、共感を深め、広げるためには、学会会員、国土問題への理解者、関心を示す人たちを増やすことが肝要であり、土木技術者を中心とする現在の会員制度を、土木に関連する分野の技術者や土木に理解を示す「シビルネット」などの一般市民をも包含するような裾野の広い制度に改めることを目指す。

③地域問題の解決への貢献
全国各地には災害や環境保全など国土利用上の様々な地域的な問題があり、地方公共団体などはその対応に苦慮していることが多々みられる。そのような問題において対策立案・実施に関係者の理解・合意形成が十分に行われていない場合が多くみられ、それを促進するため支部活動を通して会員による行政や市民などへの専門的な知識・技術の提供を行い、問題の解決促進に貢献する。

④国土・土木教育の普及
健全な次世代の国民を育成する初等からの学校教育において、国土とそれを支える土木に関する正しい認識を育てることは非常に重要である。これは、成人したときに国民の意見の反映が求められる様々な身の回りの国土問題、地域問題に関心をもつときの基礎をなすものである。そこで、学校教育に防災や環境保全などの国土・土木教育が取り入れられるように教育関係機関に対して、例えば学習指導要領の改訂を目指して学校での出前講義などを通して理解促進活動を行う。

⑤新しい公共の制度化・普及
これまで社会インフラの整備、運営、維持管理に関する活動主体は国や地方公共団体、民間事業者などが中心となって、様々な事業が行われてきている。維持更新のウェイトが大きくなっていく今後は、整備事業に比べて規模の小さい維持管理事業を中心としてNPO 法人や地域コミュニティ、ボランティアなどの市民が関わり始めており、この傾向が拡大していくことが予想される。そこで、公共事業におけるこれらのNPO 法人や地域コミュニティ、市民が参加するいわゆる新しい公共の活動環境を整備することが肝要であり、これまでの活動主体に加えて彼らを活動主体として位置づけ、制度化を図り、また賞揚することにより新しい公共の普及を促進する。

⑥建設産業の海外展開への支援
日本の建設産業は社会インフラ整備の一翼を担うことにより社会の発展、国民の福祉の向上に貢献してきた。今後の国内建設市場の縮小が予想される中でその技術力、供給能力を活用して、アジアを中心として新興国などで今後増大が見込まれる社会インフラ整備需要にインフラシステム輸出などに活路を見出し、諸外国の発展に貢献することが重要である。学会はこの建設産業の海外展開を技術者の育成や海外人的ネットワークの整備、技術基準の国際調和などにより支援する。

⑦世界的な土木学協会連合の形成
土木関係の国際学術ネットワークについては現在、1999 年に結成されたアジア土木学協会連絡協議会(ACECC) において土木学会は中心的な役割を担っているが、さらに欧州土木学協会連合(ECCE) 米国土木学会(ASCE) などとも連携して世界的な土木学協会連合を形成することを目指す。

⑧地方公共団体における倫理条例制定の提言
土木学会では土木界の各種組織と協働して市民による土木の現場見学会などの社会コミュニケーション活動を行うことにより、一般市民の土木への関心、理解を深める活動に努めている。しかしながら、公共事業にまつわる談合や汚職などの不祥事の報道がなされるたびに、一瞬にして土木、公共事業に対して負のイメージが広がりこの努力も水泡に帰してしまう。そこで、このような不祥事を未然に防止し、健全な公共事業を推進するために、公共事業に関する倫理条例制定を提言し、地方公共団体に対してこれを推奨する。

(2) 学会運営の姿
①学会活動の基本
土木学会の活動は、その定款により次のように行うこととされている。まず、定款第4 条に定める目的「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質の向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与すること」のために、第11 条によりおかれる理事が第13 条により会務を処理する、すなわち第5 条に定める各種事業を実施することと規定されている。また、土木学会細則第39 条では、「会務を執行するため必要あるときは……委員会を設けることができる」とされており、これに基づき様々な委員会が設置され、ほとんどの会務は委員会に委ねられてその事業として実施されている。
この委員会の構成員が学会活動を実施していて、これは学会活動が会員によるボランタリー活動により担われていることを意味する。すなわち会員は会費を納めて学会誌の送付や講演会への参加などの会員サービスを受けるだけの存在ではなく、委員会等の学会活動をボランタリーに行って社会に貢献する存在でもあると言える。このことは、土木工学を学び、これに基づき社会の各分野で職業を通して活動する土木技術者が自らが拠って立つ土木工学を進歩させ、自分が属する土木界を社会によりよく認識してもらうための行為であり、さらには技術の発展を背景に国際的視野にも立った幅広い交流をもとに国内外の社会基盤施設のよりよい整備をとおして人々の生活に役立つための行為とも考えられる。
このような考えをもってより多くの土木技術者が土木学会の活動に参加し、学術および社会の発展に貢献されるように切に願う次第である。また、このような活動に参加する会員は活動を通して土木技術者としての自らを成長させていることは言うまでもない。

②運営の基礎とその拡充
土木学会の活動は定款等の規定の下で上記のように行われており、またその意義は上記のように解することができよう。このように考えると、土木学会という存在は基本的には社会の中で土木工学・事業の発展のための広範な土木技術者の活動・交流拠点と位置付けられよう。
この土木技術者の活動・交流の場としての機能とその実情をみると、学生・若手会員やシニア会員の活動の場がまだ十分に提供されておらず、それを充実させて会員各層が学会活動に参加しやすくする会員サービスの能動化を推進することが重要である。また、土木事業はこれまで国、地方自治体等の行政機関や民間企業が中心となって実施されてきているが、最近ではこれらの事業者以外にNPO や地域コミュニティ、市民ボランティアが事業主体となる新しい公共の動きが広がりつつあり、土木学会はこれら新たな主体とも連携することにより社会への直接的貢献を促進することも今後の方向として重要と考えられる。そして、このような社会貢献活動を具体的に進めるには、防災などの地域の課題に本部のみならず支部においても地域社会と協働して対応するという社会的に幅広い活動を進めることも大切であり、これらに取り組んでいく。


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国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/