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日本インフラの体力診断-地域公共交通-

土木学会事務局です。

土木学会では、インフラ健康診断・日本インフラの能力診断との組み合わせで、日本のインフラの「強み」「弱み」を総合的に評価する資料・データとして活用していただくよう、インフラの体力診断を行い、2022年7月26日に第二弾となるレポートを公開いたしました。

本記事は、インフラ体力診断のページに掲載したPDFレポートの内容から、地域公共交通WGの内容をnote向けに再構成したものです。一部、脚注等省略している部分やリンク等を追記した部分がございます。詳細は「日本インフラの実力診断」のページに掲載しているPDFをご確認ください。

それでは早速、日本の地域公共交通の体力診断結果をご覧ください。

1.みんなの移動,どうなっている?

地域公共交通とは,地域住民の日常生活や社会生活における移動のための交通手段として利用される公共交通機関の総称であり,時には観光客や来訪者がその利用者に含まれることもある.具体的には通勤通学,業務,買い物,通院,その他の私用などの目的で利用される乗合バスや地方鉄道,タクシー等を指すことが多い.つまり,長距離移動のための公共交通,例えば航空機や新幹線,大型フェリー等はこれに含まれない.また,インフラ体力診断には都市鉄道WGも存在することから,地域公共交通WGでは政令指定市以上の都市内鉄道,都市間高速バス,等も対象としないこととした.

本WGで日本の地域公共交通の体力を診断するにあたり,本章ではまず,生活に密着した身近な移動のエピソードをいくつか挙げることとしたい.

(1)エピソード1:つくば市(茨城県)

2021年12月,筑波大学に勤めるAさんは,同じつくば市にある国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)の会議に行くことになりました.

会議は13時から,Aさんはクルマを持っていないのでバスで行かざるを得ません.時刻表を確認してAさんは愕然としました.

13時からの会議に出席するのに,10時半のバスに乗らなければならない!

国総研の最寄り停留所「土木研究所」には,つくばセンター(つくば駅)発11:00のバスがありますが,そのあとは15:15までバスはありません.筑波大学から,13時の会議に間に合うよう国総研に行くには,10:30筑波大学第1エリア発のバスでつくばセンターに行き,11:00つくばセンター発のバスに乗る必要があります.ちなみに筑波大学-国総研は約4.0km(徒歩48分)のみちのりです.Aさんはこんな短歌を思い出しました.

吊り橋の途中の板の欠落のように昼間のバスはなかった 木下龍也 
(木下龍也(2016)第二歌集「きみを嫌いな奴はクズだよ」所収)

(2)エピソード2:カールスタッド市(スウェーデン)

スウェーデンの地方都市,カールスタッドで小学3年生の息子K君と2人暮らしのBさん.K君の小学校までは,バスで2停留所先,安全な森の小道を歩いて15分くらいなので,その日の気分や天候でバスか徒歩かを決めています.

Bさんは,勤め先にバスで通っています.オフピーク時は3本/hの運行ですが,バスの運行時刻に合わせたライフスタイルは,むしろめりはりが付くと気に入っています.そして週1-2回はK君とバスで大型スーパーICAへ買い物に行き,週末もバスで中央広場Stora Torget近くの映画館や雑貨屋さんに行きます. 

バスの路線や時刻表はアプリで検索できるほか,バスが今どこを走っているかロケーションもアプリ上に示されます.バス車内には無料Wifiが完備され,車両あたり2台設置されているモニタでニュースや天気予報,バス広告,利用者の声などの番組が放映されています.運賃をプリペイド型ICカードで払うと現金の約半額となるため,乗客は皆ICカードを使い,乗降もスムーズです.カールスタッドバスは若者,子ども連れ,サラリーマン,高齢者などさまざまな利用者に愛されています. 

 図1-1 カールスタッド市の公共交通網Karlstaddsbuss
2012年当時のバス路線に加筆
カールスタッドバスに乗り込む子ども連れ
カールスタッドバス車両エクステリアのサービス表示

(3)エピソード3:庄原しょうばら市(広島県)

広島市と岡山県新見市を結ぶJR芸備線は,かつては郵便や鉱石・木材等の物流も担う,旅客・物流の双方で重要な役割を担っていました.しかし最近は旅客が著しく減少し,現在(2022年春時点)廃線も含めた今後の在り方の議論の渦中にあります.JR芸備線の旅客減少の一因は沿線の人口減少で,この問題は今に始まったわけではありません.

図1-2 庄原市(芸備線沿線)の人口と乗車人員・便数データ
出典  国勢調査,鉄道要覧,JR/JTB時刻表

このような状況にも関わらず,直近に実施された市議会議員選挙で「地域交通」を公約に掲げる候補者は24人中わずか4人と限られていました.このことは,地域公共交通が庄原市の有権者の関心事では無いことを端的に表していると言えます.

(4)エピソード4:シンプロン村(スイス)

人口わずか300人のシンプロン村では,麓から荷物を運ぶ郵便バスに旅客も乗車できます.

運ばれた荷物はバス停近くに集積する郵便局やスーパーに搬入されます.スーパーに冷蔵庫はありませんが,生鮮品も毎日買うことができます.例えば郵便局は朝8時から8時半まで午前の営業を行い(図1-3),8時半すぎに荷物や手紙を集めた郵便バスがシンプロン村を出発します.その郵便バスに乗ってきた生鮮食品を売るため,スーパーは8時半開業,11時まで営業しているのです.

図1-3 シンプロン村の郵便局の営業時間
Post Filiale 3907 Simplon Dorf, 2017年6月5日撮影

この村の公共交通は,いわゆる乗合バスではなく,郵便サービスのための郵便車にバス車両を用い貨客混載することで機能しています.スイス全土を結ぶ郵便事業の一部として位置づけられていることから,単独路線で採算を判断されることもありませんし,高い公共性を誰もが理解できる仕組みとなっています. 

(5)エピソード5:小山おやま市(栃木県)

2022年4月,栃木県小山市に住むNさんは,市外の中学校に進学した娘のHちゃんが出かける姿を心配そうに見送りました.Hちゃんは家から小山駅までコミュニティバス,小山駅から学校まではJR両毛線を使います.実はNさん,Hちゃんから市外の中学校に進学したいと打ち明けられ,最初に心配したのが通学手段でした.「毎日駅まで送り迎えできるかしら・・・」そんな時,Nさんは市役所発行のバス情報誌Bloom!に「これは!」と思いました.「通学にバスを使っている女子学生」の記事が載っていたのです.

図1-4 バスの情報誌 Bloom!―ブルーン!―

更に小山市コミュニティバスの定期券 noroca は,学生25,000円/年ととても安く,スマホ定期券なら紛失の心配もない.無事希望の学校に合格した娘にバス通学を勧め, 1年定期券を買ってあげました. 

そんなNさんは, 小山市に住むHちゃんの同級生が,ご両親に毎日送迎してもらって通学しているとの話を聞きました.バス停から遠いところに家があるようです.改めて市内のバス路線を調べてみると,Nさん宅最寄りのバス路線は,2021年10月から便数が倍増し,市内でも特に便利な路線でした.小山市は市内のバスを順次増便する方針とのこと,早く同級生のお家沿いのバス路線も便利になってほしいとNさんは願っています. 

2.データにみる日本の地域公共交通の「体力」

1章で示したエピソードは,データによる裏付けが可能なのか?日本の地域公共交通は諸外国(主に欧州の地方都市)と比して,どのような状況なのか?を検証するために,2章では日本の地域公共交通(都市鉄道や新幹線,航空機は除く)の現状を諸外国と比較することを試みた.

他のWGでは国としての目標の下,その達成度が評価されているが,日本では地域公共交通に関する政府としての定量的目標は存在しない.そして地域公共交通の現状を評価可能な統一的な指標も,日本では存在しない.目標も評価指標も無い中で,国際比較による地域公共交通の体力診断を行うのは無理筋である.無理を承知で,国内外の資料をあたって収集したいくつかのデータを紹介する.

2.1. 地域公共交通の分担率とサービスレベル

(1)人口規模と公共交通分担率

地域公共交通の利便性を評価する指標として,公共交通分担率が挙げられる.人々の全移動回数のうち,公共交通を使った移動の回数が公共交通分担率である.図2-1より,公共交通分担率は人口規模に応じて高くなることが示された.また,日本では都市圏規模が大きいほど分担率が高い.スイスでは人口5万人前後でも公共交通分担率が10-15%の都市が多く,図中の回帰式の傾きが大きいことから,同規模の日本の都市に比べると公共交通分担率が高いことがわかる. 

図2-1 日本とスイスの人口規模別公共交通分担率

Data source: H27全国PT(日本)、 data.europa.eu(スイス)より.
なお,日本では国土交通省都市局がほぼ5年ごとに実施する全国パーソントリップ調査(2015)データを用いて,都市別の公共交通分担率が算出できる.日本の比較対象として,1章エピソード4に挙げたスイスを例に,data.europe.euから公共交通分担率を入手した.日本の都市は都市規模別に分類したが,スイスは,首都のチューリッヒが人口40万人弱,次いでジュネーブの20万人と日本に比して人口規模が小さいため分類はしていない.

 (2)アクセシビリティ

地域公共交通の評価指標の二つ目としてアクセシビリティを検討する.アクセシビリティとは,一般に機器やサービスを円滑に利用できる度合いを意味し,地域公共交通の利便性を示す指標の一つとして用いられている.日本ではアクセシビリティ指標を経年的に取得する仕組みが存在せず,本節では,「平成24(2012)年度 公共交通の供給密度評価手法の構築等業務 報告書」(平成25年3月国土交通省)のデータを独自に再集計した結果を紹介する.

図2-2に,国内と海外の都市におけるバス路線長×本数密度を縦軸に,可住地人口密度を横軸としたグラフを示す.当然ながら可住地人口密度が高いほど,バス路線延長×本数密度(年間)は大きくなる.しかしその傾向(傾き)に着目すると,日本はほぼ原点から始まる回帰式である一方,欧州・北米ではy切片がマイナスで可住地人口密度が低くとも一定のバス利便性が担保されていることがわかる.また,回帰直線の傾きが日本は10程度であるが,欧州・北米は50以上と高い.このことは,海外都市の方が,可住地人口密度が低水準であってもバス利便性は高いことの証左と言える. 

図2-2 国内と海外の都市におけるバス路線長×本数密度と可住地人口密度
(出典 国土交通省 平成24(2012)年度 公共交通の供給密度評価手法の構築等業務 報告書)

2.2. 地域公共交通(乗合バス)の収支率

 日本の公共交通は独立採算制を基本としている.独立採算制とは,事業者がその事業のみで採算を確保できる,つまり地域公共交通のバスや鉄道事業で営利企業として成立することを前提とした仕組みのことである.欧州や北米では,独立採算制では無く,地域公共交通は社会インフラであるとの認識の下,税金が投入されそのサービスレベルが維持されている.

図2-3は乗合バスの収支率の国際比較である.このデータは2013年時点のものであるが,例えばイタリアの乗合バス時用の収支率は一般に25%程度であること,1章のカールスタッドバスの事例でも収支率は45%程度で事業者はそれを誇っていることを,参考までにご理解いただきたい.

図2-3 乗合バスの収支率の国際比較

日本:国土交通省資料 英国:DfT ”Annual Bus Statstics: England” 米国:APTA ”Public Transportation Fact Book” フランス:GaRT “L’Année 2013 des transports urbains”
*1 乗合バス以外も含む
*2 2005年のデータ(阪井清志『LRTに関する制度・施策の現状と課題−海外の制度・施策から見たわが国への示唆−』IATSS Review Vol.34 No.2,p.13,2009年.
*3 2008年のデータ(一般財団法人計量計画研究所『高齢社会におけるモビリティのあり方~韓国との比較を通じて~』p.69,2017年.

さて,図2-3より日本の収支率(乗合バス)は欧米諸国と比べて高水準となっており,三大都市圏外でも運賃収支率は8割強と独立採算原則の経緯が色濃く残っていると言えよう.日本バス協会『2020年度版 日本のバス事業』(データは2019年度)によると,乗合バスの収支率は地方部でも3分の2を上回り,唯一下回る山陰ブロックでも58%となっている.欧米の路線バスは社会インフラと位置づけられていることから,採算性の向上のみを求められることは無い.収支率100%以上,つまり営利企業としての役割を求められる日本のバス事業は,これまで高速バスなど長距離路線で不採算路線の赤字をカバーする努力をしてきたにも関わらず,苦境に陥っているのである.一方,バス事業として成り立たずに事業者が撤退した地域において,自治体が税金で運営するコミュニティバスやデマンド交通の収支率は多くが2割未満となっている(図2-4).

図2-4 日本のコミュニティバス・デマンド交通の収支率
出典 国土交通政策研究「多様な地域公共交通サービスの導入状況に関する調査研究」

これらより,主に都市部において採算が取れる「事業者中心のサービス」と,地方部における税金を投入した「行政中心のサービス」を両極として,大きく二分されているのが日本の特徴と言える.

2.3. バスへの投資の日独比較

図2-5は1970年~2020年(一部データ無し)の日本とドイツのバス台数(棒グラフ)と走行台キロ(折れ線グラフ)である.これより,日本のバス台数・走行台キロともに1970年以降ほぼ横ばいである.日本の乗合バス利用者のピークは1970年前後であり,それ以降,利用者は漸減しているが,貸し切りバスやコミュニティバスの需要と相殺されてバス台数は変化していない可能性がある.一方,ドイツでは1970年からの50年でバス台数が約1.8倍に増加し,走行台キロ(台数✕走行距離)も増加している.ドイツではバスへの投資が積極的に為されていることがわかる.

図2-5 日本とドイツのバス車両台数と走行代キロの推移
出典 BASt資料

2.4. 日本の路線バス車両への投資の停滞:
  バス台数60年間6万台問題

日本の路線バスに対する投資の停滞を顕著に表しているのが図2-6に示すバス総走行キロ・許可キロ・車両数である.1970年代から国鉄が民営化された1987年頃までバス路線の許可キロは停滞していたものの,それ以降,増加している(2006年から台数と許可キロにコミバスもカウントされている).これは総合病院の郊外移転,郊外型大規模ショッピングモールの乱立,郊外型団地の建設などに起因している.一方,バス利用者数はモータリゼーションにより1970年をピークに減少しているにも関わらず(図2-7),許可キロが増えており(図2-6),バス車両数は60年間,約6万台のまま変化していない.

図2-6 乗合バスの総走行台キロ・許可キロ・車両数の経年推移
データ出典 日本のバス事業
図2-7 乗合バスの利用者数と乗用車数の経年推移
データ出典 日本のバス事業(日本バス協会)、わが国の自動車保有動向(自動車検査登録情報協会)

この不思議な現象についてある公共交通事業者はこう語っている.「新設、増便したい路線Aがある場合,まずは比較的利用の少ない路線Bからバス車両を配置換えします.ここで路線Bの車両は不足します.車両不足による路線B減便を防ぐためにバス車両を買うか?というと,そのような発想は全くありません.そんな投資はしないのです.」こうして既存バス路線Bでは,事業者の悪意無くサービスレベルが低下していく.この背景には,あるべき公共交通サービス水準が設定されていないという日本の課題が横たわっていると考えられる.サービスレベルの目標無しに営利企業として成立することを求められる日本のバス事業者としては,事業性を高めるために,比較的収益性の低い路線Bから収益性の高い路線Aにバス車両を移す.よって比較的収益性の低い路線Bのサービスレベルは低下するのである.この問題をバス事業者の営業努力のみで解決することは困難であり,社会問題として議論する必要があろう.

これについて,複数のバス事業者が以下のように語っている.「企業は成長分野への投資は促進するが,投資効果のない分野には投資はしない.」「規制緩和が始まり,将来的な人口減少も明確に見えてきた2000年頃からは特に,運送効率を上げる方向でずっと頑張ってきました.不採算路線を縮小撤退し儲かる高速路線を拡大させてきたのは事実.この時期に不採算路線も維持出来ていれば,欧米のように車両数も走行キロも伸びていたかも.が,それは出来ませんでした.」

2000年前後の規制緩和の経緯については3章に述べる.

2.5. Walk Score:
  米加豪の不動産情報と連携したアクセシビリティ指標

公共交通の利便性や徒歩環境の評価指標として,アメリカ合衆国,カナダ,オーストラリアの不動産情報と連携したアクセシビリティ指標「Walk Score」のサービスを紹介したい(図2-9).

図2-9 Walk Score WEBサイト

Walk Scoreのサイトでは,住まい選びに活用することを前提に,公共交通(Transit Score)や徒歩(Walk Score)・自転車走行環境(Bike Score)の客観的評価を,住所を入力するだけで簡単に参照できるサービスを提供している.サービス範囲外ではあるが,例えば

エピソード1:国総研(つくば市旭1番地)はWalk Score 10: Car-Dependent,
エピソード2:カールスタッド市中心部はWalk Score 97: Walker's Paradise,エピソード3:庄原市役所はWalk Score なし: Car-Dependent,
エピソード4:シンプロン村はWalk Score 40: Car-Dependent,
エピソード5:小山市Hちゃん同級生(小山市横倉新田)はWalk Score 54: Somewhat Walkable

と評価されている.

このようにきめ細やかかつ客観的なアクセシビリティ指標を公開・提供することで,居住地のみならず通勤通学先の選択をサポート可能となるほか,自分のまちの状況を客観的に把握することにつながる可能性がある.近年,日本においても首都圏限定で同様のサイトが公開されている(例えばhttps://lifull.com/news/18311/).今後,地方への拡大が望まれる.

2.6. データが無いことが課題

以上,2章では地域公共交通の体力診断のために,国際比較可能なデータを模索した.結果として,日本においては事業者毎の経営状況,収支状況といったデータは存在するものの,都市単位,地域単位で地域公共交通のサービスレベルを評価可能な指標は存在しないことが明らかになった.

例えば2.1節の交通手段分担率を集計可能なデータベースとして,全国PT調査があるが,全国全ての市区町村を網羅しているわけでは無い.国勢調査は,2回に1回(10年毎)通勤通学手段を問う項目があるが,移動目的が限定的である.そして交通手段分担率はあくまで人々の行動を観測したもので,公共交通のサービスレベルを直接的に記述する指標では無い.

地域公共交通の体力を診断するためには,都市単位,地域単位でのサービスレベル評価指標が必要である.評価指標が存在しないのは,国として地域公共交通のサービスレベルをどう担保するかという目標を有していないこと起因していると考えられる.到達目標の無いところで達成度の比較は困難であり,2章ではサービスとしての比較を行ったにすぎない.ただし,地域公共交通の評価に目標は不可欠であることは論を俟たないが,他都市・諸外国との比較評価もまた重要であり,比較検証に耐えうるデータの蓄積が重要であろう.

目標無く衰退する日本の地域公共交通の現状には,公共交通事業が独立採算制として発展してきたところにモータリゼーションが直撃し,さらに需給調整の規制緩和が為された我が国の制度の歴史的経緯が関わっている.地域公共交通の体力診断には不可欠な視点と考えられるため,これについては3章で触れることとしたい.

3.地域公共交通問題の本質

(1)地域モビリティの原点と「公共」の位置づけ

地域モビリティの原点とその変遷について,家田 は当初は自分の足で歩くことが基本であった(例えば江戸のまち)が,徐々に個別ニーズに応じた輸送サービスが発展(駕籠,人力車)し,旅客を「まとめて運ぶ」乗合交通(乗合馬車,乗合バス,路面電車)に至ったと述べている.3つ目のまとめて運ぶ,つまり「混ませて運ぶ」乗合交通は,高い経済効率性と割安な運賃で1950年代まで日本の主要な移動手段であった.この時代は交通事業単体で採算がとれる「独立採算制」が成立したのである.しかし1960年代より急激なモータリゼーションの洗礼を受け,地方部では利用者減少に歯止めがかからず,サービスレベルの低下と更なる利用者減という負のスパイラルが続いている.

欧州においても状況はほぼ同様であるが,モータリゼーションは第二次世界大戦直後から始まったと言われている.1950年代,60年代に多くの都市から路面電車が姿を消した.1970年代にはモータリゼーションの弊害が認識され,路面電車の復活や新設道路に自転車道の設置義務づけなどの公的措置が執られている.その結果,鉄道の分担率はわずかではあるが上昇傾向にある(図3-1).各国の特徴的な公共交通施策について,詳細を(3)節に記す.

図3-1 交通機関分担率の推移:日本,ドイツ,フランス,英国
出典 日本政策投資銀行,株式会社日本経済研究所(2015)地方公共交通システムのあり方に係る調査 ~地域公共交通連携スキームの構築

地域公共交通の「公共」という言葉をどう理解すべきかについて,家田(2021) はpublic transportを三種類に分類している.すなわち,

■大衆交通:
例 米国Uberの配車サービス(ride-hailing services):スマートフォンからアプリを起動し、出発地を指定するだけでドライバーが迎えに来る.誰でもドライバーになれること,利用者とドライバーのマッチングがアプリで完結すること,料金が事前に把握でき,決済がクレジットカード限定で現金の収受がない等の特徴を有している.
■公衆交通:
例 日本型公共交通(日本):公衆電話,公衆浴場のように利用ルールを遵守する限り誰でも利用を拒絶されることは無いが,政府や自治体など公共主体の関与が前提とはなっていない.
■公共交通:
例 社会インフラとしての地域公共交通(ドイツ):社会的視点に立ち,無料もしくは十分に廉価な価格で,十分な量と質が提供されるべき財やサービス,あるいは提供せざるを得ないサービスのこと.

家田仁(2021) 地域モビリティ問題の本質-求められる俯瞰的総合,地域モビリティの再構築
第1章,薫風社.

の三つである.この思想のちがいは,安全や運行頻度などのサービスレベルの責任を誰が担うかという点にもつながっている,と家田(2021)は指摘している.例えば,米国のUberは安くて便利であるがドライバーは素人,個人事業主とみなされ,Uberは運行に対する責任を負わず,安全は利用者の自己責任となっている.一方,日本の公共交通は運輸安全マネジメント,車両検査,二種免許等々,安全対策が法で定められ,運輸局が監督しており,安全については事業者が責任を負うことになっている.利用者は公共交通の安全を当然の品質と考えている.そしてドイツでは,(3)①節に詳述するPSO(Public Service Obligation) と憲法に定められた「生存権」等に基づいて,地域公共交通の一定のサービスレベル確保は行政の責任であると考えられている.交通事業者は自治体からの運行委託を受け,サービスの質を保つことが義務づけられているのである.

このような公共交通に対する思想のちがいを念頭に,日本と欧州の代表的な国の地域公共交通に関わる制度,仕組みを次節以降で概観する.

(2)日本の地域公共交通に関連する制度と上位計画

日本の公共交通関連の政策は,国土交通省が主に所管している.国レベルの計画としては,長期的な国土づくりの指針である国土形成計画,中期的な社会資本整備の具体的指針である社会資本整備重点計画,中期的な交通政策の具体的指針である交通政策基本計画がある.しかし地域公共交通は地域毎に検討することが求められており,人口規模や移動量などに応じたサービスレベルなどの目標値は存在しない.

図3-2は日本の公共交通関連制度の変遷と,年代別人口・交通機関分担率の推移を示している.

図3-2 日本の公共交通制度の変遷と年代別人口・交通機関分担率の推移
国土交通省総合政策局作成資料に集計分析結果などを追記・レイアウト訂正

鉄道,バス,タクシー,海運,航空の5つの交通モード別に,下部の人口推移の年代に縦方向に合わせた主なイベントを記載している.鉄道と航空は1980年代半ばに国有から民営化された.バブル期,その後の停滞期を経て2000年前後に鉄道,バス,タクシー,海運,航空のいずれにおいても国による需給調整が廃止され,規制緩和が為された.その後,規制緩和による地域公共交通の混乱・停滞に対応するため,2007年,地域公共交通の活性化及び再生に関する法律が制定された.

この法律では,市町村が主体となって幅広い関係者の参加による協議会を設置すること,まちづくりとの連携などが定められ,令和2年改正では地方公共団体に「地域公共交通計画」の作成が努力義務として課されることとなり,地域公共交通は交通事業者まかせではなく,地方自治体の主体的関与が求められることになった.

地域公共交通の財源としては運賃収入のほか公共による補助金等による支援があるが、個別路線ごとの収支の状況に応じて路線単位で赤字補填を行っているものが多く,その場合,現状維持が主眼となることから地域に必要なサービス水準との乖離が発生する可能性もある.また,実績に基づく赤字補填を前提とすると,事業者に事業改善インセンティブが働きにくいため,長期的な展望に基づく設備投資が十分に行われないことが懸念される.このような副作用を最小限に留めるための方策が望まれる.

一方で地方自治体には地域公共交通の知識を有する職員がいないことも多く,人材の育成・確保が急務となっている.

(3)欧州の地域公共交通に関連する制度

① 公共サービス義務PSO

欧州の公共交通関連制度の背景にはPSO(Public Service Obligation:公共サービス義務)が存在する(金山  ,2005).PSOは欧州連合法の中で定められており,EU地域内で「商業的供給は困難だが,社会的に望ましいサービスを,公的資金を投入して提供する公共サービス義務」と定義される.PSOは公共サービスのあらゆる分野に関わり,郵便サービス,社会サービス,エネルギー,運輸,銀行などが該当する.地域公共交通に関連するPSOは大きく二つある.一つは1969年のEEC規則 1191/69であり,鉄道・道路・内航船舶輸送に該当する公共交通をPSOとして規定し,導入の妥当性を担保している.この規定の概念は米国・カナダ・豪州等にも拡大している.もう一つは,2007年に改訂されたEU規則  1370/2007であり,当局による入札等競争的選別、モニタリングによる補助金の有効利用を規定している.これにより公費を充当する額の妥当性が担保されている.

これら主に二つのPSOに基づき,欧州において公共交通は独立採算では無く行政の助成が不可欠であり,自治体が提供する「公共サービス」と考えられている他,自治体が他の都市計画と整合性のとれた中長期の地域公共交通計画を策定する根拠となっている(日本政策投資銀行 ,2015).

② 財源

公共交通に対する財源確保については,例えば

■ドイツ :
エネルギー税:動力用又は暖房用燃料としてのガソリンや天然ガスにかかる税.例えば天然ガスは31.8%である ※出典 
■フランス:
交通税:公共交通システムから利益を享受している,従業員数10人以上の企業に課される税.課税額は,雇用者が従業員に支払う給与総額に一定の税率を乗ずる形で計算される
■イギリス:
バス,鉄道運行事業者への助成金

などと各国で異なる仕組みとなっているが,いずれも独自の特定財源を有している.

フランス ストラスブールの交通結節点

③ドイツの運輸連合

ドイツは連邦制の分権国家であり,地方公共交通に関する権限の大部分は地方政府に移譲されている.連邦政府は,州を跨ぐような長距離交通のための交通計画の策定などを所管している.ドイツ独自の取り組みとして「運輸連合」という制度を紹介する.

運輸連合とは,1965年にハンブルク市で創設された交通事業者の協働組織に端を発し,その後西ドイツ各地へと段階的に波及した仕組みである.今日では,州や郡・市・町が設立した運輸連合も多数あり,都市内・地域内の公共交通機関全体の運行計画とダイヤの策定,共通運賃制度の運用,広報・宣伝活動の共同展開等を実施している(図3-3).

図3-3 運輸連合の機能例より作成

現在までに,ドイツ国内で65ヶ所,国土面積の3分の2,総人口の85%をカバーしている(日本都市センター ,2020).運輸連合が公共交通サービスの実施等の運行を実際に行うことはなく,あくまで地域公共交通に関わる調整を担っており,自治体と事業者に対するコンサルタント的機能も提供している.法人形態は有限会社であり,地域の事情に応じた適切なモデル(行政主導,事業者主導,両者の協働,両者がそれぞれ運輸連合を組織)が選択されている.運輸連合は「複数の交通機関や交通事業者による輸送サービスを対象として、その利用者利便性を向上させる」という意味において、MaaSの本質を体現する組織とも言えよう.

地域の交通問題を多様な利害関係者とともに調整・検討するという意味で,日本の地域公共交通が目指す方向と合致した仕組みとなっており,参考になると考えられる.

(4)日本と欧州の制度と政策経緯の比較

3章(1)節,(2)節,その他の文献より,日本と欧州の地域公共交通を巡る制度のちがいは以下のようにまとめられる(日本政策投資銀行,2015).

  • 地域公共交通を公共が一定の財政負担を前提とする公共サービスとして捉えている

  • 事業者の採算性より住民への良質なサービス維持と利便性の向上を目的としている.

  • 地域公共交通は地域の活力を維持し,地域の魅力を高める為に必須であるとされている

  • 自治体は異なる交通モードを考慮した中長期の交通発展計画を策定している.

  • 自治体は交通事業者と積極的に対話をしている

  • 自治体の交通担当者は交通や都市計画の専門家であり,経験,知見は深い

また,日本の地域公共交通の政策経緯とそれに伴う事象の変化を模式化したものを図3-3に,前節に紹介したドイツの運輸連合発祥の地ハンブルクの経緯を図3-4に示す.図3-3,3-4右側のチャートは,それぞれ縦軸に公共の関与度合い(規制が機能しているか否か),横軸に公共交通の利便性/事業者や自治体の積極性をとり,左側の概略年表の①~③の経緯とその位置する象限を図示したものである. 

図3-3 日本の公共交通における公共関与と利便性の関係
図3-4 欧州の公共交通における公共関与と利便性の関係:ハンブルク(ドイツ)の例

図3-3より,我が国の地域公共交通は自由競争を経て1950年代から国の法規制の下,民間事業として成立してきた(図中①).モータリゼーションの進展が進む中で営利目的の事業が成立してきた背景として,過度な競争を危惧する国の規制により独占・寡占的な事業運営となるよう調整されていたこと,ならびに人口増加・経済成長によるものが大きいといえる.

(2)節に記すように2000年前後の規制緩和は,乗合バスや鉄道等の需給調整規制を廃止し,新規参入規制を最低限にとどめ,サービスの質・量は交通事業者の経営判断等に委ねることで,「利便性を維持・あるいは向上しつつ,公共の関与を控える」(図中②’)ことを目指し進められてきた.しかし現実は,規制緩和の狙い通り「公共の関与」は抑制されたものの行政による目標設定を含むプランニングの欠如や撤退の自由化により,結果として地域公共交通の衰退・サービスの低下を招いた(図中②).

2007年の地域公共交通活性化再生法施行により,地方公共団体の地域公共交通マスタープラン策定を努力義務とするなど,地域公共交通の質の担保と利便性の向上を図ってきた.これにより公共の関与は高まったものの,地域公共交通のサービスレベル,利便性は未だ低い状況に留まっている.

ドイツにおいては(3)節で述べたす運輸連合などの仕組みにより,事業主体や輸送モードにかかわらない共通賃制度など利便性の高い都市内の地域公共交通サービスが提供されている.その経緯を模式化した図3-4より,1960年代までハンブルクを含むドイツ各都市では交通事業者が自由競争でバスや電車を運営しており,公共の関与(当時は規制)も少ない中で利便性が低下していた(図中①).この状況の中,モータリゼーションの進展に対抗して公共交通機関のシェア回復を図るべく,1965年交通事業者間の協働組織としてハンブルク運輸連合(Hamburger Verkehrsverbund HVV)が設立された.この運輸連合は民間事業者の拠出金により運営される組織体であり,公共交通機関の自由意思による「カルテル」と言えるものであった.行政は運輸連合の結成をサポートしていたものの運営に対する関与は少なかった.運輸連合により,当初こそ利便性の向上が図れたものの(図中②’),大幅な運賃値上げ,輸送実績の低下,利便性の低下が生じていた(図中②)ことから,1996年運輸連合は解散した.その後,ハンブルク市等周辺自治体も出資した「(新)運輸連合」が設立され,運輸連合の権限をハンブルク市等自治体側に帰属させ交通事業者は助言にとどめるなど公共の関与の度合いを増すことになった  .(参考

運輸連合は多様なステークホルダーが絡むことから,その設立は容易ではなく,関係者の多大な努力を要するものであったが,その調整機関としての役割は大きいと考えられる.

4.総合アセスメント

地域公共交通WGでは,日本の地域公共交通の体力を,主に欧州の都市と絶対値で定量的に比較するとともに,制度・思想のちがいを分析した結果を用いて,総合アセスメントを行う.

(1)量的評価

日本では地域公共交通に関する目標値が無いため,量的評価は困難である.人間に例えると,目標の不在は「なりたい自分がわからない」状況と言えよう.よってまずは,公共交通分担率,路線バスのアクセシビリティ,収支率,地域公共交通への投資状況の絶対値で,主に欧州の都市と比較することを試みた結果を記す.

  • 都市人口別の公共交通分担率を日本とスイスで比較した結果より,日本では都市規模が大きくなるほど公共交通分担率が大きい傾向があるが,スイスでは人口3-5万人の都市であっても,日本の三大都市圏に位置する人口20-50万人の諸都市に引けを取らない公共交通分担率となっていた.このことは,日本の地域公共交通利用は特に地方部において,スイスよりも低水準であることを示している. 

  • 日本と欧州の諸都市の可住地人口密度あたりの路線バスアクセシビリティを比較した結果より,日本の都市は,同程度の人口規模の欧州の都市よりも,バスサービスレベルが平均して1/3程度の低水準となっていた. 

  • 都市部を含む日本の公共交通の収支率は,諸外国と比して非常に高い水準にある.これは独立採算制を原則とした歴史的経緯の遺物とも言え,特に地方部で独立採算制が立ちゆかなくなった現在,この原則にどのように対峙するかが問われている.さらに地方部ではコミュニティバスやデマンドバスの収支率が非常に低いことが課題となっており,都市部の事業者任せのサービスと,地方部の行政丸抱えのサービスとが極端に二分されているのが日本の特徴と言える.

  • バス車両への投資額について,日本の路線バス車両台数は60年間にわたり変化しておらず,走行台キロも停滞している一方,許可キロは伸びているという現象が確認された.2000年前後の規制緩和をきっかけに,公共交通事業者は営利目的の企業としてやむを得ず成長分野への投資を優先し,不採算路線を縮小撤退していた.これらより,日本の地域公共交通の独立採算制は限界に来ていること,地域の毛細血管とも言える路線バス路線網の衰退,地域の壊死につながる重篤な症状を呈していることが示された.

(2)地域公共交通に対する思想のちがい

日本が世界に誇る充実した公共交通網は,独立採算制を基本とし,民間公共交通事業者の沿線開発や事業の多角化など,経営努力により達成された公衆交通網であった.モータリゼーションの進展により独立採算制,すなわち営利を前提とした経営が立ちゆかなくなった地方部では,公衆交通に変わる思想が必要となっている.国による運輸事業者の需給調整を撤廃した2000年前後の規制緩和後の混乱と,地域公共交通の更なる衰退を受けて,いくつかの法制度,仕組みが提案されているが,抜本的な解決には至っていない.赤字補填の補助金はあるものの,それがサービスレベルの向上につながる前向きな投資にはつながっていないようである.

地域公共交通活性化推進法(2007)は地域社会が地域公共交通を考えるきっかけとなったが,十分な財源は担保されておらず,実効性が高いとは言い難い.また公共交通の衰退はモータリゼーションと表裏一体であるにも関わらず,この法律では自動車交通の抑制につながる施策について何の言及も実効力も無い.自動車との激しい競争の中で生き残らねばならない民間の公共交通事業者の存在を認識し,予算制度のみならず,公共交通を使いやすい都市構造の形成や他分野との連携なども含め,その対策を皆で考えるべきである. 

かたや欧州では,EUの公共サービス義務PSOに基づいて,地域公共交通は自治体が提供する「公共サービス」であり,都市計画と整合する中長期の地域公共交通計画を策定する根拠ともなっている.ドイツでは「地域公共交通は社会インフラ」という価値観・思想があまねく行き渡っている.地域公共交通の価値に言及する法的根拠・目標が,日本の地域公共交通を考える上で不可欠となろう.

なお,日本のバス・鉄道事業者の安全性,定時性など質の高さは,運行頻度やネットワークの広さ,運賃収受率のみならずきめ細やかな配慮,清潔さ,接客,防犯性,バリアフリーなど様々な観点で世界的に評価されている.今回のWGでは,都市選定の困難さ,評価の難しさの観点から質の評価には至らなかったが,これらの質的価値向上が民間交通事業者の自主努力で達成されていること,継続していることを日本国民は誇りに思うべきである.

5.むすび

地域公共交通WGでは,国際比較しようにも地域公共交通のサービスレベルを示すデータが無いという大きな課題を改めて認識した.この課題緩和の一助として,本WGで入手した全てのデータ,集計分析結果, 可視化ツール等を公開することとし,土木学会HPよりダウンロード可能な形で整備する(準備中).

さて,1章のエピソードは,日本の地方都市と欧州の地方都市(村)の地域公共交通の有り様を生活者の目線で捉えたものであった.各都市の基本諸元を表5-1に示す.本レポートでは,これらエピソードから浮かび上がる日本と欧州の地域公共交通のちがいの一端を定量的に把握するのみならず,背後に横たわる制度,歴史的経緯,そして思想のちがいをあぶり出すことを試みた.

日本の地域公共交通は独立採算制を基本としてきたことから,公共の関与が限定的であり,モータリゼーションによる地域公共交通の衰退に際し,効果的な手を打つことができないでいた.地域公共交通の意義を改めて議論・共有した上で,目標やあるべきサービス水準を定めたプランニングが重要である.そのためには,国民の地域公共交通に対する理解の促進や,適切なストック投資,そして人材育成が急務である.このような状況下,COVID-19感染症の流行は,衰弱していた我が国の地域公共交通を瀕死状態に追いやった.我が国の地域公共交通は今,大きな曲がり角にある.土木学会を初めとする地域公共交通に携わる国・地方自治体・交通事業者の一層の努力とともに,読者諸氏のご理解とご協力を賜れることを期待して筆を置きたい.

表5-1 1章エピソードに登場したまちの諸元表



日本インフラの体力診断小委員会 地域公共交通WG
主査:筑波大学 谷口綾子
メンバー:
 国土交通省 赤星 健太郎 / 呉工専 神田 佑亮 / 福島大学 吉田 樹
 建設技術研究所 五十嵐 達哉
 中央復建コンサルタンツ 山室 良徳,山根優生
 ドーコン 小美野 智紀,諸星賢治,松村葵
 筑波大学(学生) :
  渡邊芳樹,中川権人,後藤大河,溝口哲平,飯塚友也,樋崎恵一,前川凜
 呉工業高等専門学校(学生):
  中村陸哉,宮野夏碧,馬本迪奈,福田圭希,山原けい


参考

他の分野の「インフラ体力診断」のレポートは、マガジン「日本インフラの体力診断」からご覧ください。

日本のインフラの状態を評価する「インフラ健康診断」とあわせて、この国のインフラの実情について、知っていただければと幸いです。


国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/