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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重… もっと読む
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地質リスクマネジメントと地質・地盤技術者の役割

田中 誠 依頼論説 (一社)全国地質調査業協会連合会 会長  土木学会が2022年9月に発表した「地盤の課題と可能性に関する声明」(以下、「声明」)においては、地盤がインフラ施設にとって地盤は構造物を支える基盤的存在としてその重要性が強調されている。これは全国地質調査業協会連合会(以下、全地連)が標榜する「地質調査はインフラのインフラ」というメッセージとも軌を一にする。 地質調査業界は、「地盤」を対象に調査・試験・解析などを業としており、インフラの整備・保全、防災・減災の

カーボンニュートラル社会の実現に向けたコンクリート工学の挑戦

石田哲也 論説委員 東京大学大学院工学系研究科 カーボンニュートラル社会の実現に向け、世界中でCO2削減に向けた動きが活発だ。CO2排出量の大きいセメント・コンクリート産業への風当たりも厳しい。水と硬化する性質を持つセメントは、原料の石灰石(炭酸カルシウム)からCO2を離脱させるプロセスにより生まれる。セメント製造の際、原理的にCO2は必ず排出される。 コンクリートの低炭素化を図る従来の定番技術は、セメントの一部を高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材で置換するもの

賃上げをするために

池田 薫 論説委員 阪神国際港湾(株) 2023年の春闘が終わり、多数の企業で賃上げの妥結をしており、賃上げが趨勢となっている。 賃上げについての議論を振り返ってみると、その時々の経済情勢によって、立論の仕方が変化している。安倍政権の2014年成長戦略においては、デフレ経済からの脱却と富の拡大(言い換えると賃上げのこと)が目標となっていた。デフレ経済からの脱却ができたかどうかは、評価が分かれているが、賃上げについては、実現できなかった。 最近は、ウクライナ侵攻の影響から