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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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#気候変動

森林環境と再生可能エネルギー

楠見 晴重 論説委員 関西大学 近年、世界の様々な地域において気候変動に起因する自然災害が多発している。例えば高温・少雨による自然発火による森林火災、集中豪雨による大規模洪水災害、乾燥地の拡大などが挙げられる。 気候変動の原因の一つに温室効果ガスの排出による地球温暖化の進行が言われている。これら温室効果ガスは化石燃料から排出されるために、その削減が世界各国で取り組まれている。更に二酸化炭素を吸収する森林の伐採が地球規模で進んでいることも、温室効果ガスの上昇に拍車をかけてい

環境に配慮した気候変動の新たな緩和策に向けて

中山 恵介 論説委員 神戸大学 気候変動に起因すると推測される豪雨、豪雪などに伴う自然災害が多発している。その結果、防災への意識が高まっており、土木工学に関わる多くの研究者および実務者がその対応、特に適応策の提案・実施に取り組んでいる。近年の頻発する洪水氾濫、高潮および津波被害等に対して、このような適応策の提案および実施は疑いようのない大切な取り組みである。一方で、このように防災強化および災害適応への関心が高まっている中、土木工学に関わる者として、たとえ効果が現れるまでに時

都市沿岸域の恵みと持続性を高めよう

佐々木 淳 論説委員 東京大学 教授 東京湾では1960年頃には19万トンの漁獲量がありましたが、昨今は1万トン程度に激減しました。19万トンは単純計算で420万人分の魚介類の供給に相当し、豊かな恵みをもたらしていたことが想像できます。身近な環境に人手を入れ、人と自然の共生を目指す里山はよく知られていますが、瀬戸内海で生まれた里海(人手が加わることによって生物多様性と生産性が高くなった沿岸域)も、人手を加えるべきではないとの意識が強かった欧米にSATOUMIとして受け入れら