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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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#コンクリート

ポルトランドセメントの200年とこれから

小林孝一 論説委員会幹事長 岐阜大学・教授 何の断りもなく「セメント」と言う場合には、ポルトランドセメント(Portland cement)のことを指すことも多いが、2024年はイングランドのLeedsのJoseph Aspdin(ジョセフ・アスプディン)によって出願されたポルトランドセメントの特許が成立して200周年の節目に当たる。彼のセメントは現在のポルトランドセメントとは大幅に異なるものではあるが、その原型と製法を開発したことは賞賛されて然るべきであろう。我々の快適で

カーボンニュートラル社会の実現に向けたコンクリート工学の挑戦

石田哲也 論説委員 東京大学大学院工学系研究科 カーボンニュートラル社会の実現に向け、世界中でCO2削減に向けた動きが活発だ。CO2排出量の大きいセメント・コンクリート産業への風当たりも厳しい。水と硬化する性質を持つセメントは、原料の石灰石(炭酸カルシウム)からCO2を離脱させるプロセスにより生まれる。セメント製造の際、原理的にCO2は必ず排出される。 コンクリートの低炭素化を図る従来の定番技術は、セメントの一部を高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材で置換するもの

危機にあるレディーミクストコンクリートを考える

坂田 昇  論説委員会 委員 鹿島建設株式会社執行役員 土木管理本部土木技術部長 土木構造物の多くは、コンクリートで造られている。現在の土木学会には、29の調査研究委員会が存在するが、その中でコンクリート委員会は昭和3年に発足した委員会で、最も古く長い歴史を持つ組織である。また、すべての委員会の収益の約6割を占めている。このことからも、土木において、コンクリートが如何に大切なものであるかが窺える。そのコンクリートのほとんどが、レディーミクストコンクリート(以下、生コン)であ