マガジンのカバー画像

土木学会『論説・オピニオン』

93
土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
運営しているクリエイター

#ブルーカーボン

カーボンニュートラルの加速と生物多様性の保全

中山 恵介 論説委員 神戸大学 2050年カーボンニュートラルの達成に向けて待ったなしの状況であり、技術革新などによる温室効果ガスの排出量の削減、およびネガティブ・エミッション技術の開発が喫緊の課題である。カーボンニュートラル達成のためには、前者のエネルギー産業における構造転換、およびイノベーションの創出による温室効果ガスの排出量の削減だけでは達成が不可能であり、後者のCarbon dioxide Capture and Storage(CCS)やCarbon dioxid

環境に配慮した気候変動の新たな緩和策に向けて

中山 恵介 論説委員 神戸大学 気候変動に起因すると推測される豪雨、豪雪などに伴う自然災害が多発している。その結果、防災への意識が高まっており、土木工学に関わる多くの研究者および実務者がその対応、特に適応策の提案・実施に取り組んでいる。近年の頻発する洪水氾濫、高潮および津波被害等に対して、このような適応策の提案および実施は疑いようのない大切な取り組みである。一方で、このように防災強化および災害適応への関心が高まっている中、土木工学に関わる者として、たとえ効果が現れるまでに時

都市沿岸域の恵みと持続性を高めよう

佐々木 淳 論説委員 東京大学 教授 東京湾では1960年頃には19万トンの漁獲量がありましたが、昨今は1万トン程度に激減しました。19万トンは単純計算で420万人分の魚介類の供給に相当し、豊かな恵みをもたらしていたことが想像できます。身近な環境に人手を入れ、人と自然の共生を目指す里山はよく知られていますが、瀬戸内海で生まれた里海(人手が加わることによって生物多様性と生産性が高くなった沿岸域)も、人手を加えるべきではないとの意識が強かった欧米にSATOUMIとして受け入れら